iPS細胞の遺伝子操作技術で難病の欠損遺伝子修復に成功

健康

iPS細胞に遺伝子を組み込んで、病気の治療に役立つ細胞を作り出す技術を、鳥取大学などの研究グループが開発。この技術を応用することで、遺伝子や染色体を原因とするダウン症や、筋ジストロフィーの治療など、難病の治療に役立つと期待されている。

<目次>
1 研究の詳細
2 香月康宏准教授の談話
3 再生医療の切り札としての”iPS細胞”

 



1 研究の詳細

鳥取大学医学部生命科学科の香月康宏准教授が、1月22日に開いた記者会見で明らかにしました。
香月准教授の研究グループによると、iPS細胞に遺伝子を組み込むと治療に役立つ細胞に変化させられるが、これまでの方法では、使用する化合物によるiPS細胞の損傷や、細胞に対して遺伝子サイズが大きい場合は組み込むことができなかった。
研究グループは「はしか」ウイルスの遺伝子配列から作ったタンパク質を使い人工染色体を組み込むことで、iPS細胞を傷つけず、大きな遺伝子も効率よく組み込むことができるなど、遺伝子操作の自由度も向上。
この技術を使い特定の遺伝子が欠けることで起きる、筋ジストロフィー患者由来のiPS細胞で実験を行ったところ、欠けている遺伝子を修復することにも成功した。

2 鳥取大学医学部 香月康宏准教授の談話

「10年以上、この染色体導入技術の開発に携わって技術の改良ができたことは研究者として大変嬉しい。こういった研究を患者の元にいち早く届けられるように研究を進めていきたい。今後はがんやダウン症などの治療にも役立てていきたい」と話している。

3 再生医療の切り札としての”iPS細胞”

幹細胞は、万能細胞と体性幹細胞に大きく分けられる。この万能細胞は名前の通り、体の何にでも変わることができる万能細胞であるが、その中には遺伝子操作から作られるiPS細胞と、受精卵から作られるES細胞がある。
iPS細胞は、自分の細胞から作るため、移植しても拒絶反応が全くない。自分の細胞を用いて、自分の壊れた部分を修復できる画期的な細胞で再生医療の切り札である。2014年世界で初めて、「加齢黄斑変性(滲出型)」という眼の難病患者自身の細胞からiPS細胞が作製され網膜に移植。まさにiPS細胞は再生医療の切り札として期待されている。反面、万能細胞のためがん細胞に変わる可能性もあり、今後、安全を担保できるよう研究を重ね、iPS細胞によっていのちを救えるよう期待されている。

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参考:
FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/134918
NHK鳥取NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20210122/4040007138.html
鳥取大学医学部 研究情報
https://www.med.tottori-u.ac.jp/researchers/pickup/pickup_h.html
香月准教授の研究課題が「戦略的創造研究推進事業(CREST)」に採択
https://www.med.tottori-u.ac.jp/news/24894.html

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