新型コロナ新変異株「XE」は「BA.2」の9.8%感染力が強い 新変異株「XD」「XF」も続々と確認される

健康

一時は下落傾向だった新規感染者数がこのところ上昇に転じている。国内では「BA.2」の拡大が主な要因だが、海外ではイギリスを中心に「BA.2」の9.8%感染力が強い新型コロナ新変異株「XE」が流行している。政府の新型コロナ対策分科会は急激な感染拡大を防ぐため、若年者の3回目ワクチン接種促進と対策について緊急メッセージを出した。さらに海外では新変異株「XD」「XF」も確認されている。

ワクチン追加接種の加速呼びかけ




4月8日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、新規感染者数の再増加に対応するため、追加のワクチン接種を急ぐよう国民に呼びかけた。
分科会では、急激な感染拡大防止と経済活動などの継続を目的とした「緊急メッセージ」をまとめた。

①若年者でも『後遺症』がみられることから、高齢者はもとより、若年者も早期のワクチン接種を行ってほしい。
②年齢層や高齢者と接する機会の多い人はワクチン接種と体調不良時の自宅待機を求める。
③店での飲食についても大人数や長時間を避けるよう求める。
④「医療逼迫が改善されるまで社会経済活動を制限すべき」と「人々は自発的に行動を控えるため、社会経済活動を制限する必要はない」との意見に分かれた。

分科会は次回以降に複数の対策の選択肢を示して、政府に判断を委ねる考えを示した。

4回目接種に向けた議論が始まる

若年層を中心に3回目の接種率が伸び悩む中、政府は4回目の接種を夏前の開始も視野に自治体に準備を促すという。だが、4回目を一律で実施する必要性を示す明確なデータや知見は乏しい。
すでに政府は3月に米ファイザー社、米モデルナ社から今年下半期に計1億4500万回の供給を受ける契約を結んだと発表。厚生労働省は今後2カ月程度をめどに、3回目を受けたすべての人が無料で接種できる体制を整えている。



厚労省の資料(今年1月にイスラエルで実施された研究)によると、米ファイザー社製の3回目接種から4カ月以上たった60歳以上に同じワクチン接種を行った研究では、感染予防効果が1・9倍、重症化予防効果が4倍になったという。しかし今月公表された別のイスラエルの研究では、感染予防効果が弱まるのが速く、4回目から2カ月後には3回までの場合とほぼ差がなくなったと報告されている。

都内は「BA.2」に約7割が置き換わり

都内では、オミクロン株の一種で、感染力が強いとされる「BA.2」への置き換わりが急速に進み、最新のデータでは、およそ7割が「BA.2」の疑いがあるといわれている。

新変異株も続々と出現

新型コロナウイルスは世界中で広がる中で変化を繰り返していて、1人の人が複数のタイプに感染することで遺伝子の組み換えが起こり、複数のウイルスの特徴を持った新たな変異ウイルスが誕生する。これまでも様々な亜種が誕生し、オミクロン株もデルタ株との組みかえ体である「デルタクロン株」が誕生している。



WHO=世界保健機関によると、「XE」ウイルスは、オミクロン株のうち、「第6波」で広がった「BA.1」と、より感染力が高い「BA.2」が組み合わさったタイプで、ウイルスの表面にある人の細胞に感染する際の足がかりとなるスパイクたんぱく質を含むほとんどの部分が「BA.2」と同じで、ほかの部分が「BA.1」となっているようだ。「XE」は日本ではまだ見つかっていないという。
「XD」は、「BA.1」とデルタ株が融合したタイプで、感染は限定的に広がっている。
「XF」は、「BA.1」とデルタ株が融合したタイプで、広がっていない。現在は「監視下の変異株」に位置づけされている。

若年者の新規感染者が急増している

これまでは高齢者や既往症のある人が免疫力が低いため新型コロナウイルスに感染しやすいといわれてきたが、現在では若年者や20代・30代の新規感染者が全体の6割に達し、月日を追うごとに感染割合が増加している。

特に2022年4月時点でのデータにおいて、「10歳未満」と「10代」を合わせると全体の36.6%を占めている。こうした背景に、

①新型コロナ変異株まん延で感染力が上昇した。
②アレルギー反応や免疫異常のためコロナワクチン接種ができない人が一定数おり、感染に対する免疫がない。
③教育現場や児童関連施設が第6波のクラスターの中心にシフトしてきている

最近は学校などの教育施設や児童福祉施設でのクラスター発生が目立っている。

年齢によって症状の出方が一部異なる

日本小児科学会の資料によると、

①4歳以下
・発熱(81.3%)
・鼻水(41.0%)
・乾いた咳(35.6%)
・湿った咳(25.6%)
②5歳から12歳
・発熱(78.6%)
・のどの痛み(33.1%)
・乾いた咳(30.6%)
・頭痛(25.5%)

となっているが特徴として「子供は大人よりも発熱する割合が高い」ので、発熱していたら放置せずに、早めに小児科で検査を受けることを薦める。



若年者は重症化しないといわれているが、オミクロン株は重症化する割合がデルタ株より高くなっている。
小児科学会の資料でも、デルタ株と比較してオミクロン株は入院率は低い(28.6% vs. 53.4%)が、ICU入院率(0.4% vs. 0.6%)や酸素使用率はデルタ株と同等という結果が出ている。
さらに後遺症に関しても、18歳までの25.2%が新型コロナウイルス感染症の後遺症が表れており、その症状は数か月から年単位で発症している。
主な症状は、

①気分の変容:怒りや悲しみなどの感情が変化する
②疲労感・睡眠障害
③頭痛
④食欲不振
⑤認知機能の低下:集中力の低下など
⑥呼吸器症状
⑦多汗症 ほか

が見られる。
これらの症状が複合して出る場合もあり、重症の場合はベッドから起き上がれないこともあるという。

こどものワクチン接種も重症化防止効果が7割以上ある

こどものワクチン接種が進まない理由の一つに、副反応に対する保護者の「拒絶感」と「努力義務」があげられる。
しかしオミクロン株に対するワクチンの有効性は、アメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)でも確認されている。


① 5歳~11歳(2回接種後14~67日間)
・発症予防効果51%
・重症化予防効果74%
②12歳~15歳(2回接種後14~149日間)
・発症予防効果45%
・重症化予防効果92%

「BA.2」がまん延しているのは東京だけでなく全国で進行していることは想像される。今後は海外との渡航制限を1万人/日にする中で、海外からの新変異株「XE」が流入するのは避けられないだろう。それを考えると、若年者の早期接種とこれまで感染対策をさらに丁寧に進めることが重要と考える。

参考
尾身氏「高齢者も若年者も」 ワクチン追加接種の加速呼びかけ
https://mainichi.jp/articles/20220408/k00/00m/040/336000c
どうなる4回目接種 準備急ぐ政府、「第7波」前に議論まとまらず
https://mainichi.jp/articles/20220408/k00/00m/040/302000c
オミクロン株 XEとは イギリスなどで報告 今わかっていること
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220408a.html
急拡大防止“追加接種やマスク着用を”分科会が緊急メッセージ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220408/k10013573831000.html
【オミクロン株】子供の新型コロナ感染症の特徴について【症状・後遺症・ワクチン】
https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/covid19-child/

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