習慣的にコーヒーを摂取している人ほど眼圧が低いことを発見！！

京都大学大学院医学研究科眼科学三宅正裕特定助教、辻川明孝同教授、中野絵梨同博士課程学生を中心とした研究グループは、長浜スタディに参加した9,850人の日本人データを解析することにより、コーヒーをよく飲んでいる人ほど眼圧が低いことを発見しました。本研究成果は、2020年11月6日に米国の国際学術誌 「Ophthalmology Glaucoma」にオンライン掲載されました。

近年の研究では、習慣的なコーヒー摂取が健康に良い影響を与える場合が多いことが分かってきました。コーヒーをよく飲んでいる人の方が、糖尿病や心血管疾患、肝硬変、いくつかの癌や認知症になりにくく、死亡率も低いという結果が出たのです。New England Journal of Medicineに掲載された最近の記事では、1日3から5杯のコーヒーを習慣的に飲むのがよいのではと記載されています。

コーヒーが体に良いという研究があるが、目の病気については余り研究が進んでいないため、緑内障の発祥・進行の危険因子である「眼圧」とコーヒーの関係を調べたそうです。
緑内障は視野が欠けていく病気で、日本人では40歳以上の20人に1人が緑内障と言われています。進行すると視力も低下するため、現在は日本人の視覚障害の原因第1位となっています。コーヒー摂取と緑内障の関係を調べた報告はいくつかありますが、眼圧との関係を大規模なコホートで調べた研究は今までほとんどありませんでした。

京都大学附属ゲノム医学センターが滋賀県長浜市と共同で実施する 「ながはま0次予防コホート事業」（長浜スタディ）の9850人のデータを用いて、習慣的なコーヒー摂取量と眼圧との関係を調べました。コーヒー摂取量については問診で聴取し、「1日1杯未満」「1日1杯」「1日2杯」「1日3杯以上」の4群に分類しました。コーヒー摂取頻度と眼圧の関連解析を行ったところ、緑内障と指摘されたことがない方では、眼圧に関わる様々な因子 （年齢、性別、角膜厚など）で補正しても、習慣的なコーヒー摂取頻度が高いほど眼圧が低いことが確認されました。具体的には、1日3杯以上飲む人は1日1杯未満の人に比べ眼圧が約0.4mmHg低いという結果でした。今回の研究の参加者全体の平均眼圧が14.7mmHgだったので、その約3％に相当します。なお、緑内障と指摘されたことがある方とない方とで比べた場合は、コーヒー摂取頻度に明らかな差は見られませんでした。習慣的なコーヒー摂取と眼圧との関係を大規模な日本人コホートで調べた研究は今までなく、世界的にもほとんどありません。今後、臨床的および実験的な裏付けが強く期待されます。

この研究から、コーヒーは眼に悪影響を及ぼすものではなく、意識して控える必要はなさそうです。今回の研究結果は、コーヒーをよく飲む人ほど眼圧が低いことが示されましたが、コーヒーを飲むことで眼圧が下がるのかを検証したものではありません。また特殊な病型の緑内障の場合は、コーヒー摂取を推奨しないとするものもあるので注意が必要です。また、妊婦さんではコーヒーで低出生児のリスクが高まるという報告もあります。コーヒーはあくまでも嗜好品であり、適量にとどめることが良いでしょう。

＜論文タイトルと著者＞
タイトル：Relationship between intraocular pressure and coffee consumption in a Japanese population without glaucoma: The Nagahama sudy(健常日本人コホートにおけるコーヒー摂取量と眼圧の関係)
著者：Eri Nakano, Masahiro Miyake, Yoshikatsu Hosoda, Yuki Mori, Kenji Suda, Takanori Kameda, Hanako Ikeda-Ohashi, Yasuharu Tabara, Kenji Yamashiro, Hiroshi Tamura, Tadamichi Akagi, Fumihiko Matsuda, Akitaka Tsujikawa; and the Nagahama Study Group.
掲載誌：Ophthalmology GlaucomaDOI：https://doi.org/10.1016/j.ogla.2020.09.019

出展：
習慣的にコーヒーを摂取している人ほど眼圧が低いことを発見
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaresearchresearch_results2020documents201106_101.pdf