「大豆」の代替肉ではなく「脱脂米ぬか」から代替肉の調製に世界で初めて成功

テクノロジー

資源小国の日本で毎年国民が食べきれない量のお米が生産されている。このお米を精米する時に出るのが大量の「米ぬか」。

「米ぬか」には通常15~21%程度の油分が含まれており、これを絞ったものが食用油の「米油」であり、その搾りかすが「脱脂米ぬか」。10月6日に山形大学は「脱脂米ぬか」から代替肉を製造することに成功したと発表した。

最大の長所は「脱脂米ぬか」の活用

これまで大豆などからつくる代替肉が一般的だったが、大豆は様々な加工品がすでにつくられており、代替肉を製造するには供給の問題が発生する可能性があった。

米ぬかは精米する際に発生する。通常白米にするとき約8%程度発生し、その中にはビタミン・ミネラル・食物繊維のほかに通常15~21%程度の油分が含まれ、その油分を絞ったものが「米油」として販売されている。



残った「脱脂米ぬか」を活用することはSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の廃棄物を減らすことにもつながるとともに、国内で自給が可能であることも重要なポイントとなる。

概要とポイント

この研究を行ったのは、山形大学学術研究院 渡辺昌規教授(バイオマス資源学)の研究チームで、株式会社サタケ(代表取締役社長:松本和久)との共同研究で代替肉を開発した。
【プレリリース】米糠タンパク質濃縮物からの代替肉調製に成功 ~国内産原料からの代替肉製造による持続的な稲作の可能性~

米糠タンパク質濃縮物からの代替肉調製に成功 ~国内産原料からの代替肉製造による持続的な稲作の可能性~|国立大学法人 山形大学




研究のポイントは次の通り。

①株式会社サタケと共同開発したIP-EWT法により得られたアレルゲン・GMOフリー高濃度米タンパク質抽出物から調製。
②作成された代替肉は、大豆タンパク質製造された代替肉と同様な微細構造、弾力性を有することが認められた。
③米タンパク質、脱脂米糠から製造された代替肉としては世界初となる。
④代替肉原料の選択肢が大豆だけでなく米ぬかにも広がり、国内自給が可能で国内産原料で安心・安全な代替肉生産が期待できる。
⑤これまで食肉製造のための動物飼育で発生していた大量の飼料や水、温室効果ガス発生などの環境負荷を低減できる

本物の肉と遜色のない色と触感




渡辺教授らの研究チームは、「脱脂米ぬか」を用い、高濃度、高栄養価の米タンパク質を回収し、精製するIP-EWT法(特許技術)を持っている。研究ではIP-EWT法で生成された米糠タンパク質代替肉サンプルと動物肉(牛、豚、鳥)の水分保持率を比較した。すると本物の肉の水分保持率を超える値を示すとともに、大豆タンパク質よりも吸油性が高いことから、水分と油脂の調和のとれた素材であることが確認された。また、テクスチャー(硬さ、脆さ、弾力)解析の結果、米糠タンパク質代替肉サンプルはより柔らかく、弾力を有する特徴を持っており、大豆タンパク質同様に代替肉原料として利用可能な植物タンパク質原料であることが明らかとなったという。
IP-EWT法によって、抽出される米ぬかタンパク質は、高濃度かつ高栄養価で、アレルゲンフリー、GMO(遺伝子組み換え農作物)フリー。そのため国内産原料で安心・安全な代替肉生産が期待できるという。

今後、渡辺教授らは実用化に向け、約2年後のベンチャー企業設立を目指すという。
国内で原料の調達と消費ができることは、海外からの原料調達に苦しむ日本にとって非常に有益となろう。
参考
脱脂米ぬかから代替肉 山形大農学部が世界で初めて成功 国内自給に期待
https://news.yahoo.co.jp/articles/ebcd8c847731d51c627f416b6dc1e0f9d4283d1f
山形大 「米ぬか」から安全で高栄養な「代替肉」製造に成功、ネット「食べてみたい!」「ディストピア飯w」
https://news.mynavi.jp/article/20221014-2480956/
米糠タンパク質濃縮物からの代替肉調製に成功~国内産原料からの代替肉製造による持続的な稲作の可能性~
https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/files/4716/6504/0223/Pressform_20220922.pdf
「米ぬか」は貴重な食糧源
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/hyoka/rmepal000000ijq9-att/9tokyob.pdf

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