蚊が嫌がる肌表面をつくり病気になるのを防ぐ技術を開発

生活

これまでの蚊除けは、蚊の嗅覚に影響を与える虫よけスプレーが一般的であったが、花王 パーソナルヘルスケア研究所・マテリアルサイエンス研究所は、肌表面を蚊の嫌う物性に変化させることによって、蚊をとまらせず、肌に止まっても蚊に刺させなくする蚊よけ技術を開発した。

<目次>
1 蚊の習性
2 逆転の発想
3 カバの赤い汗も
4 開発の背景

1 蚊の習性

蚊は肌に降り立つと、脚先を使って態勢を安定化させ、その後吸血行動を始める。逆に蚊が肌に降り立ってもすぐに離脱させる肌表面にすれば、吸血されることはない。このことから花王は、蚊が嫌う表面について調査。蚊が降り立つ挙動をハイスピードカメラにて観察した結果、蚊は、水との親和性が低い特定のオイルを塗布した表面からは即座に飛び去り、さらにその後、脚を擦り合わせるようにして付着したオイルをぬぐう行為をしていることがわかったという。


2 逆転の発想

蚊が嫌う匂いを使う場合、時間が経過すると忌避効果が減少して蚊が寄ってくる。蚊が寄ってきても、肌に降り立てないなら吸血行動ができないという逆転の発想から、蚊の脚と液体が接触したときの状態を詳細に検討した。蚊の脚は特異な微細構造になっており、非常に高い撥水性があるため、液体が水やグリセリンの場合、液は滴のままで蚊の脚に濡れ広がることがないことが分かった。
しかし、スキンケア商品に配合されているスクワランや低粘度のシリコーンオイルに接触すると、液滴が蚊の脚に短時間で濡れ広がることに着目。

この「濡れ現象」が起こると、蚊の脚には短時間で液体に引き込まれる方向への力が働く。蚊のような小さくて軽い昆虫にとっては、小さな吸引力でも足をもたれて水の中に引き込まれる感覚となり逃避行動を誘発すると考えられる。蚊の脚に液体を接触させたときに生じる力を表面張力計で測定。低粘度のシリコーンオイルが濡れ広がるとき、蚊の脚には約5μNの毛管力(液体が濡れ広がる際に生じる力)が発生した。
ヒトの肌を用いた試験では、何も塗っていない場合、とまったメス蚊のうち平均85%が吸血行動を示したのに対し、低粘度のシリコーンオイルを塗布した肌では、平均4%の蚊しか吸血行動を示さなかったという。

3 カバの赤い汗も


このような「濡れ現象」を利用して蚊よけを行なっているのが「カバ」。肌上に分泌する“赤い汗”には紫外線防御(日やけ止め)や保湿の効果に加え、カバの分泌液はシリコンオイル同様、蚊の降着抑制効果を持つことが明らかとなり、蚊から身を守る能力もあることが分かった。

4 開発の背景

近年の地球温暖化に伴い熱帯地域の蚊が北上し、蚊によるウイルスの感染が拡大している。感染地域の蚊が航空機や船舶で運ばれる可能性が高まり、デング熱や西ナイル熱ウイルスなどの蚊を媒介とする感染症が劇的に増加している。
現在は安全で有効なワクチンや治療法が確立していないことから、感染を防ぐには蚊に刺されないことが重要。花王は、今回得られた知見を蚊から肌を守るアイテムの開発につなげ、新製品の開発を進めることで、蚊が媒介する感染症から人々を守ることに貢献するとしている。

参考:
花王、蚊の嫌う肌表面をつくる蚊よけ技術を開発
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1294149.html

蚊 vs シリコンオイル

蚊 vs シリコンオイル | 山口潤一郎研究室
お久しぶりです、修士1年の飯泉です。研究室内で生活していることが多い自分は外の気候には疎いですが、最近はさすがに寒くなってきたなと思います。

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