あなたは動物が何を話しているのかを知りたくありませんか? 「クジラ語」解読の大型研究プロジェクトが始動!

テクノロジー

身近な犬や猫の気持ちをはかるペット翻訳機、バウリンガル翻訳と呼ばれるアプリが登場していますが、大型野生動物のコミュニケーションを研究し、言葉の解読に挑戦するプロジェクトが始動しています。

動物も植物も会話がお好き!?

◎動物は様々な声(言葉)を使い、家族や仲間とコミュニケーションを取っている。

※カラス
1 カラス同士のあいさつ
<カ~ッ カァカァ>
2 警戒している時の声
<カァッカァッカァッカァッ>
3 威嚇の声
<ガァ ガァ ガァ ガァ ガァ ガァ>
4 警戒してさらに威嚇する声
<カァッ カァッ カァッ カァッ ガァ ガァ ガァ ガァ>




◎植物は化学物質を利用して昆虫などとコミュニケーションを図る能力がある。

1 周りの植物に助けを呼ぶ
草を刈った後や花の手入れをした後、あたりに漂う新緑の香りは植物のSOS信号である。
2 周りの状況を察知し防御する
植物は仲間の化学信号を傍受し、付近にいる腹を空かせた昆虫の存在を察知すれば、他の植物へ向けて予防的にSOS信号を発信するとともに、防衛反応を強化する。苦みが強くなるのは防衛のために化学物質を蓄積させるため。
3 自分のテリトリーを防衛する
植物同士は日光を多く浴びるため、自分に有利な位置を確保するため背丈を伸ばし競争をしている。またある種の植物は根の生えている土壌に化学物質を放出し他の植物を一掃することを試みる。
4 仲間を認識する
化学物質を通じて仲間を認識しており、他種が周囲にいるときは養分を競い合って根を張り巡らせるが、同種に囲まれているときは仲間の需要を考慮して根の成長を抑える。
5 植物が動物を利用する
植物が引き寄せるのは昆虫だけではない。ボルネオに固有の食虫植物の一種ネペンテス・ヘムスレヤナというウツボカズラは、コウモリの通信システムをハイジャックし、ウツボカズラのある場所をコウモリの寝床にさせる。そしてそこで糞をさせることで栄養を確保する。



地球最大の動物「クジラ」の言葉を研究

シロナガスクジラに次いで大きいマッコウクジラの言葉を解明する研究をカナダ人生物学者のシェーン・ゲロー氏は行っている。
マッコウクジラはクリック音で「話」をする。彼らがリズミカルに鳴らす一連のクリック音は「コーダ」と呼ばれている。
ゲロー氏がクジラの会話に興味を持ったのが2008年の春の朝、2頭のクジラがおしゃべりをしているのを耳にしただった。カリブ海の島国ドミニカの沖合でマッコウクジラたちを追跡していたところ、同じ家族の子ども2頭が、船からそう遠くないところに顔を出したのだ。ドロップとダブルベンドと名付けられた2頭のクジラは、巨大な箱のような頭部を寄せ合って話を始めた。

ゲロー氏はそれまでに水中レコーダーを使って数百頭のクジラのコーダを記録していた。しかし、こんな音を聞いたのは初めてだった。2頭のクジラは40分間にわたってクリック音をやり取りし、ときにはじっとしたまま、ときには体を絡ませながら、ほぼ沈黙することなく話し続けた。ゲロー氏はかつてないほど切実に、クジラたちが何を言っているのかを理解したいと願ったそうである。
まるで自分が、じゃれ合う兄弟の会話を盗み聞きしているかのように感じられ、「彼らはおしゃべりをし、ふざけあい、いかにも兄弟らしく振る舞っていました」と、ゲロー氏は言う。

AIの活用で人の思い込みを排除

ゲロー氏を含む研究者チームは21年4月19日、マッコウクジラが互いに何を話しているのかを解読するための、5年間の研究プロジェクトの始動を発表した。チームには、言語学、ロボット工学、機械学習、カメラ工学の専門家が参加していて、今では人間の言語をある程度自在に翻訳できるようになった人工知能(AI)が活用される。プロジェクトCETI(クジラ目翻訳イニシアチブ)と名付けられたこの計画は、史上最大の異種間コミュニケーションの試みとなるだろうという。
研究者たちはすでに、専用の映像・音声記録装置の開発に取り組んでおり、何百万ものクジラのコーダを記録し、それをAIを使って分析すること。彼らは、クジラのおしゃべりの基本的な構造を明らかにしたいと考えている。



それらを知るために、研究者たちは、クジラがクリック音を発するとき、あるいは聞くときに、どのような行動をとるのかを音と映像で追跡する。そして、自然言語処理技術(AlexaやSiriが音声コマンドに反応するのを助けているAIの一分野)を活用して、この情報の解釈することで、クジラのコミュニケーションはどのような単位で構成されているのか。文法や構文、あるいは言葉や文章に相当するものはあるのかを分析する。

目指すゴール

マッコウクジラが自然環境において生活する中で、互いに何を話しているのかを理解すること。
今回の研究はマッコウクジラをターゲットとしているが、この研究を応用することで、様々な動物の言葉を理解し、地球を知る手がかりになるのではと考える。

参考
読めばちょっとカラスが好きになるかもしれない話
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nradi/DbUQaJrMv.html
植物は思った以上にハイスペックだった。植物による5つのコミュニケーション法
https://karapaia.com/archives/52197241.html
クジラの言葉、解読に挑戦 人の思い込みはAIで排除
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO71738550R10C21A5000000/?page=%EF%BC%91
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年5月2日付]

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