年齢が高くなるにつれて、疲れやすくなったり、眠れなくなったりするなど、体に様々な変化が出てくる。
そのような加齢に伴う加齢の変化を「厄年」や、東洋医学の教科書「黄帝内経(こうていだいけい)」の「女性は7の倍数、男性は8の倍数」など、年齢の節目で体に変化が訪れることを表してきた。
しかしスタンフォード大学の研究チームが、18歳から95歳までの4263名のヒトの血漿タンパク質を分析したところ、34歳の青年期、60歳の壮年期、78歳の老年期で急激に老化が進むことが分かった。
日本では「厄年(やくどし)」という考え方があり、ある年齢になると厄災が多く降りかかるとされ、神社などで「厄払い」を行う風習がある。またこの厄年は体が大きく変化する年と信じられている。平安時代の書物にも書かれているが、科学的根拠は不確か。
厄年一覧(日本国内の一般例)
前厄←本厄→後厄
24歳 25歳 26歳
41歳 42歳 43歳
60歳 61歳 62歳
前厄←本厄→後厄
18歳 19歳 20歳
32歳 33歳 34歳
36歳 37歳 38歳
60歳 61歳 62歳
「黄帝内経」は、現存する中国最古の医学書と呼ばれている。この書物は前漢代に編纂され、「鍼経」と「素問」の合計18巻と伝えられている。その内容は散逸して一旦は失われたが、762年唐の時代に王冰の表した「素問」と「霊枢」が伝えられている。現代の研究では「鍼経」もしくは「九霊」は「霊枢」(9巻)のことであるとされているが、この9巻本も散逸してしまって現在は残っていない。
「黄帝内経」に基づく体の変化
8歳 髪が伸び、永久歯に生え変わる
16歳 精通を迎え、子孫を残すことができるようになる
24歳 背丈も伸び、筋骨もしっかりしてさかんになる
32歳 筋肉が最も強くなり、肌・肉体が豊かで逞しくなる
40歳 体力や毛髪の成長にかげりが見えはじめる
48歳 肉体的に衰えがはじまり、しわや白髪が目立ちはじめる
56歳 生殖能力が弱まり、体全体の老化が見えはじめる
64歳 五臓六肺をはじめ身体全体が衰え、歯や髪が抜ける
7歳 髪が長く伸び、永久歯に生え変わる
14歳 月経がはじまり、子を産めるようになる
21歳 背丈も伸び、体が成熟し丸みを帯びる
28歳 髪が長く伸び、筋骨ともにしっかりし、身体が盛んになる
35歳 顔や肌の色艶にかげりが出て、髪や頬のハリに衰えが現れる
42歳 顔がやつれ、髪に白髪が混じりはじめる
49歳 肉体が衰えはじめ、閉経を迎える
2019年12月5日、米スタンフォード大学のトニー・ウィス=コレイ教授らの研究チームは、18歳から95歳までの4263名から得た血液サンプルを用いて2925の血漿タンパク質を分析し、その結果をまとめた研究論文を学術雑誌「ネイチャーメディシン」で発表した。
【プレリリース】Undulating changes in human plasma proteome profiles across the lifespan
この研究で、血中のタンパク質の測定によってヒトの健康状態を診断できることは広く知られているが、このほど、血中のタンパク質レベルによって、ヒトの年齢を精緻に予測できることがわかった。これにより、老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく、34歳の青年期、60歳の壮年期、78歳の老年期という3つのポイントで急激に進むことも示されている。
研究チームは、各被験者の2925の血漿タンパク質のレベルをそれぞれ測定し、そのうち1379のタンパク質レベルが被験者の年齢によって明らかに異なっていることを突き止めた。また被験者の年齢は、これらのうち373のタンパク質によって、概ね3年程度の誤差で精緻に予測でき、9のタンパク質でもある程度の精度で予測が可能であることも分かったという。
加齢が要因で不可逆的に衰える「生理的老化」は、一定のペースで増減したり、生涯、同じレベルを維持するのではなく、一定期間、同じレベルを保ち、特定のポイントで、突然上下に変動する。年齢によってそのレベルが明らかに異なる1379のタンパク質のうち、895のタンパク質は、性別によっても特徴が認められた。男性と女性で老化プロセスが異なることを示す成果のひとつとしても注目されている。
この意味では「厄年」「黄帝内経」でも、男女で体の変化する年齢が違うことが示されている。
予防医療とアンチエイジングに取り組む「虎の門中村康宏クリニック」院長の中村康宏医師は、「研究論文を見ると、ホルモンや骨に関係する項目、皮膚や血管、肝細胞の成長因子にかかわる項目で大きな変化が確認できます。3つの年齢のタイミングで、ガクッとたんぱく質の量が変動している。だからその頃にしわが一気に増えたり、肝機能が低下したりする。『認知機能』を司るたんぱく質や、筋力、握力、心臓にかかわる数値が大きく変わっていることも興味深い。一方で、肥満や低体重の判定に用いる指標のBMIに関連するたんぱく質のように、特定の年齢では極端な変化が起こっていないものもあります」と話し、さらに「健康状態がよく、たんぱく質の“質”が良好な人は、若く識別されたようです。人間には、生活サイクルを調整するための“体内時計”が備わっていますが、それと同じように、たんぱく質の変化を表す“加齢時計”とも呼べる遺伝子情報が、体内に組み込まれているのではないかと記されています。いつまでも若々しい人は、加齢時計を遅らせられるほど、たんぱく質を健康に保っているのでしょう」と語っている。
今回の研究で、老化によって血中での分子の変化が起こっていることを示されたことは、今後の抗老化医学をさらに前進させるものといえる。
血中のタンパク質を「老化バイオマーカー」として応用し、老化の進行を特定したり、老化を遅らせる薬剤や治療法開発したりできため、様々な分野での応用が期待されている。
秦の始皇帝以来、人が追い求めてきた「不老不死」の薬までは行かないものの、健康を維持しながら長生きができる薬ができるのも、そう遠くない未来かも知れない。
参考
wiki 厄年
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%84%E5%B9%B4
wiki 黄帝内経
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E5%B8%9D%E5%86%85%E7%B5%8C
ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことがわかった
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/346078.php
カラダの”曲がり角”に要注意!〜女は7の倍数、男は8の倍数
https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/feature/120529/index.html
34才、60才、78才は要注意!急に老け込む!厄年は正しかった
https://www.news-postseven.com/kaigo/78472
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