フランスで行われた研究で、藻類に含まれる光を感知するたんぱく質で、全盲の患者の視力を取り戻すことができたことを、研究チームが医学誌「Nature Medicine」に発表した。
【研究内容】Partial recovery of visual function in a blind patient after optogenetic therapy | Nature Medicine
この研究に参加した患者は40年前に「網膜色素変性症」と診断され、すでに盲目となった58歳の男性で、研究に参加したことで、机の上に置かれたノート、カップ、液体が入った小瓶などを識別できたほか、横断歩道のしまを数えることができたという。
網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)は難病指定の眼科疾患の一つで、中途失明の3大原因の一つであり、頻度は4,000-8,000人あたり1人と言われている。日本の盲学校ではこの病気の生徒が2番目に多い。日本全国の患者数は約23,000人と推定され、2013年の医療受給者証保持者数に基づく厚生労働省患者調査では27,937人であった。
【参考】網膜色素変性症(指定難病90)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/196
【参考】wiki 網膜色素変性症
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B6%B2%E8%86%9C%E8%89%B2%E7%B4%A0%E5%A4%89%E6%80%A7%E7%97%87
この研究では、光遺伝学と呼ばれる手法を用い、藻類のたんぱく質を使って目の後ろ側にある視細胞を制御する手法でこれは新しい試みだという。これまでは神経科学の基礎として長い間研究されてきたものを医療分野で応用しているからだ。
具体的には藻類が生成するチャネルロドプシンと呼ばれるたんぱく質が光に反応して光のある方へと移動する性質に着目し、まずロドプシンを生成する遺伝子コードを藻類から抽出。その後患者の目の後ろ側にまだ残っていた網膜の深部に与える。これにより、網膜に光を当てるとロドプシンが光に反応し、脳に電気信号が送られる。このたんぱく質は黄色い光にしか反応しない性質があるため、患者は全面にビデオカメラ、後方にプロジェクターの着いたゴーグルを装着し、現実世界で起きていることを適切な波長で網膜に送った。
脳がこの新しい視覚情報を認識するようになるには数カ月がかかったため患者は少しいらだっていたという。しかし患者が道路に書かれた白いしま模様が見えるようになったと報告してきた時の患者はとても興奮しており、研究に参加したチームのメンバーもみんな興奮していたという。
患者が完全に視覚を取り戻したわけではないが、全盲とわずかでも周りが見えるのとでは、生活に大きな違いが出る。
日本ではips細胞を使った「加齢黄斑変性症」の研究が進んでいます。これもまだまだ研究段階であり、世界で様々な手法の研究が進み、一日でも早く普通の医療となり、患者に「光」をもたらして欲しいと思います。
参考
藻類のたんぱく質で視力回復、光遺伝学を応用=フランスの研究
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23092
目に「藻類由来のタンパク質の遺伝子」を注入して盲目の人の視力を部分的に回復させる実験が成功
https://gigazine.net/news/20210526-optogenetics-partially-restores-vision-blind/
藻類のたんぱく質で視力回復、光遺伝学を応用=フランスの研究
https://news.goo.ne.jp/article/bbcworldnewsjapan/world/bbcworldnewsjapan-57236858.html
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