新型コロナのピークを越えたようにみえるが、いまだ多くの新規感染者が出ており予断を許さない。千葉大学病院と製薬大手の「塩野義製薬」は新型コロナウイルスなどに対して鼻やのどの粘膜で免疫効果を発揮させる「粘膜ワクチン」の開発を共同で行うことを発表した。
ワクチンをはじめ抗ウイルス薬、ステロイド、JAK阻害薬など、様々な薬剤を使って治療を行っているが、強い薬剤を使い続けると薬剤に対して耐性を持つウイルスが出現するため、今後のウイルスに注意が必要だ。
①レムデシビル
【販売名】ベクルリー
【薬効/対象疾患】抗ウイルス薬/エボラ出血熱
②デキサメタソン
【販売名】デカトロン
【薬効/対象疾患】ステロイド/重症感染症など
③バリシチニブ
【販売名】オルミエント
【薬効/対象疾患】JAK阻害薬/関節リウマチ
④トシリズマブ
【販売名】アクテムラ
【薬効/対象疾患】抗IL-6R抗体/関節リウマチなど
⑤モルヌピラビル
【販売名】ラゲブリオ
【薬 効】抗ウイルス薬
⑥カシリビマブ/イムデビマブ
【販売名】ロナプリーブ
【薬 効】中和抗体(抗体カクテル)
⑦ソトロビマブ
【販売名】ゼビュディ
【薬 効】中和抗体
⑧ニルマトレルビル/リトナビル
【販売名】パキロビッド
【薬 効】抗ウイルス薬
①ファビピラビル
【販売名】アビガン
【薬 効】抗インフルエンザウイルス薬
【会 社】富士フイルム富山化学
②S-217622
【薬 効】経口抗ウイルス薬(3CLプロテアーゼ阻害薬)
【会 社】塩野義製薬
ニルマトレルビルと同じ
③TLR4拮抗薬エリトランの臨床試験(TLR4拮抗薬)
【薬 効】重症患者に対する治療薬
【会 社】エーザイ
サイトカイン産生の最上流に位置するTLR4(Toll様受容体4)の活性化を阻害する薬剤。サイトカインストームを抑制する。
千葉大学と塩野義製薬が新型コロナウイルスに対する新しいタイプのワクチン「粘膜ワクチン」の共同開発に合意した。「粘膜ワクチン」は、病原体の侵入口となる鼻やのどの粘膜で免疫効果を発揮させるもので、発症や重症化を防ぐだけでなく病原体の侵入そのものを防ぐ効果が期待されている。ワクチン接種は、鼻の中で噴霧する噴霧方式のため、注射のような痛みがなく利便性を向上させることができる。共同研究部門では新型コロナだけでなく、インフルエンザや肺炎球菌を対象に研究を行うという。
新たな共同研究部門を2022年4月に千葉大学病院内に設置する。共同研究部門には千葉大から22人、塩野義製薬から複数名の研究者が参加。設置期間は5年間で、22年度内の臨床入りを目指す。塩野義製薬の手代木功社長は記者会見で、「免疫研究に強みを持つ千葉大学との共同研究により、感染症予防に有効な粘膜免疫誘導ワクチンの創出を目指す」と強調したという。
新型コロナウイルスやインフルエンザ、肺炎球菌などの呼吸器感染症を引き起こす病原体は鼻咽頭の粘膜から侵入し、肺炎など重篤な症状を発症させる。これまでのワクチン注射では全身の免疫の効果がある一方、病原体の侵入を防ぐことは難しい。「粘液ワクチン」方法は、呼吸器の粘膜に直接作用するため、病原体の侵入を防ぐとともに、抗原特異的血清 IgG・抗原特異的分泌型IgAの産生を促し、呼吸器と全身の免疫システムに効果を発現することが分かったという。
新型コロナ禍で抗菌薬(抗生物質)の多用や誤用、過剰使用が薬剤耐性菌を増加させているのではないかと公衆衛生の専門家が懸念している。抗菌薬(抗生物質)の多用や誤用、過剰使用が細菌や真菌などの病原体を進化させ、薬剤への耐性を獲得してしまう可能性があるからだ。
新型コロナの感染が広がり始めた当初、咳や発熱などを訴える患者に対して抗菌薬が処方される場合が多かった。2020年2〜7月の米国では、入院した約5000人の患者の半数以上が、入院後48時間以内に1種類の抗菌薬を処方された記録が残っている。また米国だけでも年間280万人以上が薬剤耐性菌に感染し、3万5000人以上が死亡しているという。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下で抗菌薬が過剰に使用されてきたことが、耐性菌の問題をさらに悪化させている可能性があることがG7コーンウォール・サミットでも薬剤耐性菌が課題として取り上げられた。
抗菌薬は細菌を殺すだけであり、ウイルスには効果がない。新型コロナウイルスたインフルエンザウイルスも同様に効果はない。しかし、肺炎の原因は真菌、細菌、ウイルスと多様で、どの病原体が原因かを突き止めるには少なくとも48時間かかるためとりあえず感染の原因を確認までの間処方される例が少なくないという。また、検査をしても原因が特定できない場合に処方される例も見られるという。
現在は新型コロナ患者の細菌や真菌との重複感染が20%未満であることが知られており、抗菌薬や抗真菌薬の使用を控えるようになったが、重症で入院が長期化する患者の場合、気管チューブやカテーテルを介して細菌に感染し、敗血症を引き起こす可能性があるため、抗菌薬が欠かせない。
さらに自己の判断で予防的に抗菌薬を服用するケースもあるという。こういった抗菌薬の過剰使用や誤用が耐性菌を増殖させ、繰り返し使用することで「スーパー耐性菌」を出現させる。
薬は医師の処方により適正に使うことが重要であり、耐性菌を生み出さないためにも、自己の判断で予防的に抗菌薬を服用することがないようにしていかなくてはならないであろう。
参考
塩野義製薬・千葉大 「経鼻ワクチン」で共同研究部門設置 新型コロナや肺炎球菌に応用 22年臨床入り
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=72561
千葉大と塩野義 粘膜ワクチン共同開発へ 侵入口で免疫発揮
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20220222/1000076969.html
塩野義製薬と千葉大学病院による 粘膜ワクチン共同研究部門設置に関する契約締結について
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2022/2/20220210.html
塩野義製薬と千葉大学医学部附属病院が共同研究部門 「ヒト粘膜ワクチン学部門」を2022年4月1日に設置します
https://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/info/_202241.html
薬剤耐性菌、次のパンデミックの恐れも コロナで懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD072CQ0X00C22A2000000/
COVID-19パンデミックの薬剤耐性サーベイランスに与える影響
https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/epidemi/10690-epi-2021-01.html
危険な薬剤耐性菌、次のパンデミックの恐れも、コロナで拡大懸念
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/020100048/
スーパー耐性菌を食い止めるには
https://www.amractionfund.com/ja/resources/how-to-stop-the-superbugs
薬剤耐性対策は全世界で次に備える課題
https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20210823_press.pdf
新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(2月18日UPDATE)
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/
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