日に日に蒸し暑さが増し、梅雨がすぐそこまで迫っているこの季節。寝床に入ると気になるのが「プーン」と羽ばたく蚊の羽音。蚊はただかゆみをもたらすだけでなくさまざまな伝染病を媒介し「世界中で最も人を殺した生き物」と言われ、1年間に70万人以上が蚊によって死んでいるとの統計データもあるぐらい恐ろしい存在。
これからの季節、蚊を撃退する方法や潰さずに処理する方法についてどのようなものがあるのだろうか。
蚊のエネルギー源(主食)は糖分で、普段は蝶や蜂と同じように花の蜜や草の汁を吸って生活している。しかし産卵に必要なエネルギーが花の蜜や草の汁では十分でなく、夏になるとメスが命がけで産卵に必要なタンパク質を摂取するため、動物の血を吸う。産卵をしないオスは吸血をしない。
また蚊に刺されるのは人だけでなく、犬や猫などの哺乳類、インコなどの鳥類からも吸血する。これが原因で他の動物が感染している感染症を蚊が媒介して人へと感染させる。その例として毎年10人前後が発症する日本脳炎がある。日本脳炎は豚が感染源で、ウイルスを持つ豚から吸血した蚊に人が刺されて感染する。この感染症は人から人に感染する事はない。
子孫を残すために吸う良質な血を蚊は慎重に選んでいる。
蚊の体に備わっている触覚には近赤外線センサーがあり、血管を造影、透視して血液の状態を判断しているという。そのためアル中やヘビースモーカー、ドロドロの血の人からはほとんど血を吸わない。逆に汗っかきで汗臭い人や、運動などで息が上がった直後は特に刺されやすい。
体温の熱と呼気に含まれる炭酸ガス、体臭などの臭いを頼りに寄ってくるので、運動後に草むらで休憩しても蚊にまったく刺されない人は血液検査をすることを薦める。
日本には主に「ヒトスジシマカ(通称ヤブ蚊)」「アカイエカ」「チカイエカ」が住んでいる。このうち「チカイエカ」だけは1度目の産卵は吸血しない非常に珍しい「無吸血産卵性」で、2回目以降吸血する。「ヒトスジシマカ(通称ヤブ蚊)」「アカイエカ」は1度目から吸血する。
「ヒトスジシマカ(通称ヤブ蚊)」は昼間に屋外で吸血し、特に夕方(16〜18時)の時間帯に吸血する。「アカイエカ」は屋内に侵入し、日没から明け方までの夜間を中心に吸血する。「チカイエカ」はビルの地下の浄化槽などで発生するため、オフィスに出没して人を吸血する。年中発生し地下鉄などで多く見られる。
通常、蚊を撃退する時は平手で叩くのが一般的だが、手のひらにくぼみ（空洞）をつくり、くぼみのままその手で蚊を押しつぶさずに叩くと、圧力が蚊のセンサーに異常を起こさせ気絶させることができる。その後素早く気絶した蚊をティッシュペーパーなどで処分するとよい。
この方法は蚊が吸った血を周りに付けることがなく、また蚊が体内に持っている感染症を刺された人の体内に残すことがないため、比較的安全に処分できる。
蚊の脚の表面は微細な凹凸があり、水をはじくことが知られている。ところが花王の研究によると、シリコーンオイルが人の肌などに塗られていると、オイルが即座に脚に染み込み始めるため、蚊は嫌がって飛び去ることを突き止めたという。蚊は肌にとまると、一瞬のうちに刺す体勢に入るが、シリコーンオイルを塗っておくと、その前に飛び立ったという。花王はこの性質を応用し蚊を撃退するクリームを開発した。
既に多くの化粧品に使われるシリコーンオイルを活用しているところがポイント。
東南アジアでは蚊による伝染病で多くの人が毎年亡くなっており、開発したクリームをまずはタイで計８万個無料配布する。またインドネシアなど他の国での販売も検討しているという。
ただ残念なことに日本では、医薬品医療機器法（旧薬事法）などの関係でクリームは「雑貨」扱いとなり、現時点で花王からの発売予定はないという。個人的な実験になるが、市販のシリコーンオイルの入ったクリームを探して寝る前に肌に塗ってみてはと思う。
参考
蚊が腕に止まったら…実はやってはいけないたたき方 専門家「伝染病のリスクが高まる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/21583e8be37be7e7b0a656c3d060a04915a88bf0
wiki 日本脳炎
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%84%B3%E7%82%8E
蚊が人の血を吸う本当の理由とは
https://weathernews.jp/s/topics/202005/110165/
蚊を気絶させて退治！叩いて潰す代わりに風圧でやっつける!?
https://allabout.co.jp/gm/gc/220720/
花王、蚊撃退クリーム開発 従来とは違うアプローチ
https://www.sankei.com/article/20220603-EW5VRHQZE5OIZDYALQBUIFE7UI/
花王、蚊撃退クリーム開発
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/865283
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