太陽光発電の弱点は太陽電池アレイを常に太陽方向に向けておかないと最大限の発電は出来ない。しかし太陽は時間や季節と共に場所が移動する。そのため地面に固定された太陽電池アレイでは発電効率が落ちるのは当たり前と考えられてきた。
米スタンフォード大学はこの問題を解決するために、あらゆる角度から入ってくる光を効率的に集め、固定位置に集中して出力できるレンズデバイスの研究を行い、2022年6月27日付でその研究成果を論文に発表した。
太陽電池アレイは、太陽光が直角に照射されたとき最も効率的に発電するが、太陽が移動し角度がつくと発電効率が低下することが課題となっていた。
できるだけ多くの光エネルギーを取り込むためには、多くの太陽電池アレイを常に太陽方向に向ける必要があるが、固定式に比べて建設やメンテナンスに費用がかかり、採算が合いにくくなる問題がある。
そこで研究チームは、太陽の向きが変わっても、あらゆる角度から入射する光を常に同じ位置に集光するレンズを作ることを考え、屈折率をなだらかに増加させて、光を焦点に向かって屈折させるレンズの作製を目指した。
Stanford engineers’ optical concentrator could help solar arrays capture more light even on a cloudy day without tracking the Sun
多くの材料を検討して新しい製造技術を開発し、複数のプロトタイプをテストした結果、ポリマーとガラスを使って作製したのが受動的集光装置「Axially Graded Index LEns(AGILE)」で、屈折率の異なるガラスやポリマーを層状に重ね、重なった層が光の向きを段階的に変化させることで、集光する装置のプロトタイプを完成させたという。
このプロトタイプは、表面に当たった光の90%以上を捕捉し、出力箇所に入射光より3倍明るいスポットを作ることができた。3倍明るいため発電効率が上がり、発熱量も多くなるので太陽電池アレイに冷却するシステムが必要となる。。
また直射日光だけでなく、地球の大気や天候、季節によって散乱した光も取り込める可能性があるので、幅広い時間帯での発電も期待できる。
このシステムは固定式であり、光源追跡に要するエネルギーも可動部品も必要ない。そのため、エネルギー生産に必要な太陽電池の面積を減らせるなどのメリットから、コストも削減できる。
このような研究の実用化が待ち遠しいものである。
参考
太陽を追尾せずに光を効率的に集められる太陽電池向け集光デバイス――入射光を集中させて3倍の明るさに
https://engineer.fabcross.jp/archeive/221007_agile.html
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