年末年始に家族や親せきの集まりや、最近では2月3日の節分に食べる「恵方巻き」など、家庭での食事が多くなっている。またここ数年の新型コロナウイルス禍のため宅配や「巣ごもり」需要が増加しており、家庭ごみが急速に増加して問題となりつつある。
2021年も、UNEPによる「食品ロス世界ランキング」が発表された。
「UNEP Food Waste Index Report 2021」によると、世界の食品ロス(フードロス)は9億3,100万ト。その内、家庭からの排出が約61%、外食産業の26%、小売業の13%と続いており、家庭からのロスを減らすことが削減に役立つことが分かる。食品ロスが多い国から20位までを掲載する。
1位 中 国 91,646,213
2位 インド 68,760,163
3位 ナイジェリア 37,941,470
4位 インドネシア 20,938,252
5位 アメリカ合衆国 19,359,951
6位 パキスタン 15,947,645
7位 ブラジル 12,578,308
8位 メキシコ 11,979,364
9位 バングラデシュ 10,618,233
10位 エチオピア 10,327,236
11位 フィリピン 9,334,477
12位 エジプト 9,136,941
13位 コンゴ 8,912,903
14位 日本 8,159,891
15位 トルコ 7,762,575
16位 ベトナム 7,346,717
17位 タンザニア 6,907,649
18位 ドイツ 6,263,775
19位 イラン 5,884,842
20位 フランス 5,522,358
単位はすべてt(トン)
日本の家庭から廃棄される年間量は、8,159,891トン。一人あたりの年間廃棄量は、約64キロで毎日お茶碗1杯分の食品をゴミとして出している。
フードロス削減に向けた取り組みは、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」にも設定され、11のターゲットで構成されている。
その一つが「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」。それぞれの国が、2030年の目標達成に向けて独自の取り組みを実践している。
各企業もSDGsに取り組み、山崎製パン(株)の「ランチパック」シリーズのパン耳は「ちょいパクラスク」に使用したり、「まるごとバナナ」を生産する際に、製品の大きさを統一するために切り取ったバナナの両端を「切れてるバナナパウンドケーキ」の生地に練り込む、バナナを包んでいるケーキスポンジのカット部分を「りんごのパイケーキ」として利用したりするなど、廃棄をしない工夫を行っている。
さらに、アサヒグループホールディングス(GHD)は食パンの耳をビール原料に使用し、ハウス食品はカレー原料としての規格を満たさないシナモンなどの香辛料をクレヨン原料に使う取り組みを始めている。
また規格外の野菜は廃棄せず道の駅や通信販売などを利用して格安で販売する工夫を行っている。
賞味期限の長さに応じて商品の価格を変動させる実証実験が、東京都内の「イトーヨーカ堂」が経済産業省などと協力して東京 墨田区の店舗で1月12日から行い、デザートやパン、豆腐など16の商品を対象に、賞味期限が近づいた商品の販売価格を段階的に下げていく仕組みを取り入れている。この実証実験は2月末まで実施し、効果の検証を通じて販売現場や消費者の意識改革につなげるという。
「イトーヨーカドー曳舟店」(東京都墨田区)の洋菓子売り場では、同じ商品が「A」「B」「C」と記されたラベルで分類され、陳列棚にある「電子棚札」の画面は、記号ごとに三つの価格を表示し、「A」は1日後、「B」は2日後、「C」は3日後に賞味期限が来ることを表している。たとえば、賞味期限が翌日の「A」は定価の2割引き、2日後の「B」は1割引きに設定。来店客は電子棚札で値段を見て商品を選ぶ仕組みとなっている。
この仕組みには店側にもメリットがあり、デジタル化で商品ごとに値段を一括管理できるため、値札の貼り替えが不要になることを含め、値引きが効率的にできる。
時間帯や混雑具合などに応じて価格を変えることを「ダイナミックプライシング」と呼び、柔軟な価格設定で収益の向上や在庫管理の効率化を図れる。欧米では近年、デジタル技術による需要予測で値引きする仕組みが導入されているが、日本では初期コストと維持費に見合うだけのメリットを感じていない店も多く、導入に後ろ向きだ。
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アメリカ・カリフォルニア州で2022年1月より、事業者に食品ロス削減の取り組みを義務付ける法律が施行された。スーパー、レストラン、食品流通業者などの事業者は、まだ食べられるものについては、食品ロス削減に取り組む団体に寄付し、それ以外については堆肥化できる生ごみと他のごみを分別することが求められる。
この法律は、埋め立てて処理される生ごみを減らし、それによって発生する温室効果ガスを削減することを目的としている。同州では2025年までに州全体の生ごみを75%削減することを目標とし、2024年からは、生ごみを分別せず廃棄した場合、罰金が科せられるという。
中国では政府が国を挙げて、食品ロス防止運動に取り組んでいる。中国では、客が食べきれない量の料理を並べてもてなす文化があり、さらに年長者などがまとめて代金を支払うなど、面子(メンツ)を何よりも重んじる。このため中国人同士の会食でも、ホスト役が参加者に満足するよう食事を多めに注文することがこれまで一般的に行われてきた。こうした伝統を変えようと、昨年4月には食べ残しを禁止する「反食品浪費法」が可決・施行。過剰な注文をして食べ残した客に飲食店側が処分費用を請求できるとした一方、店側も客に大量注文させた場合は1万元(約18万円)の罰金が求められるという。さらにテレビやインターネットで流行している「大食い番組」を禁止し、守らなかったテレビ局や動画配信業者に最高10万元(約181万円)の罰金を科す徹底ぶりだ。食堂がある役所や学校、食事の宅配サービスをする業者にも食品ロスを防ぐ対策を求めている。
このような取り組みを行うのも、世界で一番食品ロスを行っている国であり、その量は日本の11倍にも上る。中国社会科学院によると、中国の都市部では、数千万人を養うことができる量に相当する年間1800万トンの食品が廃棄されている。実際のフードロスは3500万トンに上るという報道もあるほどだ。
中国では米、小麦、トウモロコシといった主要穀物の自給率は100%に近いが、大豆など海外からの輸入に頼る食料も多い。食料資源が世界的に限界を迎えていることへの危機感や、新型コロナウイルス感染症の影響で海外からの輸入が不安定になっていることも食品ロス削減を求める一因となっている。
中国の食品ロス低減運動が世界の食糧改善にも繋がるかもしれない。
日本でも1人1人の食品に対する意識を変えることが、食糧のより良い未来に繋がる。
参考
【2021年】食品ロス世界ランキング 日本の順位と世界各国の現状とは
https://eleminist.com/article/1662
【農林水産省】余った食べ物が大変身!各企業の削減術
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_02.html
余った食材に価値、ロス削減 アサヒはパン耳をビールに
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC229B90S1A121C2000000/
賞味期限が近いほど安く…食品ロス削減へ、売り場で実証実験
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220122-OYT1T50316/
「賞味期限の長さで価格変動」食品ロス削減へ実証実験
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220111/k10013424411000.html
アメリカ・カリフォルニア州で食品ロスを減らす法律がスタート
https://eleminist.com/article/1887
中国が国を挙げて「食品ロス」対策 大量注文して残した客に店が処分費用請求
https://news.yahoo.co.jp/articles/d4ba2a59011901330abd69704d20bf283ee73194
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