「セマグルチド(Semaglutide)」と呼ばれる薬を服用すると、平均15%の体重が減ることを科学的に証明された。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2032183
この薬は2型糖尿病の治療薬として開発されたが、肥満治療にも多大な効果を発揮することを米国の著名な医学専門誌「New England Journal of Medicine : NEJM」に発表した。この臨床実験に参加したのは、米国をはじめ16ヵ国・1961名の被験者。いずれも日頃からオーバーウェイトに悩んでいる人たちだ。
被験者全体の約三分の一はプラシーボ(偽薬)、残りの三分の二は本物の薬(セマグルチド)を服用する形で、68週間(1年余り)に渡って実験を継続した(セマグルチドは週に一度、服用する)。両グループとも薬の服用と並んで、定期的な運動や食事の工夫など体重を減らすための取り組みを続けた。この結果、セマグルチドを服用したグループでは、一人当たり平均14.9%、15.3キロ・グラムの体重を減らすことができた。また、グループ全体の三分の一では平均20%の体重減少を記録した。しかしプラシーボを服用したグループでは同2.4%の減少に止まった。
副作用として、ごく一部の被験者に吐き気や胃腸障害などが見られたが、それほど深刻な症状ではなく、被験者全体の約8割が、全68週間にわたる臨床試験を最後までやり遂げたという。このことから、今回の臨床実験を行った米ノースウエスタン大学の研究者は、「効果的な肥満治療時代の幕開けを告げる薬」と評価しているが、新薬につきものの、長期で見た場合の効果・安全性は未知数との評価も。
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日本でもセマグルチドは「リベルサス錠」という製品名で2月5日から発売されているが、あくまで2型糖尿病の治療薬という位置付けであり、市販薬ではなく処方薬である。
https://www.novonordisk.co.jp/content/dam/nncorp/jp/ja/news/media/2021/02/21-03.pdf
ノースウエスタン大学による肥満治療を想定した臨床研究では、被験者は週に1回セマグルチドを服用していたが、2型糖尿病の治療に使われるリベルサス錠の場合、1日1回の服用となっている。この違いは同じ化学成分でも、薬剤1錠分の調合量、あるいは用途に応じて必要とされる分量や投薬方法等が異なるためと思われる。
この薬は本来、人間の体内で自然に分泌されて食欲を制御するホルモン「GLP-1」を、人工的に合成した化学成分を持つ。つまり、技術的に食欲を抑えることによって体重を減少させる薬剤なので、治療開始後、一旦服用を止めてしまうと再び体重増加に転じるため、生涯にわたって服用し続ける必要が生じる。またセマグルチドは高価な薬で米国では本来の用途である糖尿病治療薬として使用される場合、月額1000ドル(10万円以上)に達するという。また糖尿病治療以外の用途では保険適用外となるため、もしも肥満治療薬として服用する際には全額、患者の自己負担になると見られる。
体重を減少させる効果は高いが、糖尿病治療という本来の目的以外の使用においては、慎重な判断が要求される。
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