傷も自己修復する”生きた”皮膚で覆われた指型ロボットを東京大学が開発

テクノロジー

東京大学が世界に先駆けて、人工培養された“生きた”皮膚で覆われた指型のロボットを開発することに成功した。論文が6月10日、科学誌「マター」に掲載される。
今後高度な全身ロボット技術と人工皮膚・センサーが融合すると、映画「ターミネーター」の世界が実現するかもしれない。

本物の指に見える!

これまで制作されたヒューマノイド型ロボットは、シリコンゴムで表面を覆うことで人間らしく柔らかい皮膚感を出していた。今後ロボットがこれまで人間が行っていた仕事を代替していく場合、 シリコンゴムでは表面破損や古くなることでセンシング機能の低下、こすれによる発熱などが発生するため、人間らしい能力を備える必要があるという課題が残っていた。



人の皮膚細胞を体外で立体的に培養しロボット表面に貼ることができれば、様々な人間らしい作業をスムーズに行え、さらにコラーゲンシートを傷ついたところに貼るだけで自己修復ができるなど、メンテナンスが容易にできる。
【東京大学プレリリース】掲載日:2022年6月10日
世界初!生きた皮膚で覆われたロボット ~修復能をもつ培養皮膚付きロボットの開発に成功~

世界初!生きた皮膚で覆われたロボット | 東京大学
「表皮」と「真皮」の構造を再現

皮膚細胞を培養するといっても人間の皮膚構造は単純ではない。
皮膚構造は大きく3層に分かれ、

①最も上部にあり外部と接触しているのが「表皮」で、約4週間程度で表皮細胞表面の厚さ10〜20 μm、足の裏などではmm単位の角質(角層)が生成されやがて剥離する。
②表皮の下層にあるのが「真皮」で、表皮との接触面で凸凹した乳頭層と、その下の網状層に分けられる。網状層に密なコラーゲン繊維の結合体があり、弾性繊維が網状に分布することで皮膚本体に強靭さを与える。
③皮下組織
皮膚と筋膜など下部の組織を繋ぐ部分が「皮下組織」で、ここに皮下脂肪組織が多く含まれており、栄養の貯蔵や体の保温をする機能を持つ。




このうち東京大学が再現したのが「表皮」と「真皮」の皮膚構造で、およそ1.5ミリ程度の厚さでロボットを包んでいるという。真皮細胞は培養する際に縮む性質があるため、これまで皮膚の培養が難しかった。今回、キノコ型の留め具を使ってロボットに固定し、回転させながら表皮細胞をまくことで、指に培養皮膚をまとわせることができたという。
現段階では培養皮膚に養分を巡らせる働きがないため、培養液から出すと寿命は1時間ほどしかない。今後、真皮の構造をより本物の皮膚に近づけ、「血管」などの構造も再現することで長寿命化を目指すという。

コラーゲンシートで7日間で修復

培養皮膚は人間らしさに加えて、傷付いてもコラーゲンシートを傷口に貼ることで細胞が移動・分裂し、自力で修復することが可能だという。実験ではメスで傷つけた傷口にコラーゲンシートを貼ると、7日間ほどの培養でコラーゲンシートに真皮細胞が移動し、傷口の接着強度が強まることが確認されている。傷が修復された指型ロボットは再び関節運動を行うことが可能であり、傷口部分が一体化していることも確認されている。

今後、皮膚にバイオセンサーを組み込む

培養皮膚をもつことでゴツゴツしたイメージのロボットも、よりフレンドリーなロボットに変革することができる。
将来のヒューマノイドロボットの被覆材料のみならず、義手・義足分野や皮膚を対象とした化粧品や医薬品の開発、移植素材としての再生医療分野等での活用も期待されている。
さらに培養皮膚に「神経系」や「感覚器」を導入することができれば、皮膚全体を触覚センサーにしたり、鼻の嗅覚受容体を再現することで、においを嗅ぐこともできる。
現在空港などで活用されている「麻薬探知犬」も、センサー技術とロボット技術、培養皮膚との融合で「ロボ麻薬探知犬」ができるかもしれない。



東京大学・竹内昌治教授によると「今回一番のポイントは生物の機能を取り込んだバイオハイブリッドロボットの一例を示すことができた。要素技術は色んな分野に展開できると思っていて、例えば移植材料の皮膚、医薬品や化粧品を検査するための皮膚モデル、動物を犠牲にしない革製品への応用、義肢義足を皮膚で覆っていくことも考えられる」と語っている。
この技術が発展し、アーノルド・シュワルツェネッガーが主演した映画「ターミネーター」のアンドロイド(T-800)のようなロボットが出現するかもしれない。

参考
wiki 皮膚
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%86%9A
世界初!“生きた”皮膚で覆われた指型ロボット開発 傷も自力で修復可能
https://news.yahoo.co.jp/articles/57cdd1d9b9f4d9dcb43b381e8915eeabb724296c
人間に近い「肌感」実現へ、生きた細胞の皮膚で指型ロボット…傷ついても再生
https://www.yomiuri.co.jp/science/20220609-OYT1T50208/
wiki ターミネーター (映画)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

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