EV化だけでは解決しない脱炭素問題 製造から廃棄までトータルでは現時点ではHVが最適解

世界の車の脱炭素はEV(電気自動車)化が推し進められ主流のような状況だが、製造から使用、廃棄までをトータルで考慮した場合、現在はHV(ハイブリッド車)が優位にある。その理由としてEVで使用する電力を何で製造するかによっても脱炭素効果はかなり変わり、製造コストや航続距離などのコストパフォーマンスはHVの方が高い。

横睨みをする日本政府

日本政府は2020年に「2050年までに、温室効果ガスの排出実質ゼロ」という目標を示した。自動車は国内のCO2排出量の2割弱を占めている。
政府は2018年の時点で「2030年までに、国内の乗用車における新車販売の5~7割をハイブリッド車(HV)やEVにする」という目標を示していたが、海外政府の脱炭素目標を受けて2021年1月には「2035年にはすべての新車を電動車にする」という、高い目標に変更した。

この表明により、ディーゼルエンジン依存の普通トラックを除き、2035年には市場に出されるすべての新車が電動化されるという方針が決まったという。

EV化だけでは問題は解決しない

多くの人は「車の脱炭素」といえば「走行時の排ガス」をイメージするが、自動車の脱炭素化を考えるには、製造から輸送、廃棄まで含めたトータルで発生するCO2の排出量を減らさなければ「車の脱炭素」ができたとはいえない。

製造からディーラーに届くまでの製造・輸送・廃棄のCO2排出量は一般の車と変わらず、使用時のCO2排出量も電気を発電する方法(火力・水力・自然・原子力など)によってそのクリーン度は変わる。

国によりCO2排出量削減率の違い

調査会社レイディアント・エナジー・グループ(REG)の調査は、米EV大手テスラの「モデル3」と同等電費のEVと平均的なガソリン車について、それぞれ100キロ走行するのに必要な電力とガソリンによるCO2排出量を比べたもので、2021年1月1日から10月15日まで行われた。
ガソリン車に対するEVのCO2排出量削減率が最も高いのは、

スイス   100%:電力を原発と水力で賄っているため
ノルウェー  98%
フランス   96%
スウェーデン 95%
オーストリア 93%

となっている。

一方、削減率が低いのは

キプロス    4%
セルビア   15%
エストニア  35%
オランダ   37%

欧州最大の自動車生産国であるドイツは、電力を再生可能エネルギーと石炭の両方に頼っており、削減率は55%となっている。

EV車は製造過程で2.5倍のCO2を排出する

EV車は製造過程でガソリン車と比較して2.5倍程度のCO2を排出するという問題が指摘されている。

特にバッテリーの製造時に多量のCO2を排出。フォルクスワーゲンの報告では、EV車の製造で発生するCO2排出のうち、約40%がバッテリー製造時(材料に使う化合物などの製造で多量のエネルギーを使用)に発生していると示唆されている。

バッテリー容量が小さいHVの方がCO2を削減できる

トヨタ自動車の最高科学責任者(CSO)のギル・プラット氏が新聞社などの取材で「HVやPHV(プラグインハイブリッド車)の比率を高める方がCO2削減効果がある」と述べた。
さらに「EVがカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の唯一の手段とする議論から脱するべきだ」と主張している。

プラット氏は現状のリスクを考慮した場合、「100台の内燃機関車のうち1台をEVに置き換えるより、同じ電池容量で作れる90台のHVに置き換えた方が30倍のCO2を削減できる」とのデータを示している。

おわりに

トヨタ自動車はハイブリッド車の電動化技術に関する特許をトヨタ自動車がオープンにする方針を発表し、2030年末までに約2万3740件の特許を無償で提供している。特許技術の開示と無償提供は世界広しといえどできることではない。

トヨタが本気で世界の企業全体でカーボンニュートラルに立ち向かえるよう主導していると言えよう。これはとても素晴らしいことであり、この技術を活用し地球温暖化防止に一役買ってほしいと思う。
参考
HV特許を無償提供するトヨタの真意 そして電動化への誤解
https://toyotatimes.jp/spotlights/018.html
「ハイブリッド車」は脱炭素に強い効果、トヨタの最高科学責任者の主張
https://newswitch.jp/p/35618
車の脱炭素化とは?日本の目標や矛盾点は?EVやハイブリッド車についても解説
https://gurilabo.igrid.co.jp/article/1778/
製造時のCO2削減 ホンダなど、排出量の公開検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC083CC0Y1A400C2000000/
車の脱炭素化はEV化だけでは解決しない!目標にむけた課題と取り組み
https://www.apiste.co.jp/column/detail/id=4812
アングル:意外と低いEVのCO2削減率、電源構成で大きな差
https://jp.reuters.com/article/ev-co2-idJPKBN2HW0EE

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