新型コロナウイルスが他のウイルスの作用を劇症化させている可能性も 次は欧米を中心に流行し始めた「アデノウイルス」

健康

新型コロナウイルスが世界的に流行したが、医療関係者の努力とワクチン接種、抗コロナウイルス薬の開発で、少しずつ新型コロナは収束の兆しが見えてきた。しかし2022年4月21日現在、WHOヨーロッパ地域の11か国及びWHOアメリカ地域の1か国から、少なくとも169例の原因不明の急性小児肝炎の患者が報告され、その原因として新型コロナとアデノウイルスが同時に体内に存在することで感染力を高め劇症化させることが疑われている。


これまでの「アデノウイルス」とは

アデノウイルスは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因ウイルスで、1953年に発見された。51の型に分類され、1~8型が病気と深い関係がある。多くの型があるため、免疫がつきにくく、何度も感染する。
主な症状は、

・鼻水 ・鼻づまり ・せき ・発熱
・目の充血 ・嘔吐 ・下痢 ・腹痛

主な感染症とその症状
①呼吸器感染症
鼻炎、咽頭炎、扁桃炎などの気道炎がある。症状はせき、結膜炎のほか、喉頭炎やクループ(声帯やのどに感染して気道の粘膜がはれる病気)、気管支炎、肺炎などが起き、肺炎の原因になる。
②咽頭結膜熱(プール熱)
プールを介して子どもの間で流行することが多いため一般的にプール熱といわれている。夏に多く発生するが近年、温水プールの利用が盛んになったため、年中流行する可能性がある。うがい、手洗い、プールの塩素消毒などで、ある程度予防できるが、発症すると39~40度の高熱と、37度前後の微熱の間を4~5日ほどを繰り返し、扁桃腺のはれ、のどの痛み、結膜炎が伴うこともある。学校保健安全法上の学校感染症の一つであり、症状がなくなった後でも2日間登校禁止となる。



③流行性角膜炎
全年齢で発症する目の病気で、充血や目やにを伴う。咽頭結膜熱のような高熱やのどの赤みも強くないが、非常に強い伝染性力があり注意が必要。流行性角結膜炎は学校保健安全法上の学校感染症の一つで、伝染の恐れがなくなるまで登校禁止となる。
④胃腸炎
乳幼児期に多い胃腸炎を引き起こす。潜伏期は3~10日で下痢、嘔吐、嘔気、気分不快、微熱、腹痛といった、ロタウイルスによる胃腸炎と似た症状が見られる。感染者の便の中にあるウイルスが、手を媒介として口から感染するほか、飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染する。感染しても症状がない場合、気づかないうちに他人に感染させることがある。

⑤出血性膀胱炎
真っ赤な血尿が出て、尿意が何度も起こる尿意頻発や排尿時に痛みがあることも。症状は2~3日で良くなり、血尿は10日程度で改善する。
世界で広がっているアデノウイルス




世界で報告が相次いでいる『原因不明の子どもの肝炎』に「アデノウイルス」が関わっている可能性が指摘されている。4月21日時点では、イギリスなど12の国で、16歳以下の子ども計169人について報告されて、うち17人は肝移植が必要な重篤な状態になり、うち1人は死亡したという情報があるという。さらに4月25日には日本でも16歳以下の疑いの患者が初めて確認され、国内でも広がる兆候がある。これについて、大阪公立大学大学院医学研究科の城戸康年教授は、「新型の肝炎型アデノウイルスの可能性」や「コロナウイルスが関係している可能性」などが考えられると話している。

原因不明の急性小児肝炎を引き起こす仮説

イギリスでは、今年1月以降に原因不明の急性肝炎を発症する子どもが、世界で最も多い114人確認された。イギリスで原因不明の急性肝炎が発症した子ども53人を調べたところ、40人でアデノウイルスが検出され、アデノウイルス感染との関連性がクローズアップされている。
4月30日のAFPによると、米疾病対策センター(CDC)は4月29日、謎の肝炎にかかったアラバマ州の子ども9人全員が「アデノウイルス41型」という一般的な病原体の検査で陽性だったとする調査結果を発表したという。世界保健機関(WHO)によると、ここ数週間に11か国で同様の患者が約170人確認されている。アラバマ州の子どもは1~6歳で、他には健康状態に問題がなかった。
この小児性肝炎に関しては、ウィスコンシン州の死者1人をはじめ、全米で調査が進められており、アデノウイルス41型は子どもに胃腸炎を引き起こすことが知られているが、健康な子どもに肝炎を引き起こすとは一般に知られていないものだ。



このように健康な子どもに肝炎を引き起こすことがなかったアデノウイルス41型が劇症化する仮説として3つ考えられている。

①アデノウイルスの遺伝子が変異した
今までのアデノウイルスと違う変異型の可能性がある。それについては、遺伝子の分析を待っている状態であり、現時点では不明。
②新型コロナウイルス感染が、アデノウイルスとともに肝臓に異常を引き起こす
急性肝炎になった子どもたちが新型コロナウイルスに感染しているか調べたところ、6人に1人は陽性で、一般人に比べて非常に高い数値だった。このため、新型コロナウイルス感染と関連している可能性がある。アデノウイルスの感染より少し前か同時に新型コロナウイルスに感染したことによって、肝臓へ負担を高め炎症を引き起こしている可能性がある。
③パンデミックの感染対策で幼児期にアデノウイルスに暴露(接触)しなかったため
他のウイルスで確認されている現象として、通常より遅い年齢で初めてウイルスに感染すると重症化しやすい傾向がある。新型コロナが流行するまで幼児は様々なところにあるウイルスをものを舐めることで暴露(接触)し、抵抗力を身につけてきた。本来、0歳~1歳ぐらいでアデノウイルスにも感染していたが、パンデミックの感染対策により周りにほとんどウイルスがいない状態となり様々なウイルスに感染しなかった。そのため3歳~5歳に初めてアデノウイルスに感染することで、重症化しやすい可能性がある。

アデノウイルスにはアルコールは効かない

ウイルスには、表面に膜があるウイルス(Envelope virus)と膜がないないウイルス(Non-enveloped virus)の2種類ある。アルコール(エタノール)は、新型コロナウイルスのような膜があるウイルスに有効で、表面の膜を破壊し除菌できる。しかしアデノウイルスのように膜がないウイルスにはあまり効果がないため、アルコール消毒より、石鹸による手洗いが有効である。



またアデノウイルスは経口感染や接触感染が主な感染経路となるため、家族でも一人ずつ使うタオルを割り当てることも有効となる。

おわりに

2021年10月~2022年2月に発生した急性小児肝炎の子ども9人のほとんどは入院前、大半が嘔吐(おうと)と下痢に見舞われ、さらに上気道症状が確認された例もあった。入院中はほとんどの子どもに黄疸(おうだん)と肝臓の肥大化がみられたという。
政府は海外に渡航する人のために「海外感染症発生情報」を公開している。このゴールデンウィークに渡航する人は一読されることを勧める。
【厚生労働省】複数国における小児の原因不明の急性重症肝炎

複数国における小児の原因不明の急性重症肝炎




今後日本も、海外からの渡航者を現在の1万人/月から広げることが考えられるため、海外の渡航者から感染することも考えられる。それに備えた対策をすることも重要であろう。

参考
謎の小児肝炎、アデノウイルスが原因の可能性
https://www.bbc.com/japanese/61225696
「アデノウイルス」ってどんな感染症?
https://www.m-ipc.jp/what/adenovirus/
世界で広がる原因不明の子どもの急性肝炎 医師が挙げる3つの仮説
https://news.yahoo.co.jp/articles/c61160d7132b6972e6053142d61b0ab10473a4ce
『原因不明の子どもの肝炎』考えられるのは「アデノウイルス」や「コロナウイルス」が関係?国内の子どもの肝炎状況なども専門家が解説
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/33368?display=1
謎の小児肝炎、ウイルス性か 米CDC
https://www.afpbb.com/articles/-/3402860

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