重症化率が高い兆候の「BA.2」派生株 新型コロナは「ただの風邪」ではない が新たなる武器も

健康

2022年2月3日の世界保健機関(WHO)の発表では、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の「BA.2」は世界最速で広まったものの、初期段階のデータ分析では重症化などの兆候は見られないと示唆していた。しかし今日(2月18日)の発表では、オミクロンの一種で「BA.2」と呼ばれる新たな派生株について、従来株より急速に蔓延(まんえん)するだけでなく、より重い症状を引き起こし、さらにワクチンで形成された免疫を回避する可能性があることが新たに分かったと発表した。

デルタ株と同等の重症化が

日本の研究所内で行われた新たな実験が明らかにしたところによると、BA.2が重症化を引き起こす能力はデルタ株を含む旧来の変異株と同等の可能性があるという。
「BA.2」はこれまで感染力は高いが入院率が予想より低いため、気を付ければ恐れることがないものと思われていた。このことから一部には「ただの風邪」のようにイメージされ、マスクをつけることを拒否する風潮が生まれていた。
しかし「BA.2」派生株は、2回のワクチン接種ではワクチンによる免疫をほぼ回避するともみられている。3回目のブースター接種を行うことでワクチンの防御効果を回復させれば、感染後の重症化率を約74%低下させることができるという。
このほか「BA.2」は、抗体医薬品の「ソトロビマブ」など、複数の治療法に対して耐性を持つことも分かったという。これまでの医薬品が効きにくくなっていることを示している。



今回の研究結果は2月16日、医学誌に未発表であることを意味する「プレプリント」の状態でインターネット上に投稿されたものなので、査読もまだ行われていないという。そのため独立した専門家による検証はこれから行われるが、新たな知見として興味深い。
この論文に対して米オハイオ州のクリーブランド・クリニックで微生物学の部門責任者を務めるダニエル・ローズ博士は「人間から見れば、「BA.1」よりも厄介なウイルスかもしれない。より感染力が強い上に、一段と重い症状を引き起こす可能性がある」と指摘した。
研究を実施した東京大学医科学研究所の佐藤佳准教授は、これらの結果が証明するように「BA.2」をオミクロン株の一種とは見なさない方がよいと指摘。CNNの取材に答えた佐藤氏は、検査で特徴が検出されないことから「ステルスオミクロン」とも呼ばれるという「BA.2」について、同株に特化した検出法の確立が多くの国にとって急務になるとの考えを示唆した。
さらに、米ワシントン大学医学部のウイルス学者、デボラ・フラー氏は、変異が多いことを指摘し、新型コロナの変異株の名称として新たなギリシャ文字を検討する段階に入ったかもしれないと述べたという。

MSDが3月までに80万人分の「コロナ経口薬」提供

MSDは、特例承認された新型コロナウイルスの経口治療薬「ラゲブリオ」(一般名モルヌピラビル)について、3月までに80万人分を日本政府に納入することを通知し、その理由として変異株「オミクロン株」の感染者が急増しているため、当初計画を前倒しするという。1月に5万人分を納入済みで、2月に22万人分、3月に33万人分をそれぞれ納入する。



米メルクが開発したモルヌピラビルは新型コロナの軽症から中等症の患者向け飲み薬で、その効果はウイルスの増殖を抑え、重症化を防ぐ効果があるとされる。これまでの契約では、合計60万人分を供給する予定だった。

「ただの風邪」ではない理由

新型コロナウイルスに関して、最先端研究に特化した生物医学ジャーナル「Nature Medicine」誌の発表によると、感染後1年間に、

①不整脈、心臓の炎症、心筋梗塞といった心臓に関する疾患リスク上昇
②脳梗塞などの脳血管障害リスク上昇
③血栓塞栓症(足などの血管に血栓が詰まる病気)の発症リスク上昇

という、「血管」系に罹患して重症化しやすい研究結果が出ている。
新型コロナは「ACE2」と呼ばれる受容体に、ウイルスの「スパイク」という、突起部分が結合し感染する。「ACE2受容体」は血管にも広く分布していることから血管の炎症や、血栓ができやすい傾向になることは分かっていた。
日常生活においてやみくもに恐れることはないが、健康的な生活を送るよう注意することに越したことはない。



新型コロナの特徴はNHKの特設サイトや日本感染症学会を参考にしてほしい。
新型コロナウイルスの特徴は?
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/detail/
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31

新しい治療メカニズムをつきとめた

ソルボンヌ大学医学部の根来秀行教授のグループが、新型コロナに対する新しい治療メカニズムをつきとめ、その論文が英国医学誌に掲載された。
「Expert Review of Anti-Infective Therapy」1月号に掲載されたのは「ウイルス性障害に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)とクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)の治療可能性」という論文で、5-ALAは自然界に存在するアミノ酸が細胞内に取り込まれるとミトコンドリアと呼ばれるエネルギー工場を活性化する作用があり、そのとき一時的にプロトポルフィリンIX(PPIX)に変換される。このPPIXには様々なウイルスを抑制する抗ウイルス作用があるという。
さらにPPIXはその後、鉄と結合してヘムという物質になり、ヘムは血液の中で酸素を運搬するヘモグロビンや、ストレスなどで発生した活性酸素を無毒化するカタラーゼになり、体を防御する役割を担う。5-ALA単体では効果があまりないが、SFCと一緒だと強力にHO-1を誘導することが分かっているという。



具体的には、活性酸素のもとになる物質の生成を抑え、炎症性サイトカインを抑える効果があり、新型コロナウイルス感染重症者には血中HO-1が減少することをHO-1産生を促す。これによりサイトカインストームを抑制し、重症化を防ぐなどの効果が期待され、すでに複数の研究で5-ALAとSFCの組み合わせによる抗炎症・抗酸化作用が報告されているという。
5-ALAとSFCは日本と一部の中東諸国で栄養補助食品として承認され、標準的な治療を受けた新型コロナ患者よりも回復時間が早かったとの報告もある。
これまでに新型コロナウイルスは、日本で400万人を感染させ、2万人超の命を奪っている。
今回の臨床で有用と判断するには、今後さらに遺伝子レベルでのメカニズムを科学的に検証しつつ、実際の効果や安全性、どんな薬剤をどのタイミングで、どのくらいの量を摂取するのがいいのか、などを多施設でのランダム化比較試験を長期に行い検証しなければならないが、早期の治療薬の実現を期待したい。

おわりに

日々8万人を越える人々が新規感染者となっている今、新型コロナウイルス感染症に罹患し、その後回復した人々の体験メッセージなども今後の生活のヒントとなるのではないだろうか。1人1人が意識して過ごしていくことが、早く元の生活を取り戻す早道であろう。

参考
新型コロナウイルス感染症に罹患し、その後回復された方の体験メッセージを紹介
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/041200/d00208031.html
オミクロン変異株の派生株、重症化に至らぬ可能性 WHO
https://www.cnn.co.jp/fringe/35183057.html
オミクロン「BA.2」派生株、重症化率高い兆候 新研究
https://www.cnn.co.jp/fringe/35183733.html
「コロナ経口薬」提供急ぐ、MSDが3月までに80万人分納入へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/d759544ae3ad210a432f617306d05b9fb8b137ba

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