「キメラ」や「クローン」の研究でヒトが新しい生物を創り出すことの倫理と知見

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中国と米国の研究チームが、世界で初めてヒトの細胞をサルの胚(はい)に注入し、異なる種の細胞を併せ持つ「キメラ」をつくり、ある程度成長させることに成功したことを4月15日付で米科学誌「セル」(電子版)に発表した。生物学における キメラ (chimera) とは、同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や、そのような状態の個体のことを指す。
また、ヒトの皮膚の細胞からiPS細胞をつくり、ヒトの胎児になる初期の段階である「胚盤胞(はいばんほう)」を世界で初めてつくったということを3月18日に、モナシュ大学などと、米国テキサス大学などの二つのチームが英科学誌ネイチャーに発表している。



「キメラ」研究は中国・昆明理工大と米ソーク研究所などが行い、カニクイザルの受精卵を分裂が進んだ胚(胚盤胞(はいばんほう))の状態まで成長させ、ヒトのiPS細胞を注入して「キメラ」をつくり、培養皿で育てた。その結果、1日目には132の胚でヒトの細胞が確認され、10日目でも103の胚が成長を継続。19日目には三つにまで減ったが、成長した胚には、多くのヒト細胞が残ったままだったという。
また人の皮膚からiPS細胞をつくり胚盤胞ができたということは、子宮に戻せば生命(皮膚を提供したヒトの「クローン」)が誕生する可能性がある。

2つの研究とも、成長した胚や胚盤胞を子宮に戻したり、子が生まれたりするまでには至っていないが、ヒトの遺伝子を使った研究は、倫理的な懸念がある。「キメラ」の研究は1963年に映画化された「猿の惑星」を彷彿させるものであろう。

これまでも動物の体内でヒトの臓器をつくり移植にいかそうと、ブタやヒツジと、ヒトのキメラをつくる研究は世界で進んでいる。また精子や卵子に何らかの不具合があり、子どもが授かりにくい人の不妊治療という意味では有益な技術となろう。
しかしサルの胚にヒト細胞を注入する研究は倫理的な懸念も強く、米国立保健研究所(NIH)は、公的研究資金を出さないと決めている。また人の皮膚片から胚盤胞をつくることは、受精を必要とせずに、新たな生命を生み出すことができる可能性を示している。



研究の可能性を認めつつ「これが胎内に移植され、胎児になったり、子が生まれたりしていれば、かなり難しい問題になる」として、倫理的な議論を進めるよう求められているという。

参考:
皮膚から命つくることも「時間の問題」 ある論文の衝撃
https://www.asahi.com/articles/ASP3V7JYFP3TULBJ009.html?ref=huffpostjp
ヒトとサルの細胞あわせもつ「キメラ」中国と米国の研究チームが発表
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6078eae0e4b0eac4813b53f9

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