これまで「地球の水や有機物がどこから来たのか」について様々な仮説があったが、探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの資料から、リュウグウが海王星より外側の宇宙で誕生し、「含水ケイ酸塩」という鉱物の粗い粒状の構造が、有機物を高温や極端な環境変化から守るゆりかごの役割を果たしたという大発見があった。
【JAXA】小惑星リュウグウ
探査機「はやぶさ2」が目指した小惑星の多くは、火星と木星の間の「小惑星帯」とよばれる部分に存在している。その中でも「はやぶさ2」が持ち帰った資料は、表面の岩石の中に有機物などを多く含むと考えられている「C型小惑星」であるリュウグウ。
持ち帰った資料を宇宙航空研究開発機構(JAXA)や海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの研究チームが、大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)などを使い砂粒の試料を分析した。
構成する元素の解析結果から次のことが分かった。
②「含水ケイ酸塩」という鉱物の粗い粒が集まった構造が点在し、そこに多くの有機物が含まれている。
③有機物には、温度が30度以上になると分解するものも含まれていたことから、この粗い粒状の構造が、有機物を高温や極端な環境変化から守るゆりかごの役割を果たした。
この結果を8月15日、英科学誌ネイチャー・アストロノミーに論文が掲載された。
A pristine record of outer Solar System materials from asteroid Ryugu’s returned sample
大型放射光施設スプリング8は、太陽の100億倍もの明るさに達する「放射光」という光を使って、物質の原子・分子レベルでの形や機能を調べる事ができる研究施設のこと。
【文部科学省】量子ビーム (1)SPring-8ってなあに?
この施設で試料を1マイクロメートル(1000分の1ミリ)以下のレベルで詳しく調べた。その結果、炭素同士が鎖状に連なる構造の炭化水素(脂肪族炭化水素)が多く含まれる有機物を多数検出。チームによると、これまで他の隕石(いんせき)から検出されたことはないという。
持ち帰った砂粒の組成を詳しく分析し他の隕石と照合したところ、水素と窒素の「同位体」の組成が、海王星より外側の宇宙のちりとよく似ていることがわかった。
リュウグウの同位体は地球の水素と窒素より重いものが多い傾向が見られるという。
海王星は、太陽系の惑星の中では最も外側にある。リュウグウのもとになった天体は当初は太陽系外縁にあり、移動したり分裂したりして現在の位置に落ち着いたという直接的な証拠になるという。
さらに、X線を使った分析や電子顕微鏡による観察では、水を含む粘土鉱物の内部にひも状の分子構造の有機物が大量に見つかったが、有機物の種類は不明だという。
アミノ酸や糖などが含まれている可能性もあるため、今後も分析を続けるという。これらの構造から、有機物や水が粘土鉱物に守られて、太陽系外縁から地球に運ばれたと推測されるという。
生命の材料は天体の移動や分裂によって、太陽系外縁から地球に運ばれた可能性が示された。
2022年6月までに岡山大学や北海道大学が研究用に配布された資料を分析し、アミノ酸を23種類革新したり、大量の水が含まれたりしていることを発見している。
現在、NASAや世界中の大学で、リュウグウ周辺で採取されたガスの分析やアミノ酸を含む有機物の詳細な分析が行われているため、今後も新発見が発表される可能性が高い。
参考
リュウグウの故郷は海王星の外?…生命の源、「ゆりかご」で地球のそばに
https://www.yomiuri.co.jp/science/20220815-OYT1T50219/
リュウグウの故郷は海王星の外?…生命の源、「ゆりかご」で地球のそばに
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20220815-567-OYT1T50219
リュウグウ試料に有機物守る「ゆりかご」物質 はやぶさ2持ち帰る
https://mainichi.jp/articles/20220815/k00/00m/040/196000c
はやぶさ2の砂粒、有機物守る「ゆりかご」構造発見
https://www.sankei.com/article/20220816-FAFMP2IKDVJUHGLHLP4DXNJFBM/
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