人に無害な222nm紫外線が実用化へ、新型コロナを不活化

健康

深紫外線LEDの様々な施設へ設置が、新型コロナ変異種やウイルスや細菌の拡大を食い止める可能性が出てきた。波長が260nmより波長の短い紫外線によるウイルスや細菌の不活化(感染力や毒性の消失)と技術革新で、人体に照射しても影響がほとんどないという夢の性質を備えた製品を開発した。深紫外線開発では、日本のメーカーが圧倒的な優位に立っている。

<目次>
1 深紫外線とは
2 「波長が短く光出力が大きい」と製品の寿命が短くなることに挑戦!
3 UV-C領域での研究結果
4 デメリットの軽減と今後

1 深紫外線とは

紫外線は可視光線よりも波長の短い(=エネルギーの高い)光の一種で、 紫外線も波長の長いものから順に UV-A, UV-B, UV-C とランク分けされている。

UV-A は 320~400nm 程度の波長で、比較的透過力が高く皮膚の奥(真皮)まで到達して、 皮膚のたるみなどの原因になる。UVAは生体内の様々な分子に吸収され、その結果、活性酸素を介して細胞の膜脂質や蛋白質、DNAやRNAなどに酸化的損傷を与える。
UV-B は、290-320nm 程度の波長で、日焼けや皮膚癌の主な原因(UV-A の600-1000倍の強さ)となるが、太陽光中の紫外線には 5% 程度しか含まれていない。
日焼けの紫外線割合は、UV-Bが7~8割、UV-Aが2~3割と見積もられている。
UV-C は、200-290nm 程度の波長で、非常に強い殺菌力を持つが、 オゾン層で吸収され地表には届かない。
UV-C・UV-BとUV-Aの一番大きな違いは、UV-C・UV-Bが細胞の核内にあるDNAやRNAに直接吸収され、損傷を与える。UV-Cは他の紫外線よりエネルギーが高いため、細胞内のDNAやRNAに作用する力が強い。



2 「波長が短く光出力が大きい」と製品の寿命が短くなることに挑戦!

波長が短いと光出力が低下し、深紫外LEDの寿命が短くなる。日亜化学工業の調べでは、波長が265ナノメートルの場合、推定寿命が約2000時間だが、波長が280ナノメートルだと約10倍の約2万時間まで伸びるという。

3 UV-C領域での研究結果

日亜化学工業と徳島大との共同研究では、波長を280ナノメートル、光出力を70ミリワットまで高めた深紫外LEDを12個使った「ハンディUV照射機」を試作し、ウイルスから5センチの位置から30秒間照射したところ、99・99%不活化すると確認した。波長を280ナノメートルとしても光出力を上げることで、260ナノメートルの波長と同程度の不活化効果があることを確認した。260ナノメートルより波長を長くすることで長寿命化につながり、実用的な深紫外LEDが完成したという。
ウシオ電機と広島大学との共同研究では、ウシオ電機の222nm紫外線技術「Care222」を使いプラスチック上の乾燥した環境において照度が0.1mW/cm2の222nm紫外線を新型コロナウイルスに照射。10秒の照射で88.5%、30秒で99.7%が不活化したことを確認している。

4 デメリットの軽減と今後

従来、紫外線によるウイルス・細菌の不活化には、250nm前後の紫外線が主に使われていた。この紫外線はウイルス・細菌の不活化効果こそ高いものの、人体に照射すると皮膚がんや白内障を発症させる恐れがあり、人がいない空間でしか使えなかった。
ウシオ電機の222nm紫外線技術「Care222」では、エキシマランプ光源と光学フィルターを組み合わせて人体に有害な波長域(230nm以上)を大幅に除去することで、ウイルス不活化・殺菌効果と人体への安全性を両立させた。
更に222nmはかなり短波長なので、有機物による吸収が強く、表面でほぼ吸収されるという指摘も出ているため、人体への危険性が低いともいわれている。これらのことから、人体に無害な222nm紫外線であれば、病院や学校、オフィスなどありとあらゆる公共・商業施設で常時照射できるため、今後の経済・社会活動を大幅に広げられる可能性が高まる。
すでにウシオ電機は、照明器具などを手掛ける米アキュイティ・ブランズ(Acuity Brands)と供給契約を締結し、ウイルス・細菌の不活化機能付き照明器具を2021年秋頃には製品化の予定となっている。

 

今後、深紫外線を活用した製品が出そろい、様々な場所で使われることを期待したい。

参考

http://anticovid19.starfree.jp/#UV
https://toyokeizai.net/articles/-/371365
https://newspicks.com/news/5523979?ref=business
https://mainichi.jp/articles/20210109/k00/00m/040/056000c
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08672/

 

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