地球温暖化で、台風の大型化や海水温の上昇による魚の生息分布の変化、これまでには見られなかったウイルスや病原菌の凶暴化など、様々なものに大きな変化が見られる。その原因の一つが工業化や人間の生活による二酸化炭素などの温室効果ガスの放出問題。これまで太陽光発電や風力発電などで二酸化炭素の排出を抑える取組が行われてきた。発電だけでなく、物資の運搬に使われる車が排出するガスの問題も大きい。そのためトヨタなどが「水素自動車」の開発を進め、国も水素を活用した「カーボンニュートラル」社会を目指している。
②「ブルー」化石燃料を原料として水素を製造時の二酸化炭素等を回収し、地下の地層等に貯留を行い、大気中に放出しない
③「グリーン」水と再生可能エネルギーや自然現象からの副産物を原料とし、水の電気分解等を行って水素を製造する
【水蒸気改質法】炭化水素や石炭から水蒸気を用いて水素を製造する方法で、高温(500 – 1100 ℃)において金属触媒と水蒸気はメタンと反応し、一酸化炭素と水素が得られ、その後水素だけを分離する方法
【部分酸化法】原料である石炭などの固体燃料や原油残渣などを加熱し、空気もしくは酸素と混合させて高温条件下(約1300 ℃)で部分的に燃焼させ、水素を主成分とする粗ガスを製造し、その後水素だけを分離する
再生可能エネルギーを使う方法は水の電気分解や光触媒を使用した反応で水素を製造し、自然現象や反応の副産物を使う方法では、微生物が分解する過程で出るバイオガス、木質チップの炭化の過程で発生する炭化物をガス化する改質反応等から水素ガスを分離する
ゼネコン大手の大林組は、大分県玖珠郡九重町において、地熱発電およびその発電電力を利用してグリーン水素を製造する実証プラントを建設し、出荷を開始した。地熱発電電力を活用したグリーン水素を、複数の需要先へ供給するまでの一連のプロセスを実証する日本初の試み。地下約700メートルから取り出した約150度の蒸気でタービンを回して発電、その電力で水を電気分解して水素を製造する。地熱発電設備の出力は125キロワットあるが、地域へ電力を供給はせず、水素の製造だけに用いるという。
日本国内においてグリーン水素の製造と供給のため、大分県の地熱を活用して製造したグリーン水素を九州各地に搬送。またトヨタと連携し当該水素を水素エンジン車両の燃料として利用する。ここで燃料電池車(FCV)30~40台分に相当する毎時10立方メートルの水素を製造できる。
業界の枠を超えた供給先各社の協力のもと、グリーン水素の地産地消をめざすという。
伊藤忠商事株式会社は、Dalrymple Bay Infrastructure Limitedほか4社との間で、豪州におけるグリーン水素製造及び貯蔵、豪州からのグリーン水素の輸出を含めたサプライチェーン構築に関する事業化調査を共同実施することに合意した。伊藤忠商事は、中期経営計画の基本方針のひとつに『「SDGs」への貢献・取組強化』を掲げており、国内外におけるネットワークと豪州におけるビジネスで培った知見を活かし、脱炭素社会を見据えた将来的な日本への供給を含めたグリーン水素サプライチェーンの構築を目指すという。
清水建設は、大分県玖珠郡九重町に地熱とバイオマス資源を活用した世界初の低コスト・グリーン水素製造技術を適用した実証プラントの建設に着手。この製造技術は、(有)市川事務所、エネサイクル(株)、大日機械工業(株)、(株)ハイドロネクストと共同開発したもので、低コスト・グリーン水素製造技術が特徴。
国内に豊富に存在する地熱とバイオマス資源を活用することで、製造時のCO2排出量を市販水素の1/10以下にするとともに、製造コストを太陽光などの再生可能エネルギーを活用した水電解水素の1/3以下に相当する24~38円/m3(Nm3-H2)に低減できることが最大のメリットである。
プラントは来年3月末に完成。その後、試験運転を経て、7月から性能検証を行う予定だ。事業化の際には10基程度のプラントを併設し、生産能力を高めるという。
清水建設と産業技術総合研究所は、郡山市総合地方卸売市場(福島県郡山市)内で2年間建物附帯型水素エネルギー蓄電設備の連続実証運用を進めてきた。この実証実験で電力由来の二酸化炭素排出量を53%削減できたことを発表した。水素タンクで貯蔵するのではなく、水素吸蔵合金を利用することで、安全でコンパクトに貯蔵でき、一般の施設利用も容易になったという。
清水建設と産総研が共同開発した蓄電設備「Hydro Q―BiC」は、太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵し、必要時に抽出して電力に変換するシステム。常温・常圧で水素が吸蔵・放出できる独自の吸蔵合金を利用し水素を貯蔵。同合金は着火しても燃焼しないため安全性が高い。太陽光発電だけの導入に比べても約21%削減できることも分かった。
②水素は鋼材中に吸収された場合、鋼材の強度(延性又は靭性)が低下する現象「水素脆化」を起こすため、貯蔵や輸送には特別なタンクが必要となり、コストがかかる
③水素は天然ガスなどと違い発熱量が小さく、火の回りが早い反面、高温で燃える特性があるため、扱いに注意が必要となる
④水素は酸素と結びつく力が強いため、着火までの燃焼スピードが速い
水素が幅広く実用化するのは2030年代までかかるといわれている。水素と炭素の活用は日本の進める「カーボンニュートラル」政策の中核であり、今後、更なる技術革新が起こることを期待している。
参考
水素社会とは?水素エネルギーのメリットから課題までわかりやすく解説
https://www.egmkt.co.jp/column/consumer/20210930_EG_190.html
水素発電のメリット・デメリットとは?また安全性や価格は?
https://www.nishinippon.co.jp/kurashitasu/home-appliances028/
「グリーン」水素を通じて次のゼロエミッション革命を創り出すには?
https://www.ey.com/ja_jp/strategy/how-hydrogen-can-spark-the-next-zero-emissions-revolution
地熱で「グリーン水素」 大林組と清水建設、事業化を視野
https://news.yahoo.co.jp/articles/cb4ae8ab7fd551bdf5054b1fbd80312e262bc4c0
大林組が地熱発電でグリーン水素製造 国内初の実証プラント運転開始
https://www.denkishimbun.com/sp/138567
地熱発電およびグリーン水素製造の実証プラントが完成、地産地消に向けて出荷を開始
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20210718_1.html
豪州におけるグリーン水素製造およびサプライチェーン構築に関する事業化調査の協業覚書締結について
https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2021/210818_2.html
大分県内に低コスト・グリーン水素製造実証プラントの建設に着手
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2021051.html
清水建設が水素エネルギー蓄電の実証で得た成果
https://news.yahoo.co.jp/articles/64e9b80cc8c0ef2e93dfef8c7509ac054dfca4d2
wiki水蒸気改質
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E8%92%B8%E6%B0%97%E6%94%B9%E8%B3%AA
wiki部分酸化法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%A8%E5%88%86%E9%85%B8%E5%8C%96%E6%B3%95
wiki水素脆化
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E8%84%86%E5%8C%96
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