ゾウは超低周波音、植物は匂いとRNA、キノコは電気信号、動物も植物もおしゃべり大好き

テクノロジー

動物は意思疎通のために会話をしていることはよく知られている。コミュニケーションを取ることで、えさの在り処や仲間に危険を知らせることをしている。近年の研究で鳴き方と行動で、その意味が分かりつつある。象は10Hz前後の超低周波音を使って10km先の仲間と会話している。さらに植物やキノコ類も様々な方法で周囲の仲間と会話していることが分かってきた。

カラスは鳴き方と鳴く回数で会話する

身近な野生動物にカラスがいる。日本には主に「ハシブトガラス」「ハシボソガラス」の2種類が生息している。
「ハシブトガラス」は、都会や住宅街で見かけることが多い。体格が良く、くちばしが太く上部がアーチのようにカーブしている。足でピョンピョン跳ねるようにして歩くのが特徴。
「ハシボソガラス」は、自然が多い郊外や田舎に多く生息している。体格が良いハシブトガラスが生息域を拡大しているため生息地を奪われつつある。体形はやや小柄で、頭部の段差が少なくなだらか。くちばしは細く、人間のように足を左右交互に出して歩く特徴がある。



カラスの言葉には40種類以上のバリエーションがあるが、代表的なものとして、

①カァー、カァー:のんびりとした口調であれば、仲間とコンタクトを取りながら飛んでいるときの鳴き声
②カッカッカッ:短く切って鳴いているときは、興奮状態の鳴き声
③コロコロ ゴロゴロ:カラスが甘える声
④クアッ、クアッ カァッ、カァッ:朝に多い。自分の縄張りを主張する鳴き声
⑤カカカ:巣に獲物を持ち帰ったときの合図


また鳴く回数も重要で、6回以上同じパターンで鳴いているときは集団で襲ってくることがあるため要注意だ。

1回:あいさつ
2回:空腹、注意喚起
3回:安全、満足感、位置を知らせる
4回:警戒、危険、威嚇
5回:警戒、逃げろ
6回:敵がいる
7回~8回:集団行動の合図
ゾウの耳は頭と足の裏にある

ゾウは人間よりもはるかに優れたコミュニケーション能力を持つ。広い荒野で集団行動するためにはお互いの位置の把握は重要であり、進化の過程で足の裏を通して会話するという独特の能力を身につけた。その反面、視力はよくない。



人間が聞こえる音の高さは20~20,000Hzが標準的で、100Hz以下を低周波音、20Hz以下は超低周波音と呼ばれる。ゾウは10Hz前後の超低周波音を使って挨拶や自分の行動など、100種類以上の言葉を使って、10km先の仲間とコミュニケーションができるという。

互いにコミュニケーションを取り協力しあって森になる

近年になって「木々は会話を行っており、人間はその言葉を学ぶことができる」ということが生物学者や生態学者から主張されるようになった。
大学で森林学を学んだシマード氏の研究で明らかになったのは、木々の根には特有の構造を持った菌根という共生体が存在し、この菌根によってネットワークを形成することで同種の樹木だけではなく異なる樹木間でもコミュニケーションが取られているということが分かったという。



その方法として、木々は炭素・窒素・リン・水・防御信号・アレル化物質・ホルモンなどを言葉として「会話」をしているようだ。木々が生存競争を行っている反面、周りの木々に対して「お手伝いしましょうか?」「少し炭素をわけてくれませんか?誰かが私の上に布をかぶせて日陰になっているのです」と会話し共存関係も築いている。

アカシアはガスで仲間に危険を知らせる

アカシアの木は動物に葉を食べられると、樹木からエチレンやサリチル酸メチルといった揮発性物質(ガス)を分泌して、近隣のアカシアの木に「食べられているから注意しろ」という情報を送る。するとガスを感知した周囲のアカシアの木の葉には、毒素である「苦味成分」を多く生産して、捕食者に対抗する。

植物は根からRNAという手紙を出し情報伝達する

これまでなぜこのようなことが起きるか、良く分からなかった。今回、サンターナ大学院大学の研究チームが、植物たちが遺伝情報の記録にも使われるRNAを用いて、ある種の会話を行っていることを突き止めた。
発見のキッカケは、シロイヌナズナの異変だった。研究者チームが開花を遅くする働きがある短いRNA(miR156)を製造する変異シロイヌナズナを水耕栽培で育てていた。短いRNAは長いmRNAに結合して利用不能にできることが知られており、遺伝子の働きの調整などの研究に用いられていた。すぐ隣で育てていた全く別株の野生型のシロイヌナズナの開花が遅れていることに気づく。



不審に思った研究者が両方の植物たちの根が伸びている水槽の水を調べたところ、短いRNA(miR156)が含まれていることが判明。そこで変異シロイヌナズナから抽出した短いRNA(miR156)だけを野生型に加えてみると、同様に開花時期の遅延が起こった。この結果から、、植物は水と根を介して短いRNAを使った情報伝達をしていると結論づけた。

キノコは複雑な文章を作って会話する

2022年4月6日、英国西イングランド大学が「キノコが電気信号を使っておしゃべりをしている」という論文を、英国王立協会の学術誌『Royal Society Open Science』に掲載した。
論文では、スエヒロタケやエノキタケなど異なる4種類のキノコに電極を刺し、キノコ内に走る電気活動を測定。その結果、それぞれの種類ごとに特徴のあるパターンが記録され、パターンを単語とみなしたとき全体が「文章」になることが判明したという。

観測された単語の数はなんと合計50種類。単語の組み合わせから「スエヒロタケ」が最も複雑な文章を作り、次いで「サナギタケ」。種によって「文法」が異なったり、キノコの種類それぞれの「方言」もあるという。
キノコ研究の第一人者である静岡大学特別栄誉教授の河岸洋和氏によると、「これまでもマツタケとアカマツがそれぞれ成長に必要な物質を分泌しあっていたり、匂いを出して虫を誘引するなど、物質レベルでコミュニケーションをしていることはわかっていました。しかし今回の研究は、キノコ内に流れる電気的な信号に着目している点で新しいといえるでしょう。それを単語や文といった構造に当てはめていった点もこれまでの研究にはないアプローチです。



キノコの面白い特徴として、ひとつの場所に固まって生えているキノコの一部に光を当てると、光が当たっていない場所のキノコも一緒に成長したり、生えてきたりするんですよ。それぞれのキノコは、キノコが生えている樹木や土の中で『菌糸体』という塊と繋がっていて、一見別々に見えるものでも同じ個体なのですが、この菌糸体を通じて今回のような電気信号のやりとりがされているとすれば面白いですね」と話す。
動植物の会話研究が進むと、お互いの生息環境を守りながらよりよい関係を築いたり、花や果物の成長を人間が求める時期に調整したりできるようになるかもしれない。

参考
カラスはなぜ鳴く?うるさい鳴き声の意味や、襲われないための知識を解説
https://meetsmore.com/services/harmful-animal-removal/media/89745
動物の不思議「ゾウは重低音で10km先の仲間と会話」「キリンは1.5mの高さから赤ちゃんを産み落とす」
https://woman.mynavi.jp/article/130630-032/
植物はRNAを「手紙」にして隣人と会話していると判明!
https://nazology.net/archives/98851
「木々は会話し複雑な社会生活を送っている」と専門家、私たちは木々の言葉を理解できるのか?
https://gigazine.net/news/20180101-trees-language/
「キノコは仲間と会話していた」衝撃論文を日本の菌類博士が読み解く
https://news.yahoo.co.jp/articles/ebccb7c286764173c3a77be4c269d44fce0ab54e

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