日本のエネルギー自給率は11.8%で原油のほとんどを中東に依存 無限にある国産エネルギー「地熱」の活用

テクノロジー

風力・太陽光発電に代表される「自然エネルギー」が注目されているが、日本は火山国であり地下には大量の地熱が眠っている。現在、全国の地熱発電所の発電設備容量を合計すると約54万kW、発電電力量は2,472GWh(2019年度)で、日本の電力需要の約0.2%をまかなっているにすぎない。
ベースロード電源に原子力発電が使えない日本で、自然環境に左右されにくく、CO2を排出しない地熱発電はSDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」のターゲットに出てくる「クリーンエネルギー」からも必要な発電ではないだろうか。

地熱発電とは




地熱(主に火山活動による)を用いて行う発電のことで、ウランや石油・石炭等のエネルギーに依存はせず、高温の蒸気や熱水、噴出物の処理等を適切に行えば、地球温暖化や大気汚染への対策手法ともなるため、環境保全とエネルギー安全保障の観点から各国で利用拡大が図られつつある。

地熱発電のメリット

地熱発電を行うためのメリットは、

①持続可能な再生可能エネルギー
日本の地下には膨大な地熱エネルギーが存在している。このエネルギーは化石燃料のように枯渇する心配も無く、長期間にわたって安定的に供給される。
②季節や天候、昼夜を問わず安定的に発電できる
太陽光や風力発電は、気象状況により発電量が大きく変動するため、発電量が低下した場合に電力を補う発電施設が必ず必要となる。しかし地熱発電は、季節や天候、昼夜を問わず坑井から天然の蒸気を噴出させるため、年間を通して安定した発電を続けることができる。
③高温蒸気・熱水の再利用
発電に使った高温の蒸気・熱水を再利用して、農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房などに使うことができる。地域の活性化にも役立てることが可能。



地熱発電のデメリット

地熱発電を行うためのデメリットは、

①人家が密集していない広い場所が必要
現在の地熱発電熱効率は15~20%の範囲であり、発電量の4倍以上の熱が地上に放出される。この高温の熱を冷却するための冷却塔が必要であり、発電所の周りの温度に影響が出る。
②温泉が出る地域では権利条件がある
地熱発電は、計画から建設までに10年以上の期間を要し、井戸の穴掘りなど多額の費用がかかるが、他の自然エネルギーと比しても高い費用対効果があり、2005年での調査では8.3円/kWhの発電コストが報告されている。温泉地は地上付近に熱水の噴出口があるため、比較的低コストで発電を開始することができるが地権者や温泉関係者との話し合いが必要。
③3年に1度は坑井を掘る
蒸気を採取するための坑井(蒸気井・生産井)の深さは、地下の構造や水分量などによって異なり、数十mから3,000mを超えるものまである。地下の状態が変化することもあるため3年に1度は熱源が地上付近にない場合は坑井を掘る必要があり、熱源が深い場合はコストがかさむ。
④加圧注水型の発電方法は地震を引き起こすこともある
韓国の浦項市で実施された開発プロジェクトでは計5回の加圧注水が行われ、無感地震を含め519回の地震が観測された。うち2017年11月15日に発生した地震は浦項地震と呼ばれ、同国観測史上2番目に大きいM5.5を記録したほか、7千5百万ドルの直接的被害を及ぼしたという。

マグマだまりの上にある「超臨界地熱貯留層」

2022年3月2日、東北大大学院環境科学研究科の土屋範芳教授(地球工学)らの研究グループが、これまで不明確だった「超臨界地熱資源」の分布域の調査方法を編み出し、可視化することに成功したと発表した。



【東北大学】地下深部に広がる「超臨界地熱資源」分布の可視化に成功 -より高出力な地熱発電につながる「地熱資源」を発見-

地下深部に広がる「超臨界地熱資源」分布の可視化に成功 -より高出力な地熱発電につながる「地熱資源」を発見-
【本学研究者情報】 〇環境科学研究科 教授 土屋範芳 研究室ウェブサイト 【発表のポイント】 秋田県湯沢地熱域の地下深部(地下数km)に広がる「超臨界地熱資源」分布の可視化に成功 「超臨界地熱資源」の...

確認された地熱資源は地表近くにある従来の地熱資源よりも高温高圧で、グループは「より大きな出力の発電が可能になる」と期待を膨らませている。

地熱発電に適している九州と東北

高温の地熱資源は、九州と東北に偏って存在している。

【JOGMEC】地熱資源情報より
今回の研究は、栗駒山麓西部の超臨界地熱資源の分布域を割り出すため、地表から深さ20キロまでの地層の電磁波を測定。物質の電気の流れやすさの違いを示す「比抵抗」の値を調べることで判明。
「超臨界地熱貯留層」の範囲は、深さ2・5~6・0キロ、幅3キロ、長さ5キロのエリアであり、地質の分布状況などからマグマのすぐ上にあり、400度を越えたものだった。



この「超臨界地熱資源」は、火山や地熱地帯で深さ数キロの地層に存在すると推測され、流体でも気体でもない性質を持つ超臨界水(温度374度以上、圧力22メガパスカル以上)があるとされる。
今回の調査域内にある東北電力上の岱(うえのたい)地熱発電所(出力2万8000キロワット)など、全国の一般的な地熱発電所の出力は1万~4万キロワット。土屋教授は「今回確認した地熱資源は、従来の地熱発電の数倍に当たる10万キロワットが発電できる可能性がある」と話している。
グループは今後、鳴子火山群(宮城県大崎市)や葛根田地熱地域(岩手県雫石町)など東北各県の地熱資源域でも同様の調査を進め、脱炭素化への貢献を目指すと意気込んでいる。

参考
【資源エネルギー庁】再生可能エネルギーとは
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/geothermal/index.html
【関西電力】エネルギーについて
https://www.kepco.co.jp/siteinfo/faq/energy/9098897_10614.html
wiki 地熱発電
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%86%B1%E7%99%BA%E9%9B%BB
【JOGMEC】地熱資源情報
https://geothermal.jogmec.go.jp/information/plant_japan/
「超臨界地熱資源」分布域明らかに 東北大グループ、大出力発電に期待
https://kahoku.news/articles/20220422khn000042.html

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