脳の老化は40代の働き盛りから進む 脳のニューロン数は運動とある必須元素で増やせる

健康

まん延防止で外出がしにくくなることで運動量が減少している人が増加している。また飲食店での食事や観光地への旅行がはばかられ、テイクアウトしてきた野菜の少ない食事をとり続けるなど、不健康な生活が長期化している。そのため日々の生活がルーティン化し、無気力な生活につながりやすくなることで「喜怒哀楽」の感情コントロールが乱れ、うつ病や問題行動を起こしやすくなっているという。

このような状況は多くの人に現れており、外出をしない生活を長く続けることは脳に悪影響を与え、40代以降は一気に脳の老化が始まるといわれている。これを食い止め、脳のニューロンの数を増やすには、適度の運動と体に必須元素を食事から摂取することが重要である。

健康的な脳は30代まで!?

体の変化の中でも脳の変化(前頭葉の萎縮)が始まるのは40代からといわれている。CT検査(コンピュータ断層撮影)で脳を撮影した場合、脳は頭蓋骨の中で脳脊髄液という液体のなかに浮かんでいる状態だが、40代になる頃から少しずつ隙間が空き始め、歳をとればとるほど大きくなっていく。



脳は(大脳皮質)の表面積はおよそ新聞1ページの面積(2200cm2)に相当で、そのうち前頭葉が41%、側頭葉が21%、頭頂葉が21%、後頭葉が17%で、前頭葉の萎縮が肉眼で確認できるほどに進むと、意欲や創造性などが明らかに乏しくなるといわれている。

人間らしい行動を司る前頭葉

前頭葉は思考、感情、理性、意欲などの人間らしい行動を司る部分。そのため前頭葉が活動的に機能するとアクティブで若々しく活動できる。しかし脳の老化が始まりやすい部分でもあり、最も早く神経細胞の減少が起きるのが前頭葉。老化を遅らせるためにも前頭葉のニューロン数を維持・増加させるかがカギとなる。

動物実験で分かった「セレン」の役割

2022年2月3日、脳の活性化や老齢期における記憶力の維持には必須元素の1つであるセレンが役立つ可能性が高いことが分かり、論文で発表された。
Selenium mediates exercise-induced adult neurogenesis and reverses learning deficits induced by hippocampal injury and aging
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413122000055
これまでも運動を行うことで、体の機能の向上と脳への新たな刺激が脳の記憶領域を活性化させ、脳全体の機能向上になること確かめられているが、どのようなメカニズムで機能向上するかは分かっていなかった。



オーストラリア・クイーンズランド大学のタラ・ウォーカー氏らの研究チームは、運動後のマウスの脳を確かめたところ、38種類のタンパク質濃度が上昇していたことを突き止めた、特に「セレン」を含むタンパク質である「セレノプロテインP」が運動後に2倍になっていることに注目。
比較実験で、新しいニューロンを生み出す元となる細胞を培養し、そこにセレンが水や土壌などに存在する際の形態である亜セレン酸ナトリウムと、食事などに含まれる際の形態であるセレノメチオニンを加えた結果、たった14日間で神経前駆細胞が2倍になった。
さらに、亜セレン酸ナトリウムをマウスの脳に7日間直接注入したところ、海馬の神経前駆細胞の数が3倍に増加したという。

さらに確認実験として、セレノプロテインPの合成や受容体に関わる遺伝を欠損させたマウスを作って運動をさせたところ、マウスが運動をしても神経前駆細胞が増加することはなかった。
これらの実験から、

①亜セレン酸ナトリウムやセレノメチオニンを与えると、神経前駆細胞が2倍から3倍増加する
②セレンによる脳の再生効果は、神経新生が起きるかどうかにかかっている

などが分かったという。



この研究から「運動によるセレンの補給がニューロンを増加させ、認知力を改善することを示す」ことが明確になったという。
「セレン」は、豆類や穀類、ナッツなどに豊富に含まれているミネラルで、優れた抗酸化作用がある。しかし、過剰摂取による毒性も強いことから、専門家はセレン入りのサプリメントの使用を運動の代用品にしたり、セレンを過剰摂取したりしないよう呼びかけている。

どれぐらいの運動が良いのか

一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動が良いとされる。特に心肺機能の向上が脳の機能向上と相関関係があるといわれている。
具体的には、心肺機能が高めの方は、速足でのウオーキングやランニング、エアロビクスやエアロバイクを使った運動で、週に2日は最大心拍数の約75%まで上げる運動を短めに行い、残り4日は約65%までの運動をやや長めに行うのが脳のためには理想的だという。
心拍数の目安は、ランニングに例えると最大心拍数に対して80%以上のかなりきつめの全力疾走、70%はやや息が上がる走り込み程度だ。
最近はスマートウォッチの心拍計などで簡単に計ることができるので使ってみるのもよい。



ここまで本格的にはできない場合は、毎日、軽くウォーミングアップをした後、20分~30分程度心拍数を上げて歩くことでも改善につながる。
40代以降は意識して毎日の運動を行い、豆類や穀類、ナッツ類が含まれるバランスの良い食事を心がけることが、脳の老化を防ぎ若々しい人生を送ることに重要であろう。

参考
脳のニューロンの数を増やす栄養素が判明
https://gigazine.net/news/20220214-brain-exercise-selenium/
wiki セレン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%B3
「まあ、いいや…」和田秀樹が警鐘”40代から一気に脳の老化が進む人”の危険な兆候
https://president.jp/articles/-/54387
脳細胞が増える運動「3つの条件」
https://president.jp/articles/-/10350

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