2025年高齢者人口の5人に1人が認知症に エーザイの早期アルツハイマー薬 迅速承認活用で米FDAに段階的申請を開始

テクノロジー

平成29年度高齢者白書によると、2012年は認知症患者数が約460万人、高齢者人口の15%という割合だったものが、2025年には5人に1人、20%が認知症になるという推計がある。認知症の要因の多くは加齢にあることから、超高齢社会で暮らす私たち誰もが認知症になりうる。他人ごとではない大きな問題であると同時に、家族が認知症になった場合の介護を誰がするのかなど、大きな社会的問題でもある。


「アデュカヌマブ」と「レカネマブ」

エーザイとバイオジェンが開発したアルツハイマー型認知症治療薬には2種類ある。「アデュカヌマブ」と「レカネマブ」だ。
「アデュカヌマブ」は6月7日、米食品医薬品局(FDA)が条件付きで承認を認めると発表した。『アルツハイマー型認知症治療薬』としては世界初である。しかしこの薬は承認に至るまでのバイオジェンとFDAとのやりとりが適正だったか、薬の有効性に懐疑的な見方などで物議を醸し、米大手医療機関はアデュカヌマブを当面は患者に使用しない方針を表明している。
それに対し次に開発された「レカネマブ」は頭痛や吐き気などの有害事象が少ないという特徴があり、家庭内で介護者などが注射する療法が確立されれば、通院が必要なアデュカヌマブと比べて使いやすくなる。そのため積極的に治験を実施している。

早期アルツハイマー薬「レカネマブ」

エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンは28日、共同開発しているアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)への新薬承認申請手続きを開始したと発表。臨床試験(治験)などのデータを可能なものから段階的に提出し、早期の承認を目指す。「レカネマブ」はすでに6月にはFDAの承認を受けている。レカネマブは別の抗体を使った薬で、同月にFDAから迅速審査の対象に指定されていた。
今回の申請は、主にアミロイドβの脳内蓄積が確認された早期アルツハイマー病患者856人(軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー)を対象とした臨床第Ⅱb相試験(201試験)。治験はこの後の第Ⅲ相が終了すると承認申請となる。


臨床状況は、レカネマブ 10mg/kgを2週間に1度、18か月投与した結果、
①PET 画像で測定した脳内アミロイドβ蓄積量 (SUVr)が、ベースライン1.37 ユニット(平均)から 0.306 ユニット減少
②被験者の 80%以上は読影診断により脳内アミロイド陰性化が確認

治療群間および個々の被験者レベルで、脳内Aβ減少の程度と指標(ADCOMS、CDR-SB、ADAS-cog)における臨床症状の悪化抑制は相関しており、アミロイドβは「臨床的有用性を予測するサロゲートマーカーになり得ることを示唆している」としている。
現在、早期アルツハイマー病を対象とした臨床第3相試験「Clarity AD」が進行中で、すでに3月には1795例の被験者登録を完了しているという。

製薬会社のコメント

エーザイの内藤晴夫CEOは、「アルツハイマー病は、当事者様とご家族だけでなく、社会にとっても、極めて大きな負担を強いる疾患だ。さらなる治療体系の早期の確立が強く期待されている。BLA によりかかる治療体系の確立に向け新たなマイルストーンを刻むことができると考えている」とコメント。



バイオジェンのミシェル・ヴォナッソスCEOは、「患者さんとそのご家族が、アルツハイマー病の複数の治療オプションから選択し、利用できるようになることが我々のビジョンだ。今回の迅速承認制度のもとでの レカネマブの段階的申請は、その重要な一歩だ。我々は、脳内 Aβをターゲットとした治療法は、AD の診 断と治療を変える可能性があると信じている」としている。

認知症は誰しも避けては通れない

最新の発表によると

①2021年9月現在の高齢者人口は3,640万人で高齢者人口率は29.1%
②2021年の100歳以上の高齢者の人口は8万6510人
③世界の高齢者人口で日本は第1位(2位イタリア、3位ポルトガル)
④2020年の日本の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳
⑤世界の平均寿命で日本は第1位(2位スイス、3位韓国)
⑥2025年高齢者5人に1人が認知症を発症する予測が出ている
⑦WHOによると、世界では3秒に1人が認知症になっている

【出典】公益財団法人 日本ケアフィット共育機構(2021年版)
https://www.carefit.org/liber_carefit/dementia/dementia01.php


おわりに

アルツハイマー病の予防は、一次予防の『発症させない』、二次予防の『発症を遅らせる』、三次予防は『進行を遅らせる』の3段階がある。これまでは受診しても経過観察するしかなく、二次予防のための治療薬もなかった。そのため歯がゆい思いをしてきた。「レカネマブ」が第Ⅲ相を終了し承認されたら、治療にとっては画期的な武器となろう。これからも紆余曲折はあるだろうが早期の承認を期待したい。

参考
エーザイ 早期アルツハイマー病治療薬候補レカネマブ 迅速承認活用で米FDAに段階的申請を開始
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=71870
アルツハイマー薬の申請開始 米で早期承認目指す―エーザイ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021092800416&g=eco
【エーザイ】アデュカヌマブ、日本において新薬承認を申請
https://www.eisai.co.jp/news/2020/news202083.html
【エーザイ】ADUHELM™(アデュカヌマブ) アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一の治療薬として米国FDAより迅速承認を取得
https://www.eisai.co.jp/news/2021/news202141.html
承認過程を調査へ エーザイのアルツハイマー薬―米厚生省
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021080500375&g=int
承認めぐる波紋収まらず エーザイのアルツハイマー薬
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021071700314&g=int
エーザイ、アルツハイマー治療薬レカネマブの方が体調への影響軽い
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-12/QW4LPUT0G1KW01
世界で初めてFDAが承認!エーザイとバイオジェンが開発した「アルツハイマー型認知症治療薬」の気になる中身
https://news.yahoo.co.jp/articles/39ec6c652b902dcc7dfdac449d68931cfefc1e1f
エーザイ認知症新薬、日本承認に立ちはだかる「2つの壁」
https://diamond.jp/articles/-/278570
第3章 認知症の診断 4.認知機能検査
https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/h30-3-4.html

コメント

タイトルとURLをコピーしました