現在ロシアが行っている「ウクライナ戦争」に対して国際社会が非難している中、英国のヘンリー王子（38）が10日に出版される回顧録「スペア」で、アフガニスタン従軍時に敵の戦闘員25人を殺害し、その戦闘員のことを「チェスの駒」と表現したことに物議を呼んでいる。
2007年～08年と2012年～13年に2度アフガニスタンに派遣されているヘンリー王子。当時は反政府勢力だったタリバンの掃討作戦などに従事。攻撃ヘリコプター「アパッチ」の操縦士も務めた。
英メディアによると、王子は10日発売予定の自伝「スペア」の中で、タリバン兵を人間と思わず、25人の敵戦闘員を「人間ではなくチェスの駒」を盤上から消す感覚で排除したと振り返ったという。
ヘンリー王子はこれまで、タリバン兵を何人殺害したか明らかにしていなかったが、アパッチに搭載されたカメラから正確な人数が把握でき「自分の数は25だ。自らに満足感を与える数字ではないが、恥を感じさせるものでもない」と述べている。
これに対し、タリバン内の強硬派で、米国がテロ組織に指定する「ハッカーニ・ネットワーク」のアナス・ハッカーニ幹部は6日、ツイッターで王子を非難し、「あなたが殺したのはチェスの駒ではなく、人間だった。
彼らには帰りを待つ家族がいた。我が国の罪のない人々は、あなたの兵士、軍、政治指導者にとってはチェスの駒だった。それでも、あなた方はゲームに負けた」と抗議。
2021年8月15日に前政権のアシュラフ・ガニー大統領が国外に亡命し、現在のアフガニスタンはタリバンが掌握している。今回の報道に対しタリバンの幹部は強く反発。
タリバン政府の報道官も、「このような犯罪行為を行ったのは、ヘンリー王子に限ったことではない。西側諸国が自分たちの人権の擁護者であり、支持者であると考えているのは残念だが、実際にそれが彼らの本当のマナー。イスラム国家としてのアフガニスタンは、そのような行為を決して忘れず、国を守り続ける」と述べている。
英王室との確執が続く王子は2020年3月31日に公務を離脱し、現在はアメリカ人の女優で離婚歴のあるメーガン・マークルとともに米国に住んでいる。
ヘンリー王子の告白は、英軍関係者からの激しい反発を引き起こし、王子自身の安全を脅かし、英国軍の評判もおとしめかねないものだとする声が上がっている。
英国の元安全保障担当顧問で2016～19年にかけて駐米大使も務めたキム・ダロック氏は「自分ならヘンリー王子にこうしたコメントをしないよう助言しただろう」と語った。また退役した英軍将校のリチャード・ケンプ氏は、「こうしたコメントは王子の評判を『汚す』ほか、英国軍への否定的な見方を『不当に』植え付けるものだ」との認識を示し、さらに「タリバン支持者らの復讐（ふくしゅう）心をあおり、英軍や王子自身の安全を脅かす」可能性があると述べている。
戦争は始めるより終わる方が難しいという。ヘンリー王子の告白で沈静化しつつあった事態も再燃する可能性がある。「ウクライナ戦争」もアフガンでの戦闘も、人々の心には大きな傷が刻み込まれ、これを解消するためには途方もない時間と世界の人々の援助、人的交流や戦争当事国同士の和解が必要となろう。
参考
ヘンリー王子、アフガニスタンで戦闘員２５人殺害したと主張 英軍関係者とタリバンから批判の声
https://www.cnn.co.jp/world/35198330.html
英ヘンリー王子の25人殺害「チェスの駒」表現をタリバン幹部が抗議「あなたが殺したのは人間」
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc84647b2938d828b08c125d94e5e1ce1459ea78
ヘンリー王子の25人殺害「チェスの駒」表現に英国内外で波紋
https://mainichi.jp/articles/20230108/k00/00m/030/020000c
アフガンで「25人殺した」 ヘンリー王子が軍務回顧 英紙
https://news.yahoo.co.jp/articles/254585f1b6355c99731dca28070004d4e313efb3
wiki アフガニスタン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3
wiki ヘンリー (サセックス公)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC_(%E3%82%B5%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E5%85%AC)
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