金属と高分子のナノ粒子複合体が細菌を簡単に検出する細菌検査手法を開発

テクノロジー

固有色の光を散乱するナノ粒子複合体に細菌の抗体を塗布し、それに食中毒の原因菌を付着させると散乱光が変化する。

この特性を生かし、1時間程度で食中毒菌の特定ができる手法を大阪公立大学の研究チームが開発した。これまで食品や医療、環境分野などの細菌検査では、培養に2日間かかっていた。

ナノ粒子とは

ナノ粒子は、100ナノメートル(nm)以下の直径の粒子を指し、1ナノメートルは、1メートルの10億分の1という長さを示す単位。
具体的には、1ナノメートルは髪の毛の太さの10万分の1で、大腸菌やカビの胞子、インフルエンザウイルスといった細菌や胞子と同じ大きさ。



この領域の粒子は超微粒子のため、肌になじみやすく滑らかなため、化粧品に使われることが多くなっている。
ナノ粒子は通常の粒子とは違う特性を発揮する。

①体積に対する表面積の大きさが大きくなるため、化学反応を起こしやすく、イオンや物質の吸着効果が高くなる。さらに粒子が集まっても多孔質な構造となるため、飛躍的に吸着性能が上がる。
②粒子の拡散性が高まる。拡散性とは、混ざりあった状態をどれだけ維持できるかを示すもので、ナノ粒子化した物質は、一度液体に混ぜると、その後も長時間に渡って混ざりあった状態を維持する。これを利用して目的の物質を均一に塗布したり、安定した化学反応を得られたりできる。
③透光性が高まり、光を通しやすくなる。この特性を生かせば、これまで透明度の関係でコーティングが施せなかった場所にコーティングを施したり、透明でありながら光の屈折率をコントロールするといったことが期待できる。
④ナノ粒子化すると多くの物質が「蛍光発光」するようになる。粒子が微細化すると物質がわずかな力で振動して、蛍光発光のような特性が表れ、この特徴はバイオセンシングの技術で利用ができる。

細菌検査時間を劇的に短縮

大阪公立大学大学院 工学研究科 物質化学生命系専攻の椎木 弘教授らの研究グループは、金、銀、銅のナノ粒子とポリマー粒子からなる複合体がそれぞれ白、赤、青の散乱光を示すことを利用し、腸管出血性大腸菌(O26、O157)や黄色ブドウ球菌を迅速かつ同時に識別することに成功した。
【プレリリース】金属から出る光の色を用いて食中毒を引き起こす細菌を迅速かつ同時に識別することに成功!

金属から出る光の色を用いて食中毒を引き起こす細菌を迅速かつ同時に識別することに成功!|大阪公立大学
大阪公立大学 公式サイト

これまで培養法の細菌検査では培養に2日間かかり、標識法でも標識の寿命が短い、複数菌種の同時識別が不可能であるなどの問題点があり、迅速な判定は困難だった。



研究では金、銀、銅をナノ粒子(1~100ナノメートル程度の大きさの粒子、ナノは10億分の1)と高分子が化学結合した複合体を作成すると、強い光を散乱することを突き止めた。これはナノ粒子の蛍光発光現象を起こし、光の吸収や散乱が効率的に起こすためと考えられる。
その結果、O26では白、O157は赤、黄色ブドウ球菌は青の散乱光をそれぞれ確認し、検出に成功したという。複合体は抗体がなくても固有の光を散乱するが、それだけでは明るさが足りない。しかし表面に着いた抗体が細菌に結び付くことで、複合体が集団となることで散乱光がより強く発色する。
この手法の特に優れている点は所要1時間以内で様々な細菌を同時検出できる点だ。

研究成果は、米国化学会が刊行する国際学術誌「Analytical Chemistry」に、2022年7月25日にオンライン速報版として掲載された。
細菌種類を迅速に検出できることは対策を立てやすくなるだけでなく、生命の安全に寄与できる。一日も早い実用化が求められている。
参考
金属から出る光の色を用いて食中毒を引き起こす細菌を迅速かつ同時に識別することに成功!
https://www.omu.ac.jp/assets/press_220808.pdf
金属と高分子の粒子複合体、食中毒の細菌を簡単検出 大阪公立大
https://news.yahoo.co.jp/articles/875a0f3c27ed8b7e3ba9b743b3f464b21e7c3aff?page=1
ナノ粒子とは
https://www.ashizawa.com/nanoparticles/what-is-nanoparticle/

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