皆さんは生きたカブトガニを見たことありますか。カブトガニは「生きた化石」とも呼ばれ、約2億年前のジュラ紀に繁栄し、今もひっそりと生きています。岡山県笠岡市には世界でただ一つのカブトガニをテーマとした博物館があり、日本では天然記念物として保護し繁殖を行っています。しかし世界では、カブトガニの特殊な血液を狙って、毎年50万匹も捕獲され血液を抜かれるため、その大半が死んでいるといわれています。
<目 次>
1 笠岡市とカブトガニの繋がり
2 カブトガニの血が青く見える秘密
3 カブトガニの特殊能力
4 カブトガニの血液が現代医学を変え我々の命を救っている
5 人類に必要不可欠なカブトガニの生息数は世界的に減少しています
6 2016年に代替品も開発されたが・・
岡山県南西部の瀬戸内海に面した笠岡市の笠岡湾一帯は、古くからカブトガニの生息地として知られていました。1966年(昭和41年)から1989年(平成元年)にかけ、国営事業として笠岡湾の大規模な干拓が行われ、その結果カブトガニの生息地が減少し絶滅の恐れがあったことから、カブトガニの繁殖、展示、広報等を目的とした施設として、市が運営する博物館としてオープンしました。またこの一帯は天然記念物カブトガニ繁殖地(昭和46年文部省告示第150号で指定)され幼生の放流も行っています。
人の血は何色に見えますか?多くの方が「赤色」と応えます。私も同感です(笑)。人の血には「ヘモグロビン」が含まれるので「赤色」く見え、体外でかさぶた(酸化)になると「茶色」く見えます。「ヘモグロビン」が体内で酸素を運搬する役割を担っています。カブトガニは「ヘモグロビン」の代わりに、酸素を運ぶ役割を「ヘモシアニン」が担い、体内では透明がかった「乳白色」、体外に出て酸化すると「青色」に見えるのだそうです。
カブトガニはジュラ紀(約1億9500万年~1億3600万年前)から形態が変化していないので「生きた化石」と呼ばれています。そしてカブトガニの先祖がカンブリア紀(約5億7000万年前~5億年前)に大繁栄した「三葉虫」です。こんなにも長く子孫を残せたのも少量の食料と水があれば生きられること。1~2年も絶食状態でも生きられ、冬眠もできる体の構造をしています。もしかしたら血液の成分も現存できた要因の一つかも知れません。
①北アメリカ大陸の東海岸に住んでいるアメリカカブトガニです。北はカナダとアメリカの国境付近まで、南はメキシコ湾付近にわたって広く分布しています。このカブトガニは体が大きく、尾剣が短いのが特徴です。
②日本、台湾、南シナ海方面に住んでいるカブトガニです。体の均整がよくとれており、いわゆる八頭身美人に当たります。
③南方にすんでいるミナミカブトガニとマルオカブトガニです。体は小さく、尾剣が円柱の形をしています。これらのカブトガニは他に比べると、早く親になるようです。
人の生命を奪う大腸菌やサルモネラ菌などの「内毒素」検査に、以前は膨大な時間と労力がかかっていました。
「内毒素」は生活環境のどこにでも存在する代表的な発熱性物質(パイロジェン(pyrogen))です。「内毒素(エンドトキシン)」が血液中に入ると発熱、敗血症性ショック、多臓器不全、頻脈等などの作用が起こすので、医薬品や医療機器、特に注射剤、輸液、透析液などの生体内へ直接導入される液体や、注射器、人工臓器、透析膜などの医療機器の製造においては、混入しないように厳重な管理が必要となります。
カブトガニの微量の血液を使うと、約1時間で内毒素の検査が可能になり、現在、カブトガニの血液を使うことで100億分の1グラム以下の内毒素を検出することが可能です。
この作用に気付いたのは医学研究者フレッド・バングで、1956年にカブトガニの血液が内毒素と反応すると、その血球であるアメボサイト(変形細胞)が凝固して塊となることを発見し、それを人間の血液に入る医薬品の細菌汚染の検出に使うことを考えました。
そのため現在ではカブトガニの血液は無くては成らないものとなり、その利用は肝臓疾患、感染症など医学をはじめ、獣医関係、放射性医薬品などの薬学に利用されています。また、海や河川の汚染度を測定したり、我々の日常食品の衛生管理にも利用されるなど、今の生活には必要不可欠なものとなっています。
さらにエイズウイルスに対する抑制作用も判明したいま、国内外でカブトガニの血液の利用が、ますます増えています。「内毒素(エンドトキシン)」に興味がおありなら、富士フイルム和光純薬株式会社のWeb siteの説明が分かりやすいのでご覧ください。
http://www.wako-chem.co.jp/lal/lal_knowledge/about_lal.html
世界中の製薬会社がカブトガニの血液に頼っています。特に今年は新型コロナウイルスに対抗するためのワクチン開発で需要がうなぎ登りの状態です。
ではどこで血液を採取しているのでしょう。それはアメリカ大西洋沿いの砂浜に生息するカブトガニで、製薬会社は毎年およそ50万匹のアメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)を捕獲し、血液を採取したのち海に返しています。1尾から採取する血液量は100~120ccですが、カブトガニの血液量が300ccなので体内の血液の1/3を抜き取られることになります。もし人間が体内の血液の1/3を抜き取られたらと考えると・・生き残るのは難しいのではと考えてしまいます。
1990年には、アメリカカブトガニの主な産卵場所であり、製薬会社が捕獲するデラウェア湾で、124万匹が産卵していると推定された。しかし2002年にはそれが約1/4の33万3500匹まで減少。近年では個体数は安定しており、2019年の調査では推定33万5211匹とされています。(新型コロナウイルス感染拡大のため、2020年の調査は中止された)。
カブトガニを捕獲し血液を採取する作業は時間がかかる。2016年には代替品の合成物質「リコンビナントC因子(rFC)」が開発され、ヨーロッパで認可されたのち、米国でもいくつかの製薬会社が利用し始めた。しかし、2020年6月1日、米国内の医薬品等の科学的基準を定める米薬局方では、未だ安全性が証明されていないとしてrFCをカブトガニから採取される物質と同等には扱わないとされました。特にヒトの健康と安全に関わるワクチン(新型コロナウイルスワクチンなど)のような重要性の高いものにおいては、カブトガニから採取される物質を優先して使用するようです。
製薬会社の説明では、カブトガニの個体群に負担をかけるものでは無いと話していますが・・心配です。
カブトガニは約2億年前から姿を変えずに生きてきました。医学の進歩も重要ですが、カブトガニという種を根絶やしにするような事はあってはいけません。カブトガニも生物の多様性の面から、これ以上減少しないように代替品の活用を積極的に考えて欲しいと思います。
カブトガニWiki
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