NASAが小惑星の軌道変更を試みる 映画「アルマゲドン」の超mini版

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地球に降り注ぐ大小の隕石の数は年間に数千個あり、そのうち1908年にロシアのツングースカに落下した隕石のような大型隕石は5年に1度程度あるという。こうした大型隕石の軌道を変更させる世界初の実験を、NASAが無人探査機DART(ダート)を使って行う。

実験の目的

米航空宇宙局(NASA)は26日(日本時間27日)、無人探査機DART(ダート)を小惑星に激突させて軌道を変更する世界初の実験に挑む。



その目的は、太陽系の中を周期的に回っている小惑星や大型隕石から地球を守るためだ。今回の実験で、直径約160メートルの小惑星ディモルフォスが、重さは約560キロ程度の探査機でどれほど程度軌道が変わり、地球を守る手段となりうるのかなどを確かめるという。

プラネタリー・ディフェンス(地球防衛)

NASAは他の天体が地球の周囲を、どんな軌道で、どれぐらいの周期で集会しているかを観測している。この取組を「プラネタリー・ディフェンス(地球防衛)」と呼び、警告を発してきた。
しかし全ての小惑星を追跡するのは難しいという。最近では2019年7月25日、直径427フィート(約130メートル)の小惑星「2019 OK」が、地球から約7万2000キロメートルほどの距離を通過したが、その存在を天文学者も数日前まで気付かずにいたという。

NASAによると、地球に近付く約2200個の小惑星のうち、大きさが140メートルを超え、衝突時に深刻な被害が起きかねない小惑星を「潜在的に危険な小惑星(PHA)」に分類されている。2013年2月には、推定直径約17メートルの小惑星がロシア中部チェリャビンスク州に落下し、衝撃波で約1500人が負傷したという。



大きさが140メートルの小惑星や隕石が落下するとその被害は大型核兵器を使った場合と同等の被害が出る恐れがあるという。
小惑星「2019 OK」の件は、地球の感覚では遠く離れた場所の出来事のように思えるかもしれない。しかし天文学者にとって約7万2000キロは”ニアミス”であり、この距離は地球と月の距離の5分の1以下だという。今回の小惑星の接近は、少なくともここ2、3年で最も映画『アルマゲドン』的なシナリオに近いものだったようだ。

大小様々な隕石や小惑星が落下している

次のリンクは2000年から2013年の間に地球に衝突した26個の隕石の落下位置を確認することができる。

B612 Impact Video 4-20-14 H264
Between 2000 and 2013, a network of sensors that monitors Earth around the clock listening for the infrasound signature of nuclear detonations detected 26 explo...


この動画は「B612財団」が作成したもので同財団は、文明を終わらせてしまうような隕石を発見できる望遠鏡を打ち上げ、隕石の軌道を逸らす事前対策を取れるようにしたいと考えているという。
この動画で示された26回の衝突のエネルギーは、どれも1キロトン(1kt=1,000t)から600キロトンの間であることを色分けしている。
(動画では、白色が1~10キロトン、黄色が10~20キロトン、赤色が20キロトン以上)
広島に投下された原子爆弾の爆発エネルギーは16キロトンで動画の黄色が同等の破壊力であることを示している。



「広島規模」の小惑星落下は、大気圏内で平均年1回起きているが、そのほとんどが人がほとんど住んでいない場所に落下しているため。
米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士エドワード・ルー(B612財団の設立者のひとり)は動画のなかで、都市サイズの隕石による悲劇的な大参事を免れているのは「偶然の幸運」に過ぎないと語っている。
先に挙げた2013年2月、ロシアのチェリャビンスク州の上空で爆発した隕石の破壊力は推定500キロトンと考えられているという。

今回の実験

無人探査機DART(ダート)は、全長1.9m、長さ8.5m、太陽光パネル2枚を持ち、重量は約560kg程度。2021年11月に今回の実験のため、米カリフォルニア州から打ち上げられた。このDART(ダート)を衝突させる小惑星ディモルフォスの直径は約160メートル程度で、ディモルフォスは別の小惑星ディディモスの周囲を約12時間の周期で回っている。



DARTを約900万倍の重さのディモルフォスに6.6km/秒で衝突させ、周回軌道を少しだけ内側へ変えられるかを確認する予定だ。現在の周回周期は11時間55分だが、実験が成功すると周回周期が10分程度短くなると予想している。

プロジェクトのメンバーで、米ジョンズ・ホプキンス大応用物理学研究所のナンシー・シャボット博士は、衝突の規模について「ゴルフのカートがピラミッドにぶつかるようなもの」と表現しているが、重力がない宇宙空間では少しのズレが振動となり全体に影響する。
どのような結果となるか見守りたい。
参考
天文学者も数日前まで気付かず…… 直径約130メートルの小惑星が地球とニアミスしていた
https://www.businessinsider.jp/post-195493
地球には年平均2個の大型隕石が降っている:26個の落下場所が分かる動画
https://wired.jp/2014/04/23/giant-asteroid-impacts/
探査機が小惑星に体当たり、軌道ずらして地球守れ…NASAが初の実験へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/153280309083d8b961b9ac26dbc943a4f728678e
映画「アルマゲドン」さながら 小惑星に体当たり、地球防衛の実験へ
https://www.asahi.com/articles/ASQ9R2HBQQ9QUHBI00R.html

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