青魚に含まれる「EPA」には幸福と充実感を高める力がある

健康

「EPA」は「オメガ3脂肪酸」という必須脂肪酸。青魚(サバ、マグロ、サンマ、イワシなど)に多く含まれ、食卓に上がる機会の多い魚だが、この「EPA(エイコサペンタエン酸)」の血中濃度が高い人ほど、幸福感が高いという関連が報告された。

これは日本人女性を対象にした研究で、金沢大学医薬保健学域の坪井宏仁氏らが、女性医療福祉職者を対象に行い、「Nutrients」に11月11日掲載されたもの。

オメガ3脂肪酸には心臓血管系の保護作用があることが知られており、健康面だけでなくメンタルヘルス上のメリットも指摘され、健康食品(サプリメント)も多く出ている。


1 これまでの「DHA」「EPA」のメリット
「DHA」のメリットとしては、
①脳の発達促進
②認知症予防
③視力低下予防
④動脈硬化の予防改善
⑤抗がん作用

 

「EPA」のメリットとしては、
①血栓予防
②抗炎症作用
③高血圧予防
どちらかといえば、予防や改善に焦点が当てられてきた。

 

農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1401/spe1_01.html


2 「EPA」「DHA」の相違点

 

さらに、どの魚類にどれくらいの「EPA」「DHA」が含まれているかは調べられる事はあったが、ともにオメガ3(ω3)脂肪酸ということで、その効果についてはあまり区別してこなかった。しかし調べてみると、次のような相違点が見つかっている。

①「EPA」の血中濃度は「DHA」よりも低い。
②脳を構成する脂質はほとんどが「DHA」とアラキドン酸である。
③神経系への影響は「DHA」より「EPA」の方が強い可能性がある。

これらのことから坪井氏らは、両者を区別したうえで、主観的幸福感ややり甲斐との関連を研究した。
研究の対象は、静岡県内の複数の医療関連施設の女性看護師および介護福祉関連職員の計140人。健康診断にあわせて主観的幸福感(Subjective Happiness Scale;SHS)とやり甲斐(Visual Analogue Scaleで評価)を調査した。調査対象の平均年齢は45.7歳で、自己記入式の質問票が参加者に事前に配布され、検査の1日前に記入。最終的には乳び血清のためω3脂肪酸の測定に影響が生じる可能性のある参加者などを除外し、133人のデータを解析対象とした。
年齢、BMI、閉経前か後か、身体活動習慣、間食習慣で調整した上で、ω3脂肪酸と幸福感や、やり甲斐との関連を解析。



その結果、

①DHAとEPAは、幸福感ややり甲斐と有意な正の相関が認められた。一方、ALAは幸福感との相関はなく、やり甲斐とは有意な負の相関が認められた。
②幸福感を従属変数とする回帰分析を施行すると、EPAとの相関は有意だったが、DHAは有意性が消失している。また、月経のある参加者は閉経後の人よりも、幸福感が高かった。

これらのことから、EPAとDHAとでは幸福感との関連に差が存在し、中枢神経系における両者の作用機序の違いが幸福と充実感を高める結果に繋がっているものと考察している。しかし今回の研究では、女性看護師および介護福祉関連職員133人だけのサンプルしかなく数が少ないことなどから、男性の参加者や他の職業または異なる社会的地位の参加者も含めた調査をする必要があると結論づけている。

 

オメガ3エイコサペンタエン酸は幸福と充実感に関連している—女性看護労働者を対象とした研究
https://www.mdpi.com/2072-6643/12/11/3462

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