今一つ活用されないマイナンバー。しかし使い方によっては非常に便利なものとなる。銀行などで口座を開くときの身分証明や公的証明書の取得に活用されているが、今後は運転免許証に銀行のキャッシュカード・クレジットカード、電子チケット、図書館などの公的施設の利用カード、さらに定期券などにも紐づける案が浮上している。
厚生労働省のホームページには詳しいマイナ保険証についての解説がある。
【厚生労働省】マイナンバーカードの健康保険証利用について
しかし普及には大きな壁がある。
政府はマイナンバーカードを22年度末までに全国民に普及させる目標を掲げたが、22年3月1日時点で普及率は42％にとどまる。マイナ保険証は普及のテコ入れ策として21年10月に本格運用を開始した。
マイナカードを医療機関で使用するメリットは何か。
政府は主に次の4点を挙げている。
②初めてのところでお薬手帳や本人が処方薬を忘れていても、医師や薬剤師が的確に薬剤情報を共有できる。
③確実に本人が証明できるため、高額療養費制度で立て替え払いが不要になる。
④これまで入院などで高額になるとわかっている場合は、限度額適用認定証をあらかじめ医療機関に提出すれば立て替えは不要だが、マイナ保険証なら認定証なしでも立て替えをする必要がなくなる。
政府は6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」に、マイナンバーカードと健康保険証の機能を併せ持つ「マイナ保険証」の利用を促進することで、現行の健康保険証は「原則廃止を目指す」と明記する方向で検討に入ったという。
2023年度からは医療機関や薬局にマイナ保険証が利用できるシステムの導入の義務づけとともに、24年度中には健保組合などの「保険者」が、現行の健康保険証を発行するかを選べる制度導入も盛り込む方針。
しかしマイナ保険証を利用できる医療機関は少ない。厚生労働省によると、今月15日現在で全体の約58％にあたる約13万施設が利用に必要なカードリーダーを申し込んでいるが、新型コロナウイルスへの対応や、半導体不足で必要な機器が準備できていないため、実際に利用できる施設は約4万施設（19％）にとどまっている。
昨年１０月にマイナ保険証の利用が始まったのを踏まえ、政府は今年４月の診療報酬改定で「電子的保健医療情報活用加算」を新設したことで、顔認証付きカードリーダーで患者の保険資格を確認する「オンライン資格確認システム」を持つ医療機関や薬局は収入増となる。一方、マイナ保険証を提示した患者は自己負担３割の場合、初診で２１円、再診で１２円、調剤で９円、使用しただけで使用料を徴収される。
さらに従来の保険証を使う場合でも、「オンライン資格確認システム」を導入した医療機関であれば、令和６年３月までは初診時に９円の追加負担がかかるという。
年金暮らしの高齢者は医療機関にかかることも多く、少額であっても積み重なればかなりの金額になるに違いない。
これに関しては政府も懸念を持っており、5月23日に「マイナ保険証」の普及に向け、４月の診療報酬改定で新設した加算措置を廃止を含め見直す方向で検討しているという。
医療機関でのマイナ保険証の活用を後押しするために診療報酬を引き上げたが、カードを使うと支払いが増える仕組みは国民の理解が得にくく、カードの利用拡大に逆行しかねないと判断したようである。
ただ夏の参院選で医療団体の反発を招く恐れがあることから、廃止といった大きな変更は難しい可能性がある。今後段階的な縮小も含めて詳細を詰め、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会（中医協）に諮るという。
できることなら廃止を含めて制度をもう一度考えてみてはどうだろうか。
参考
いまこそ作るべき？ 今後5年で「マイナンバー」が大きく進化する可能性
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78688?imp=0
マイナンバーカード保険証に「新利用料金」のちぐはぐ
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20220407/biz/00m/020/004000c
政府 「健康保険証の原則廃止」 骨太の方針に明記する方向
https://mainichi.jp/articles/20220523/k00/00m/040/226000c
＜独自＞マイナ保険証の加算措置見直しへ 政府、利用者の負担軽減
https://www.sankei.com/article/20220524-R6NCUDNNXJNTRG6WUZL6TZ27LY/
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