田辺三菱製薬がカナダで新型コロナワクチンを開発中。今月、カナダと米国で最終治験(臨床試験)に入る。

健康

3月26日に田辺三菱製薬は、新型コロナウイルスワクチンを開発し、早期国内供給を目指していることを発表した。カナダ子会社が開発しているワクチンは今月、カナダと米国で最終段階の治験(臨床試験)に入る予定。9月までにはカナダでの製造販売承認を取得し、その後、日本国内でも供給することを目指す。2024年までに10億回分が製造できるよう、投資計画を進めていることを、上野裕明社長が新聞社のインタビューに答えた。

日本製ワクチンの開発状況

ワクチンは、同社が13年に買収したカナダの子会社「メディカゴ」が開発を進めている。今月、カナダと米国を含む世界10カ国、地域で3万人規模の治験をスタート。カナダ政府とは最大7600万回分の供給で合意しており、今年中の供給開始を目指す。生産拠点は米国とカナダにあり、今年末までに8千万回分の製造能力を確保。24年までにさらに10倍以上へと能力を拡大する。
国内供給に関して上野社長は「なるべく早く日本に持ち込みたい」と話し、現在、規制当局と調整を進めているとした。「海外での大規模治験の速報結果が6月ごろに分かる見通しで、その進捗(しんちょく)をみながら、どのタイミングで日本で治験を開始するか考えたい」としている。


通常のワクチンの製造法

クチンの製造には病原性のない病原体を大量に増やす必要があり、現在、ふ化鶏卵培養法、動物接種法、細胞培養法及び遺伝子組換え法の 4つがある。

①ふ化鶏卵培養法
主にインフルエンザワクチンに用いられる製造法で、ニワトリのふ化鶏卵の中のしょう尿膜腔内に微量のインフルエンザウイルスを接種してウイルスを増殖させ、しょう尿膜腔液(しょう尿液)を回収します。次にウイルスの抗原性のある一部分を取り出し精製してワクチンとする方法。
②動物接種法
過去の日本脳炎ワクチンで採用された方法は、マウスの脳内や動物の体内にウイルスを接種してウイルスを増やす方法。大量のウイルスを得ることが可能。
③細胞培養法
栄養液だけで生育させた動物の細胞にウイルスを接種して培養し、培養液中に出てきたウイルスを不活化・精製してワクチンとする方法。ふ化鶏卵やマウスなどの原材料の供給量に制限されることなく短期間にしかも大量にワクチンを製造することが可能。現在、日本脳炎ワクチンの製造はこの方法がとられている。他には麻しん風しん混合ワクチン、水痘ワクチンなどもこの方法で製造されている。
④遺伝子組換え法
あらかじめ増殖させた特殊な細胞にウイルスの遺伝子を挿入し、ウイルスの抗原性に係わっているタンパクだけを細胞につくらせた後これらを取り出して精製する方法。製造期間が大幅に短縮でき、製造に感染性のあるウイルスを用いないことから、ワクチンを安全に生産することが可能となる。酵母細胞を使った B 型肝炎ワクチンの製造に用いられている。
田辺三菱製薬製ワクチンの特徴

カナダの子会社「メディカゴ」が開発中のワクチンは少し変わっている。メディカゴは、タバコの葉を使って、植物由来のワクチン開発を進めている。
葉にウイルスの遺伝子情報を含む液体を染み込ませ、葉を育てる過程でワクチンのもとになる粒子(VLP)を培養して、刈り取った葉から抽出・精製してワクチンを作るという。5~6週間という短期間で製造できるメリットがあるという。
鶏卵を使わないため、卵アレルギーのある人にも安心して使用することができる可能性が高いと思われる。
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日本人がワクチンを忌避する傾向が高い理由

日本人はワクチン忌避の傾向が強い。2020年9月に英医学誌ランセットに掲載されたワクチンへの信頼度に関する意識調査では、調査を実施した149カ国のうち、日本が最も低い国の一つであることが明らかになった。また世界経済フォーラムと調査会社イプソスが共同で15カ国を対象に実施した意識調査では、日本の新型コロナワクチンの接種意向は69%にとどまり、インドの87%や英国の79%よりも低く全体の平均の73%も下回っっている。
この要因となっているのが、過去に何度か起きた薬害の影響だ。1948年から翌年にかけてはジフテリアの予防接種で製造企業のミスが原因で924人に健康被害が及び83人が死亡した。89年から93年にかけてはしか・おたふくかぜ・風しん(MMR)ワクチンの接種により多くの子供が無菌性髄膜炎に感染し、約1800人の被害者が出た。これらを背景に1994年の改正予防接種法では定期接種に課せられた「義務接種」が「努力義務」へと変更されたことで、「接種しなくてはいけないもの」から「接種をするよう努力する」「接種したくなければムリにしなくても良いのではないか」へ意識が変化していると思われる。このような国民の意識の変化と、薬害が起きたときの裁判や多額の賠償金支払いなどで、製薬会社がワクチン製造に二の足を踏むようになっている。

日本発のワクチン開発・製造を

新型コロナウイルスワクチンの接種にかかる実費費用がいくらかかるのかご存じだろうか。政府は国民には接種費用負担は無しとしているが、海外からワクチン購入にはそれなりに費用がかかる。日本医師会のホームページには、事務費も含めて1回2070円とすることが掲載されている。大人は2回接種するため2回分で4140円。15歳以上の人口は現在約1億1千68万人万人なので費用は約4582億円となる。
もし国内メーカーが海外メーカーより安価で安全な方法で製造できるのであれば、ぜひ開発・製造を行って欲しい。

参考:

新型コロナウイルスワクチンの接種費用は事務費も含めて2070円に【日本医師会on-line】
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009772.html
ワクチンの話
http://www.pref.kyoto.jp/hokanken/documents/oyakudati_wakutin.pdf
不活化ワクチン・生ワクチンの製造の流れ【厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/content/000557367.pdf
厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/index.html
総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html
新型コロナワクチン、価格は「インフル並み」の 40ドル…米政府の契約、世界の指標となるか
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/18890/
EUのワクチン価格「暴露」 1回分225~1860円―ベルギー閣外相
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020121900183&g=int

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