読み終えたら心がほっこりする、暖かさとユーモアに満ちた小説「夜明けのすべて」

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「夜明けのすべて」 瀬尾まいこ著/水鈴社 1,650円+税

この本は、人には分かりづらい病気があり、それがどんなにその人を苦しめているか、また周りの理解と支え合いが生きる力になるかが分かる傑作小説です。

 

<目次>
1 作者について
2 作品について
1 作者について

この作品を書いた瀬尾まいこさんは大阪府大阪市に生まれました。中学校国語講師・教師を勤務する傍ら執筆活動を行なっていたそうです。2001年(平成13年)『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞後『幸福な食卓』ほか、数々の作品を生み出し多くの賞を受賞し、最近では2019年(平成31年)に『そして、バトンは渡された』で第16回本屋大賞受賞しています。
瀬尾まいこさんの新刊「夜明けのすべて」は、パニック障害で歯科医院や美容院にいくことができなくなった自身の経験をモチーフにしながら、瀬尾さんらしい温かさとユーモアに満ちた、全ての読者の暗闇に光が差し込むような物語となっています。


2 作品について

月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない藤沢美紗は小さなことでも周りに当たってしまう。転職してきたばかりのやる気が見えない山添君についつい当たってしまう。その山添君もパニック障害を患い生きがいも気力も失っていました。PMSもパニック障害も外見からは全く分からない病気。他人には計り知れない苦しみや葛藤を常に持ち続けないといけない二人の人生!互いに友情も恋も感じていない職場の同僚でしかなかった二人ではあるが、おせっかい者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。山添君の言葉に「自分のことは好きになれなくても、人のことは好きになることはできる」これは瀬尾まいこさんも好きなセリフだそうです。
今まで当たり前にできていたことがある日突然できなくなる。その焦燥感や無力感、そして絶望、そんなあれこれと、どうやって向き合っていくか。あるいは、そういう人が身近にいたときにどう接していくか。
それぞれに病気のせいで自分は人生からいろんなものを失っていると感じている二人。「完治」とか「克服」というのではなく、だましだまし長く病気と就きあっていく術を見つけていく過程がすごく描かれています。



山添くんへの藤沢さんのおせっかい、藤沢さんへの山添くんの指摘、そして社長や会社のみんなの態度。とても大切なことを気取らずサラッと描いていており、押しつけがましくなくそれでいて、温かで優しい気持ちにさせてくれる。藤沢さんと山添くんのほのぼのとしたやりとりをニヤニヤしながら読み終わるような、優しさの詰まった作品です。

この作品を読んで『あぁ、明日も頑張ってみようかなぁ…』と思ってもらえたら嬉しいです。


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