「少子高齢化が進んだら納めた年金が貰えない」はただの噂!? 65歳以上の就業者は総人口の24.9%が働いている

人生

専門家の中にも「少子高齢化が進むと、年金の担い手が減り、年金制度が崩壊する」という人がいます。それは単純に65歳以下を労働者、65歳以上は年金を貰うだけで働かないと仮定し、単純に数字で割っただけの数。これを真実と思い込み年金を払わないと、年金を貰える年齢になったとき大変損をします。

意味の無い数字で計算した!

公的年金に関する勘違いの中でよく云われているのが、

「日本は少子高齢化が進む社会なので、かつては多くの現役世代でお年寄りを支える『お神輿型』でしたが、今は3人で1人を支える『騎馬戦型』、そして将来は1人で1人を支える『肩車型』に確実に変化していきます。今のままでは将来世代はこの負担に耐えられません」

これは2012年に当時、民主党の野田首相が1月の施政方針演説でこの趣旨の話を述べていました。この考え方は今でも財務省のHPに掲載されています。
財務省
https://www.mof.go.jp/zaisei/matome/thinkzaisei11.html
では65歳を過ぎた高齢者は皆働いていないのでしょうか?



2020年9月15日に総務省がまとめた人口推計によると65歳以上の高齢者人口は前年比30万人増の3617万人。総人口に占める割合は0.3ポイント上昇の28.7%でともに過去最多を更新した。2019年の65歳以上の就業者数は18年より30万人増の892万人で過去最高となった。
一方で2019年の65歳以上の就業者数は16年連続の増加となった。15歳以上の就業者総数に占める割合も18年に比べて0.4ポイント増の13.3%と過去最高だった。65歳以上の高齢者の就業率は24.9%だ。13年に20.1%と2割を超え、6年でさらに4.8ポイント上昇した。男女別で見ると、男性は34.1%、女性は17.8%となった。いずれも8年連続で増えた。
2019年の統計を業種別に見ると、卸売業・小売業が126万人で最多だった。農業・林業が108万人、サービス業103万人、製造業が94万人で続いた。役員や自営業者を除く雇用者は503万人で、全体の56.9%を占める。このうち非正規の職員・従業員は389万人と77.3%で、4人に3人は非正規だった。非正規の職員・従業員の高齢雇用者について理由を聞くと、男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」と答えた人が最も多かったという。



何歳になろうと現役で働いていると社会保険料を負担します。逆に働いていなければ年齢が若くても保険料は払えません。そういう観点で考えると、単に年齢で切り分けて、その比率を比べるのではなく「働いている人が働いていない人を養っている割合がどれぐらいか」で考えることが必要です。つまり1人の就業者(働いている人)が何人の非就業者(働いていない人)を支えているか、を見ることが大切ではないでしょうか。

労働者数は今も昔も余り変わらない

慶應義塾大学の権丈善一教授の著書『ちょっと気になる社会保障』(勁草書房)の4ページに出てくる図をベースに作成した「一人の就業者が何人の非就業者を養っているか」の図です。
この中には病気や体が不自由になって働けなくなった人を含みます。例えば新型コロナウイルスに感染しその後回復したものの働くことができなくなった様な人たちも含みます。
2020年では1人が0.89人を支えています。30年前の1990年には1人で0.96人、そして半世紀前の1970年の時は1人が1.05人という数字!なんとお神輿型と言われていた1970年よりも今の方が高齢者の数は増えているにもかかわらず、支えている人数自体はわずかですが、減っています。さらに20年後の2040年を見てもその数字は0.96人ですからほとんど変わりません。2040年は少子高齢化がピークを迎える頃と言われていますが、その頃でも今とほとんど同じ。つまり、「何人の働いている人が、何人の働いていない人を支えているか」という観点で見ると、昔からこの数字はほとんど変わっていないし、今後もほとんど変わらないということがわかります。



それともうひとつ。今では考えられないことですが、1970年当時は55歳が定年で当時の男性平均寿命は69歳。定年後の余生は14年でした。
しかし現在では、1998年の「高年齢者雇用安定法」の改正により法律で60歳未満の定年を禁止しているとともに、男性の平均寿命も81歳を越え、定年後の余生は21年。
体力的にも十分働ける人も多く、再雇用制度等により60歳~64歳までの間で働いている人の割合は男性で約81%、65歳~69歳は57.2%、そして70~74歳でも38.1%の人が働いています。

2022年以降年金制度の改正で高齢労働者が増加する?

これまで定年後の仕事といえば同じ職場や出先に再雇用や再就職、フリーランスとして起業をする、シルバー人材センターやアルバイト、パートなどが主流でした。今後も高齢労働者が一定水準増加する可能性が高いと思われます。それはこれまで再就職を諦めていた人でも働き続けることができるテレワークを中心とした「在宅ワーク」の増加と、2022年4月以降年金制度改正で60~64歳までの年金支給停止基準の緩和があるためです。
<年金の支給停止が始まる基準>(2021年時点)
●60~64歳……月28万円(2022年4月以降は月47万円)
●65歳以上……月47万円

また定年後も同じ職場で働くことには壁がありました。その原因に、再雇用された後の役職が現役時代よりも下がり周囲から浮いてしまったり、かつての部下が上司になり、部署の中で扱いの難しい「年上部下」となったりする。高齢者が職場のお荷物にならないためには周りの理解と本人が「会社に役立つ知識や技術」を身に着けて、「ひとりで」役割を果たせるようになるという意識改革が重要です。この考えは少しずつ浸透しています。

高いGPIFの収益率

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をご存じでしょうか?
「厚生年金保険事業及び国民年金事業の安定に資することを目的としている組織」で、年金で株式や債券を運用し収益を得る行政法人です。株や債券の運用と聞くと損失が出たらどうするのかと考えてしまうかも知れません。しかし運用に関してはとても優秀です。



資料によると、
2020年度
https://www.gpif.go.jp/operation/last-years-results.html

収益率 +25.15%(年率)
収益額 +37兆7,986億円(年間)
超過収益率 +0.32%
国庫納付 1兆5,818億円

2001年度~2021年1Q
https://www.gpif.go.jp/operation/2021_1Q_0806_jp.pdf

収益率 +3.70%(年率)
収益額 +100兆3,182億円(累計)

2021年度の運用状況
https://www.gpif.go.jp/operation/the-latest-results.html
年金を国内・国際市場での運用によって1兆円もの収益を上げています。これからの利益を約束するものではありませんが、年金や社会保障を充実させるためにファンドマネージャーには頑張って欲しいですね。



これからも高齢者の労働人口が一定水準確保され、年金を株式や債券で運用し収益を得ることができれば、「年金制度が崩壊する」ことはないと考えられます。みなさんはどう思いますか?
参考
「少子高齢化で年金が崩壊する」そんな不安を否定する”あるデータ”
https://president.jp/articles/-/50938
働きながら年金を受給する場合、「収入制限」に注意!
https://news.yahoo.co.jp/articles/db06eb86c30c79ff36de7ce70a097914b3627726
在宅勤務の普及で、「引退」を遅らせる定年退職者が増加中
https://digiday.jp/agencies/giving-people-more-control-rise-in-flexible-working-is-enabling-older-workers-to-defer-retirement/
定年後も仕事を続けるために!50代から準備する5つの事
https://oki-memorial.org/column/workafterretirement0212
数字で見る公的年金
https://www.nenkin.go.jp/saiyo/about/data.html
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
https://www.gpif.go.jp/about/

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