速さと使いやすさを両立して4期連続4冠の世界一を達成した「富岳」　いま時代が求めたスパコン

スパコンの世界は、今日トップでも明日は下位に沈む。世界中で激烈な競争を日々繰り返している。
そんな中、富士通と共同開発したスーパーコンピューター「富岳（ふがく）」（神戸市）がスパコンの計算性能を競う世界ランキングの主要4部門で1位になったと理化学研究所が16日に発表した。

すでに様々なところでも話題となっている「2位じゃだめなんでしょうか」の名セリフ。このセリフは大きな勘違いとともに広まったが、この発言が「富岳」の進化にとても重要であったことは余り知られていない。
2009年に旧民主党政権の事業仕分けでスパコン開発をめぐり、蓮舫参議院議員が「2位じゃだめなんでしょうか」と発言したことで、当時の民主党が科学技術への理解がなかったように捉えられてしまったが、実際はそうではなかったという。当時「次世代スーパーコンピューター事業」は総額1230億円を費やし、1秒間に1京（けい）回の計算ができるスパコンを開発しており、それが後に世界一になるのがスパコン「京」だった。



すでに米国では次世代スパコンの開発が進んでおり、中国も急ピッチで開発していたため、世界一を取るのは厳しい状況であると思われたので、あの発言になったようである。
当時の詳しい経緯についてはYAHOO!ニュースが詳細にまとめているのでそちらを見て欲しい。
【YAHOO!ニュース】
スパコン「京」の運用終了。「2位じゃダメなんですか？」は何だったのかを改めて整理する
「京」にはある弱点もあった。それは計算に重要な「ベクトル部」の性能が上がっていないことや、「スパーク」プロセッサーを使っていたため産業面ではあまり利用されなかったという。
しかし「富岳」では初めから使いやすさや、アプリケーション開発を重視し、スマホや組み込み用などで広く使われている「アーム」プロセッサーを使用することで汎用性を高めたことで、富岳上でマイクロソフトのパワーポイントも動作するという。

さらにプロセッサー単体が優れていただけでなく、プロセッサー同士をつなげる通信を行う「インターコネクト」も富士通の独自設計で非常に高性能だ。この技術は「京」から継承したもので、「富岳」は「京」の弱点を克服し、利用者の使いやすさに重点を置き、実用性を向上させることで、他のスパコンを凌駕する性能を発揮している。
「富岳」は1秒あたり約44・2京（けい）（京は兆の1万倍）回の計算速度を誇り、２位の米国のスパコンに約３倍の性能差をつけたという。この高い計算能力を遺憾なく発揮したのがコロナの「飛沫感染リスク」シュミレーションだ。

これまでも様々なシュミレーションで活躍している「富岳」。新型コロナウイルスの感染対策や治療薬、IT創薬の研究で成果を挙げているほか、津波やゲリラ豪雨の予測を行うAIモデルなど、防災に貢献する研究も進んでいる。
特に「富岳」が得意とする産業分野は次の６つ。

理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「今回あらためて富岳の広い分野における世界的な先進性が示された。今後もそのパワーを幅広く我が国のSDGsや脱炭素社会の実現に貢献できるよう、高度化・発展させていく」と述べ、さらに「さまざまな分野について、その高い性能により現実社会に役立つ成果を挙げてきた。今回、あらためて富岳の広い分野における世界的な先進性が示された」とコメントしている。
「富岳」について知りたい方は次のリンクを参考に。
理化学研究所　計算科学研究センター



参考
スパコン富岳の世界一　起点は「2位じゃだめですか」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO69707370V00C21A3000000/?page=2
「2位じゃ駄目か」の蓮舫氏、スパコン富岳世界トップで「努力に敬意」
https://www.sankeibiz.jp/business/news/200623/cpc2006230713002-n1.htm
スパコン富岳、4期連続で世界4冠　米では首位奪取へ新型着々と
https://news.yahoo.co.jp/articles/dc32a78875c3b81c1c37cb2b4c050d1a045cec0e
スパコン「富岳」が世界一 世界初の4期連続4冠
https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2021/11/16/45264/
富岳４冠４連覇　スパコン世界ランキング
https://www.sankei.com/article/20211116-FWZGGQDXUZLNNBNDM3IQQWPADY/
世界最高水準の性能と汎用性を持つスーパーコンピュータ　富岳
https://chizaizukan.com/property/450/