白血病は不治の病とされ恐れられていましたが、競泳女子の池江璃花子選手を例にとるまでもなく、白血病は今や不治の病などではなくなりつつあります。化学療法や支持療法、骨髄移植などの進歩は劇的に進み、多くの患者さんが病いを克服して社会復帰されています。
白血病は血液のがんです。血液細胞には赤血球、血小板、白血球があります。すべての細胞の源である造血幹細胞から、それぞれの細胞になるまでには何段階もの細胞分化を経ますが、そのいずれかの段階で白血球またはリンパ球になる細胞が異常に増えてしまう病気です。がん化した細胞(白血病細胞)は、骨髄内で増殖し、骨髄を占拠してしまうため、正常な血液細胞が減少します。
白血病は、がん化した細胞のタイプから「骨髄性」と「リンパ性」に分けられ、さらに病気の進行パターンや症状から「急性」と「慢性」に分けられます。
※急性骨髄性白血病56%、急性リンパ性白血病19%、慢性骨髄性白血病22%、慢性リンパ性白血病3%(日本人ではまれとされる)
他の疾患のように、急性白血病の経過が長引いても、慢性白血病になる訳ではありません。白血病の急性および慢性は、それぞれ異なった疾患なのです。急性白血病は、急激に発症し、顕著な貧血や白血球増加、血小板減少(出血傾向)を示すことから迅速な治療が必要となります。一方、慢性白血病の白血球数は著明に増加するのですが、症状のないことも多く、健康診断で偶然に見つかることも多いようです。しかし、最終的には急激に悪化(急性転化)しますので、この急性転化を遅らせるような長期にわたる適切な治療が必要になってきます。
(イメージ図)
私たちの体の中には、ばい菌やがん細胞と戦うT細胞が存在します。CAR-T細胞療法は、患者さんの体の中からT細胞を取り出して、白血病細胞を攻撃するように遺伝子改変(いでんしかいへん)した細胞(CAR-T細胞)を利用する治療法です。作成したCAR-T細胞を患者さんの体に中に戻すことで、CAR-T細胞が特定の白血病細胞を狙い撃ちして、白血病細胞の増殖を抑えます。CAR-T細胞療法が適応となる患者さんは、B細胞と呼ばれる免疫細胞由来の急性リンパ性白血病(B-ALL)患者さんのうち、既存の治療法では十分な効果が期待できない治療抵抗性の患者さんや、再発した患者さんです。
2021年1月25日、名古屋大学が急性リンパ性白血病の患者から免疫細胞を取り出し、遺伝子を操作して攻撃力を高めて体に戻す新たな治療法「CAR(カー)―T(ティー)細胞療法」を10~40代の男女3人に対して臨床研究を実施したと発表。投与から1年以上の患者も経過は良好であり、今後は1~15歳の患者3人にも実施して安全性を確認していくとのこと。さらにタイ王国のチュラロンコン大学において、名古屋大学医学部附属病院が支援している同培養法を用いた臨床試験が実施され、悪性リンパ腫の1人目の患者さまへの治療が安全性に問題なく進められていることも合わせて報告されました。
この技術を使った治療法について、富士フイルム子会社のバイオ企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」(愛知県蒲郡市)が治験を近く始めたい考えているそうです。
今後も患者さまに臨床研究が進むことを期待しています。
参考:
CAR-T細胞の安全性に関する臨床第I相試験の第1コホート終了/チュラロンコン大学での治療抵抗性悪性リンパ腫に対するCAR-T細胞を用いた投与の開始について【名古屋大学医学部付属病院HP】
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/hospital/news/news/2021/01/25110644.html
自家CAR-T細胞療法の臨床研究に関する名古屋大学からのプレス発表のお知らせ【J-TEC】
http://www.jpte.co.jp/news/20210125.html
急性リンパ性白血病(ALL)を学ぶ
https://ganclass.jp/kind/all/face/
池江選手告白の「白血病」治療法が劇的進化!もはや“不治の病”ではない
https://www.fnn.jp/articles/-/8509
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