このほど慶応大学の榛村重人准教授らの研究チームが6月8日、角膜が混濁して視力が低下する「水疱性角膜症」の患者に対し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った角膜の細胞を移植して治療する臨床研究計画を厚生労働省に申請したと明らかにした。
角膜は、眼球の最も前面にあるドーム状の透明な膜のこと。厚さは中央部で約0.5mm、直径は11~12mmで、眼球内への光の入り口であると同時に、入った光を屈折させるという重要な役割を果たしている。角膜組織は水分を78%含む組織だが、角膜組織を保ち水分調節を行っているのが、角膜の一番内側にある「角膜内皮細胞」で、これにより0.5mmという一定の厚みが保たれている。水疱性角膜症は、角膜内皮細胞の障害で、角膜に多量の水がたまり、角膜の厚さが著しく増した状態となる。この状態を「浮腫(ふしゅ)」といい、角膜浮腫により角膜がスリガラス状に濁り、非常に見えにくくなる。また、浮腫のために、角膜の表面を覆っている角膜上皮がはがれやすくなり、眼に激痛をともなうことがある大変な病気だ。
【参考】東邦大学医療センター 佐倉病院眼科HP
患者は日々視界が曇っていくのを止めることができず、さらにチリチリ・ズキズキといった痛みと闘いながらの生活となる。手術においても角膜の内側に細胞を移植するため、目の水晶体の交換が必要となることがある。(年齢が高い場合、水晶体に圧力がかかると濁りやすくなるため、水晶体を交換する必要がある)最大の問題は角膜の提供数が非常に少ないこと。現在年間に国内で提供されるドナー眼は2,000件弱にすぎず、国内で約1万人の患者が待機しており、患者が角膜移植を希望しても、1年以上順番待ちしなければならない状況が続いている。
【参考】培養ヒト角膜内皮細胞注入療法【京都府立絵か大学眼科学教室】
iPS細胞から角膜内皮細胞と同等の機能をもつ「角膜内皮代替細胞」を製造し、その細胞を眼内に注射器で注入する。この方法のメリットは、傷口が既存の角膜移植術に比べてはるかに小さいため、合併症を大幅に減らせ、「角膜内皮代替細胞」を凍結保存することで事前に大量ストックでき、これまで不可能だった「必要に応じて、必要な患者へ、速やかに治療が開始できる」ことが可能となる。計画では、1年程度かけて安全性や有効性を確認するという。
人は目が見えなくなることで自由に行動することが難しくなルと同時に意欲も減退し、行動する気持ちにならなくなる。生き生きと生活するためには目はとても重要であり、一日も早く実用化されることを願っている。
プレリリース【慶應義塾大学】
「水疱性角膜症に対するiPS細胞由来角膜内皮代替細胞移植の安全性及び有効性を検討する探索的臨床研究」を慶應義塾特定認定再生医療等委員会が承認
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2021/6/8/210608-1.pdf
参考
iPS角膜細胞移植を申請 慶応大
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/210608/ecb2106082311005-n1.htm
wiki 目
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%AE
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