飼い犬や飼い猫だけでなく人間のそばで生活する動物は言葉の意味をある程度理解できている

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犬は人間が発する言葉を平均で89単語まで理解していることが、2021年12月28日、カナダのダルハウジー大学のキャサリン・リーブ氏らの研究で明らかになった。また2019年4月、英国の科学誌の発表で、飼い猫も「自分の名前」「一般名詞」「同居猫の名前」を聞き分けていることが実験で明らかになったという。

犬の言葉理解力は最大で215単語、最少でも15単語?

研究は165頭の犬と犬の飼い主を対象に実施した。その方法は人間の乳児の言語理解に関する手法を応用したもので、犬に英語でさまざまな単語を話し掛け、犬が具体的かつ一貫した行動で反応した単語を特定した結果、最大で215単語、最少でも15単語まで反応したという。90%以上の犬が反応した単語は、「犬の名前」「お座り」「おいで」「いい子」「待て」「だめ」「OK」などだった。



ボーダーコリーやジャーマンシェパードなどの牧羊犬は、他の犬種に比べて多くの単語に反応することも判明しており、2011年に行われた別の研究で、米国のボーダーコリーが猛特訓によって、モノの名前を1000個以上覚えられたとある。犬種や環境、訓練により脳の記憶機能をより発達させることができるという。

猫も犬と同等の能力を有している

2019年4月の英国の科学誌に発表された研究をもとに、上智大学の研究チームが行った実験で、猫も犬と同等の能力を有していることが分かっている。
実験では、飼い猫や猫カフェの猫など約70匹に、それぞれ実験の対象となる猫の名前と、同じようなアクセントや長さの単語と、同居猫などのほかの猫の名前を、続けて4回呼びかけてから、最後にその猫の名前を聞かせるというもの(すべて自動音声)。その結果、最初の4つの言葉では猫の反応がだんだん小さくなっていったのに対して、自分の名前になると反応が大きくなったそう。この実験結果から、猫は自分の名前とほかの単語の違いがわかり、自分の名前を理解していることが証明できたという。



猫は高い聴覚機能を誇り、人が発した言葉の微妙な音の違いも聞き分けられるため、単語の違いをはっきり聞き分けている可能性がある。さらに猫は記憶力が非常に優れているため、経験から言葉を覚えることができ、食べ物の種類や身の危険に関することは特によく覚えると考えられる。

動作や声のトーンからも判断

犬や猫は言葉だけで言葉の意味を判断しているわけではない。人が言葉を発したときのトーンや長さ、強弱、さらにその時の人のしぐさなど。その人から漂う雰囲気から総合的に判断し、言葉と結びつけて理解している。

一般的に犬や猫の知能は1歳半~2歳半の子ども程度の理解力があり、犬・猫の個体差による知能レベルはさまざまだ。訓練によっても強化することができると考えられる。

犬・猫の特徴
犬がキョトンとした顔で首をかしげる時
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学のチームが「認知と動作に関係性があるのではないか」と仮説を立て、犬の記憶力に関する実験をおこなった。
この実験では、40匹の犬に複数のおもちゃの名前を覚えさせるトレーニングを3か月間実施し、飼い主が犬に別の部屋に置かれたおもちゃを取ってくるように指示。犬がそれを実行できるかどうか観察した結果、2つのおもちゃの名前を覚えられた犬は40匹中7匹のみ。大部分の犬はモノの名前を覚えることが苦手であることがわかった。おもちゃの名前を覚えられなかった犬は、首をかしげることがほとんどなかったのに対して、おもちゃの名前を覚えられた7匹は、左右どちらか一定の方向に首を斜めにする傾向があることを突き止めた。この結果から、犬が首をかしげる動作とおもちゃを持ってくることには、なんらかの関連性があり、犬が脳をフル回転させて考えていると思われる。
【出典】Sommese, A., Miklosi, A., Pogany, A. et al. An exploratory analysis of head-tilting in dogs. Anim Cogn (2021). https://doi.org/10.1007/s10071-021-01571-8



猫が指示されても動かない時
人間の聴覚の可聴域(聞こえる範囲)は、20Hzから20kHzなのに対して、猫の可聴域は48Hzから85kHz。人には聞こえない音を聞き分けることができる。さらに猫の耳には20以上の筋肉がついており、左右それぞれに180度回転させることができる。つまり、右の耳で前からの音を、左の耳で後ろからの音を聞くことも可能。なので人間には聞こえない周囲の音に集中していて動きたくない場合や、人間が発する声からニュアンスを聞き取り、猫自身が「雰囲気が変」「自分は肯定されていない」「試されている」などを感じ取っているのではないか。単純に理解できたかできなかったのではなく、『理解したうえであえて行動しない』ことが考えられるという。
おわりに

飼い犬・飼い猫の進化の歴史と人間との密接な共存関係から、人間の言語的・非言語的な指示や合図に反応することを学んできている。犬や猫が大事にされ、多くの言葉を話しかけることで、より言語を理解すると考えられる。
この研究が進めば、これまで以上に動物との意思疎通が図れるかも知れない。

参考
猫が人の言葉を理解しているという確かな根拠
https://toyokeizai.net/articles/-/305086
猫は「人の言葉」をどこまで理解できるの!? 専門家に真相を聞いてみた
https://cat.benesse.ne.jp/lovecat/content/?id=97564
犬、平均89単語を理解 カナダ研究、高い能力判明
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021122800073&g=int
かわいいだけじゃない! 犬が首を傾けるのは賢いからだった
https://news.yahoo.co.jp/articles/b025d0d53eea88500f8df38863f4223e40df32f2

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