ロシアがウクライナ侵攻を始めて1ヶ月。ウクライナの惨状は目を覆うばかりだが、国を想う気持ちでウクライナ軍の士気は上がる一方、ロシア兵の多くは戦意を喪失し、戦闘から逃れようとしているという。
プーチン大統領がいつ決断して戦争を終わらせるのか。またこの戦争の命の代償を誰が払うのか。ウクライナ、ロシアの一般の人々の今後の生活を思うとあまりにも残酷だ。
ウクライナ軍が首都キエフの東側でロシア軍を押し戻すなど、反撃に成功する動きも出てきた。米国防総省の高官は3月23日、ウクライナ軍が首都キエフの東側20kmから30kmにいたロシア軍を、キエフ近郊のイルピンがある55kmの地点まで押し戻したと発表。
英国防省は「ウクライナ軍が露軍部隊を包囲できる可能性がある」と指摘した。さらに米政策研究機関「戦争研究所」も同日、キエフの北西15kmに迫るロシア軍が、地雷を設置するなど「防衛に転じている」と分析している。
この後退に対して国防総省の高官は、ロシア軍がマリウポリなどウクライナ東部の戦闘に戦力を集中する動きがあるとしていて、ロシアが戦略的にキエフ周辺での軍隊を減らし南部に集中している可能性を指摘している。
ウクライナ軍も南部で反撃に出ている。ウクライナ海軍は3月24日、南東部のアゾフ海に面したべルジャンシク港に停泊していたロシア軍の大型揚陸艦「オルスク」を撃沈した。
大型揚陸艦「オルスク」は戦車20両、装甲車45台、兵士400人の輸送が可能な大型艦だ。この艦艇が停泊していたベルジャンシクは、マリウポリの西方約80Kmにあり、ロシア軍が補給拠点に使っている要衝。さらに別の揚陸艦が深刻な損傷を受けたとの情報もある。
アメリカをはじめイギリスやNATO軍の支援や歩兵用対戦車・対空装備やドローンを使ったウクライナ軍の反撃は、効果的にロシア軍を追い詰めている。
AP通信によると、北大西洋条約機構(NATO)はロシア軍の戦死者が7000~1万5000人に上ると推計している。
ロシア兵の中にはほとんど訓練を受けていなかったり、訓練の延長だとだまされて戦場に放り込まれたりしていることも、士気の低下をもたらしているのであろう。
今回の侵攻で戦死したロシア兵のスマホには次のように書かれていたという。
この戦争の大義はすでになく、プーチン大統領の意地と名誉と戦後処理で優位に立つことだけで行われているようにしか見えない。そのためにどれだけの命が失われているかが考えられていないのが悲しい現実だ。
泥沼化した戦況の中で戦うことを強いられているロシア兵もまた悲惨であり、脱走したいというのが本音であろう。しかし脱走をすれば最高8年の実刑判決が下される可能性があり、ロシア兵の中には「仲間たちは上官にバレないように、銃で自分の足を撃っている。包帯を巻いて、祖国の病院に送り返されることを望んでいるんだ」との会話が傍受されている。
この戦争で大きな人道危機の一つが「ロシア軍による拉致」だ。
3月22日の米メディア『CNN』の報道によると、ロシア軍の士気低下は、深刻なレベルであり、十分な防寒装備もないため、多くの兵士が凍傷になっているという。
軍の統制も行き届かずウクライナ当局によると、一般市民5000人近くをパスポートを取り上げたうえでロシアに強制連行しているという。中には、知事や市長などの公人も含まれる。
筑波大学の中村逸郎教授によると、相次ぐウクライナ人の拉致は、飢えに苦しみ統制のとれなくなった兵士たちの仕業で、市民を誘拐することで家族に身代金を要求するカネ目的の暴走ではないかと話す。
現在のロシア軍の内実は、規律などないに等しいマフィア集団のようなものと語った。
もはや組織として崩壊しつつあるロシア軍。一刻も早いプーチン大統領の決断を願う。
参考
自傷、凍傷、飢餓…ウクライナで苦戦のロシア兵「絶望的な現実」
https://friday.kodansha.co.jp/article/236098
ウクライナ海軍「ロシア軍の大型揚陸艦を撃沈」…キエフでは55キロ地点まで押し戻す
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220325-OYT1T50088/
自分の足を撃つロシア兵が続出!脱走すると8年の実刑、自作自演で本国帰還を狙う
https://news.yahoo.co.jp/articles/6179e9e46c9cb8ad2b1b9655f7b339548c7166d8
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