高齢者の認知症だけでなく若年性認知症や急速進行性認知症の患者も年々増加している AI活用で診断システムを慶応大などのチームが開発

健康

高齢化に伴い認知症を発症する人が増えている。しかし最近は40歳以下で発症する若年性認知症や急速に症状が悪化する急速進行性認知症も増加しているという。早期に診断が重要となるが、会話内容や言葉遣いをAI(人工知能)が判断し、認知症の疑いを診断するシステムを慶応義塾大学などのチームが開発した。約9割の精度で判別できることを立証。国の承認後、2023年にも実用化するという。

認知症とは

認知症とは「記憶障害のほかに、失語、失行、失認、実行機能の障害が1つ以上加わり、その結果、社会生活あるいは職業上に明らかに支障をきたし、かつての能力レべルの明らかな低下が見られる状態」と定義されている。



認知症は大きく分けて3種類ある。

①アルツハイマー型認知症
認知症の原因となる病気の半分以上を占める認知症で、脳細胞が減少し、脳が萎縮することで引き起こされる。80歳以上では20%以上がアルツハイマー型認知症と言われている。
物忘れなどから始まり、進行はゆっくりと徐々に悪化する場合が多い。
②血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳の血管がつまったり破れたりすることで脳の一部に障害が起こり、部位によっては記憶障害や意欲低下、無関心など様々な精神症状が起きる。
③レビー小体型認知症
大脳皮質の神経細胞内に「レビー小体」という特殊な変化が現れる病気。見えないものが見える「幻視」が現れ、歩きにくい、身体が硬い、などの症状も伴う。パーキンソン病との関連が指摘されている。
認知症のセルフチェック

東京都福祉保健局が「自分でできる認知症のチェックリスト」を公開している。質問は10個。簡単にできるのでチェックしてみてはどうだろうか。



自分でできる認知症の気づきチェックリスト

自分でできる認知症の気づきチェックリスト | 東京都の認知症ポータルサイト とうきょう認知症ナビ
若年性認知症とは

あなたが40歳以下なのに、以前と比べて次のようなことが起こったことはないだろうか。

①とっさに言葉が出にくくなった
②忘れっぽくミスが増えた
③今までできていたことができなくなったことがある
④今まで夢中になっていたことにもやる気がでなくなった
⑤友人から「性格変わった?」と言われたことがある

5つの項目全部に心当たりがある場合は注意が必要だ。というのも最近増加しているのが、18歳から39歳までに発症する若年期認知症。

この年代は仕事中心の生活をしており、ストレスや更年期障害など様々な体の不調も抱えているため、自分の異常に気付きにくい。また本人もご家族も最初に異常を感じてもなかなか受診にふみきれないことも多いという。
2017年度~2019年度に実施した日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業によって実施した若年性認知症の調査で若年性認知症者の総数は3.57万人と推計されている。
早期に診断を受けて適切な治療を行えば、症状の進行を抑えることができる。最悪の場合、仕事をすることが困難になったらその職を失うこともある。気を付けるに越したことはない。
若年性認知症ハンドブック

https://www.mhlw.go.jp/content/000521132.pdf

急速進行性認知症

認知症のほとんどは、数年から10年程度かけてゆっくり進行するが、数カ月から1~2年以内に急速に進行する「急速進行性認知症(RPD)」がある。

脳内に「異常プリオンタンパク」が蓄積し、認知機能障害を起こすことで発症する。急速に進行した場合、週単位で進行し、1週間前には料理ができていたのに、包丁の握り方や火の使い方が分からなくなったり、電車の改札の通り方が分からなくなったりしたケースもある。数カ月以内には寝たきりになることが多く、現在の医療では効果的な治療法が確立されていないという。

AI(人工知能)が会話内容や言葉遣いから判定するシステムを開発

認知症の早期発見に役立つシステムを慶應義塾大学医学部ヒルズ未来予防医療ウェルネス共同研究講座の岸本泰士郎特任教授らと株式会社 FRONTEO は、自然言語処理(NLP)を用いた「会話型 認知症診断支援 AI プログラム」を開発した。



【慶応義塾大学】会話型 認知症診断支援 AI プログラムの開発-今後の新しい認知症スクリーニング技術としての活用に期待-

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2022/8/8/220808-1.pdf

この研究成果は、2022 年 8 月 3 日(英国時間)に Scientific Reports 誌に掲載された。

研究方法

岸本泰士郎・慶大特任教授(精神科)や情報解析企業フロンテオ(東京都)のチームが、2016~2019年まで全国の医療機関10施設で、認知症の人を含む高齢者と医師らが交わした会話を録音した。

その内、135人計432回の会話を文字起こしを行い、形態素と品詞への分解、ベクトル変換、機械学習を行い分析した。さらに専門医による認知症の診断結果と合わせてAIに学習させた。

研究結果

AIによる診断システムも使って判定した結果次のような結果が得られた。

①認知症の人の88%、認知症でない人の92%を正しく見分けられた
②3~5分程度の会話でこの精度を実現できた
③認知症に人は「同じ話を繰り返す」「言葉と言葉をつなぐ助詞が抜ける」「時間や場所が曖昧になる」などの特徴から検知できている




通常、認知症診断は本人への問診と計算力や記憶力検査などを併用して行うため、医師は専門的な知識と正しく診断できるよう訓練が必要となる。AIを活用することで、地方の開業医でも簡単に導入でき、正確に診断できるようになると期待されている。
参考
若年性認知症
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/jakunen.html
若年性認知症とは?症状や原因・他の認知症との違い・予防法を解説
https://medical.francebed.co.jp/special/column/24_dementia09.php
数カ月で進む急速進行性認知症(RPD)はどうして起こるのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/e43190f66ce6edb3efac05746b4a79a7f2028731
日本の高齢者人口3,640万人!〜超高齢社会と認知症の推移(2021年版)〜
https://www.carefit.org/liber_carefit/dementia/dementia01.php
会話通じてAIが認知症診断、精度は9割…慶応大などのチームが開発
https://news.yahoo.co.jp/articles/d752a5004021ea5d9237f114fd4b6571a144fa5b

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