スイス・ジュネーヴ大学が高強度パルスレーザーを使って空気をイオン化し空気中をプラズマ状態にすることで稲妻が通る道を作成し、自然の稲妻を誘導することに成功した。これまでいつ、どこに雷が発生するか予測が難しかったが、この技術を使えば、無差別に落ちる落雷を避雷針に誘導したり、将来的には自然エネルギーとして使えるようになるかも知れない。
雷は一般的には、雲の中にあるちり(微粒子)や水、氷の粒がぶつかり合い、摩擦帯電や氷の粒が分裂する。これにより雲の中にプラスとマイナスの電荷が発生することが原因。
プラスの電荷は雲の上の方に、マイナスの電荷は下の方に集まりやすい性質があり、その間には引き合う力が働き、そこに電界が生じる。たとえば、夏の時期によく現れる積乱雲のような雲が雷を発生させやすい雲といえる。
気象庁は全国30ヵ所の空港に雷監視システムを設置し、おおよその位置を常に観測している。気象庁は雷電または雷鳴(強度1以上)のいずれかを観測した日を雷日数として集計している。気象庁が公開している平均雷日数の上位10位までを比較してみた。
2位 福井県福井市 35.0日(夏季11.6日/冬季23.4日)
3位 新潟県新潟市 34.8日(夏季11.7日/冬季23.1日)
4位 富山県富山市 32.2日(夏季16.5日/冬季15.7日)
5位 秋田県秋田市 31.4日(夏季10.9日/冬季20.5日)
6位 熊本県熊本市 26.6日(夏季22.0日/冬季4.6日)
7位 鳥取県鳥取市 26.4日(夏季12.6日/冬季13.8日)
8位 島根県松江市 25.4日(夏季12.6日/冬季12.8日)
9位 鹿児島県鹿児島市 25.1日(夏季18.8日/冬季6.3日)
10位 栃木県宇都宮市 24.8日(夏季22.6日/冬季2.2日)
(wiki 雷より:統計期間1981 – 2010年、気象官署のみ)
データから、夏場は北関東で雷が集中して起こり、冬場は東北地方の日本海側に多く発生している。
夏場の雷発生率が高いのが県は「群馬県」で、上毛三山と呼ばれている「赤城山」「棒名山」「妙義山」を始め、草津白根山など多くの山地が連なることで上昇気流が起きやすく雷雲が発生しやすくなる。
その雷雲が風に吹かれて「栃木県」や「茨城県」に移動するため、北関東全体で雷が多発する。
冬場は日本海沿岸に多く発生し、北陸・東北地方の日本海側に夏の100倍以上のエネルギーの雷が多発する。特に静かな音で忍び寄り、いきなり大きな音で「ド~ン」と落ちるので、夏に比べて予測が難しい。
落雷の対策といえば避雷針が一般的だが、これには有効範囲や効果性の点で限界があった。そこでスイス・ジュネーヴ大学(University of Geneva)応用物理学部に所属するジャン・ピエール・ウルフ氏ら研究チームは、空に高強度パルスレーザーを発射することで、自然発生した稲妻の進路を変え、避雷針まで誘導することに成功した。研究の詳細は、2022年7月8日にプレプリントサーバ「arXiv」で公開されている。
稲妻を誘導する原理は、大気中の分子に高強度パルスレーザーを照射するとレーザーエネルギーで大気中の分子が破壊される。分子が原子になり、さらに原子核のまわりの電子が離れることで、レーザー光の中をイオン化する。イオン化した状態の特性として、「電流が極めて流れやすい」性質があり、大気中に稲妻が通る道がつくられ、発生した稲妻はこの道を通って電流が流れる。
実験はスイス北東部のゼンティス山で実施された。ここには124mのタワーがあり、金属製の避雷針が備わっている。すぐ隣から高強度のパルスレーザーを空に向かって発射することで、稲妻が通る道をつくり、自然発生した稲妻をタワー(避雷針)まで誘導した。
実験は2021年7月21日~9月30日の約3カ月間続けられ、その間、タワーから3km圏内で発生した雷雨に、合計6.3時間レーザーを照射し、観測された16回の稲妻のうち4つを避雷針に誘導できたという。
研究チームは「レーザー避雷針の開発につながる」と述べ、重要で精密な機器が集まっている空港やロケット発射施設、また大規模インフラにおいて重要な役割を果たすと語っている。
「雷のエネルギーをすべて電気に変換できる技術があったら」と考えた人も多くいるはず。現在の技術では実用化するのに大きな壁がある。
雷の発生場所は雷監視システムでおおよそ把握できるようになった、レーザーで稲妻を誘導する方法は有効であり、発生した全ての稲妻を効率よく避雷針に誘導する技術開発と精度を上げることで壁を乗り越えられる。
② 雷エネルギーを効率的に電気として使える技術がない
落雷の際の電圧は約1~10億ボルト、電流は数万~数十万アンペアといわれている。これを計算すると雷のエネルギーは、1回で数万~数百億キロワットになる。時間はわずか1/1000秒〜1秒程度、エネルギーに換算するとおよそ900メガジュール(250kWh)といわれている。
③ 雷エネルギーの電圧・電流を蓄電する設備がない
雷の温度は「約3万℃」といわれており、太陽の表面温度の約6000℃と比較して約4~5倍の高熱である。これは瞬間的に流れる大電流により、周囲が加熱(プラズマ)されるためであり、現在の技術では蓄電できるまで温度や電圧・電流を下げることが難しい。そのため安定した電力として利用することが困難といわれている。
もし無駄なく雷の電力量をすべて蓄電できる技術があれば、1回の落雷で家庭用省電力エアコンを10日も使用できるくらいの電力量になるともいわれている。
もしかしたら稲妻は最後に残された自然エネルギーなのかも知れない。このエネルギーを制御し利用できる日が来ることを期待している。
参考
大学教授が教える落雷の原理と雷対策のウソホント
https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/life/kaminari_taisyo/
都道府県別の年間雷日数ランキング
https://47todofuken-ranking.com/kaminari/
【気象庁】雷監視システム
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder1-2.html
雷発生率が1番多い県は?夏と冬の雷の特徴には違いがあった!
https://www.mikado-sc.co.jp/minnanodenki/column/entry-2665.html
空にレーザーを発射して自然発生した稲妻の進路を変えることに成功
https://nazology.net/archives/112424
wiki 雷
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B7
Yahoo知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1199804811
【日本科学未来館】質問: 地震や雷で発電・蓄電できる?
https://www.miraikan.jst.go.jp/sp/case311/home/docs/energy/1104130936/index.html
雷の電圧や威力はどれほど強力か
https://www.dinnteco.jp/column/power/
コメント