脳の萎縮が確認されている新型コロナを「2類相当」から「5類」になると個人の負担が増加する恐れが

健康

新型コロナウイルス第6波の新規感染者数が全国的に減少している。「ステルスオミクロン」の影響もあってか、減少率が緩やかだ。次に第7波が来るかはわからないが、様々な派生株が世界中で確認されているため油断は禁物であろう。

現在は新型コロナワクチン接種やホテル療養、入院には公的負担があり、私的な費用はかからないが、感染症法が現在の「2類」から「5類」に変更されると行政の関与は大幅に弱まり「自己責任」が求められる側面がある。これまでの研究から脳の萎縮と記憶に関連する部分の灰白質が減少が見られており、新型コロナウイルスは「ただの風邪」ではなく、今後も非常に厄介な感染性の高い病気であるといえよう。

脳の萎縮が確認された新型コロナ

3月11日、新型コロナウイルスに感染すると脳に変化が起こる可能性があることが、イギリスなどの研究で明らかになり、学術誌「Nature」に掲載された。
研究チームは、感染前後のMRI(磁気共鳴断層撮影)の画像にかなりの違いがあることを発見。軽症でも、脳全体の大きさがわずかに縮小し、嗅覚と記憶に関連する部分の灰白質が減少していた。
研究者らは、この変化が永続的なものかどうかは分からないものの、脳は回復する可能性があるとも強調しているという。



イギリスのUKバイオバンク計画では、15年間にわたり50万人の健康状態を追跡調査してきた。パンデミック前のスキャン画像の記録も残っており、新型コロナのパンデミック前後で、健康にどのような長期的影響を与えるのかの影響調査ができたという。
調査は次のように実施した。

① 新型コロナウイルスに感染した401人に、感染から平均4カ月半後にMRI検査を実施
② COVID-19に感染していない384人に、同様にMRI検査を実施


その結果、

① COVID-19に感染したことのある対象者の脳全体の大きさは、0.2~2%収縮していた
② 脳のうち、嗅覚をつかさどる領域や、記憶に関する領域の灰白質が減少していた
③ 最近になって新型ウイルスの症状から回復した人は、複雑な知能タスクをこなすのに少し苦労した

しかし、この変化が回復するかどうかは今後の長期的な検査が必要であろう。
今回の灰白質の減少に関して、脳の嗅覚領域で顕著に表れている。これはこれまで判明している新型コロナの「嗅覚異常」を裏付けるものとなった。しかし、ウイルスがこの領域を直接攻撃するのか、それとも新型ウイルス感染者が嗅覚を失ったことで嗅覚領域が使用されなくなった後、細胞が死滅するのかは不明だという。
このスキャン調査は、本来の新型ウイルスとアルファ株が流行し、嗅覚と味覚の喪失が主な症状だった時に実施されたこともあり、新型ウイルスのすべての変異株が、このような損傷を引き起こすのかどうかも分かっていない。



UKバイオバンクの主任研究者を務めるナオミ・アレン教授は、「今回の研究によって、新型ウイルス感染が認知機能や、「ブレイン・フォグ」と呼ばれる症状、脳の他の領域に及ぼす影響について、あらゆる質問が浮かび上がり、その結果、他の研究者が追跡調査できるようになった。特に、これらの影響を軽減する最善の方法の研究に集中できる」と語った。
ユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドン神経学研究所のデイヴィッド・ウェリング教授も、COVID-19以外の健康関連の習慣が、今回の研究で脳に見られた変化に寄与している可能性があると指摘する。
「認知機能の変化も小さなもので、日常的な機能との関連性は不明だ。また、この変化は必ずしも全ての感染者に見られるものではなく、より最近の変異株とは関係ない可能性もある」
研究を主導した英オックスフォード大学ウェルカム統合神経画像センターのグウェネル・ドゥオー教授は、「私たちは主に軽度の症状について研究していたので、患者と非感染者を比較した時に、脳にいくらかの差異が実際に生じていたことや、脳の変化の度合いを見ることができたのは、かなり意外だった」と述べている。

現状「2類相当」から「5類」への引き下げ否定

岸田総理大臣は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを現在の「2類相当」から季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げる見直しについて「外出自粛要請や入院措置が出来なくなる」と述べ、改めて否定的な考えを示している。
しかし国会議員の中からは引き下げるべきだという意見が与野党から出ているという。

感染症法における類別と名称
1類
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱,痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
2類
急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)、鳥インフルエンザ(H5N1)、中東呼吸器症候群(MERS),鳥インフルエンザ(H7N9)



3類
コレラ細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
4類
E型肝炎ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)、A型肝炎、エキノコックス症、黄熱、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、サル痘、ジカウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、腎症候性出血熱 、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、炭疽、チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)を除く)ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ症、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱

5類
アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎(E型及びA型を除く)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌、侵襲性髄膜炎菌、侵襲性肺炎球菌、水痘(入院例に限る)、先天性風しん症候群、梅毒、播種性クリプトコックス症、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、風しん、麻しん、薬剤耐性アシネトバクター感染症
新型コロナは特性が十分には分からなかったので政令で2類扱い

新型コロナは海外での急速な広がり、ウイルスの危険度の研究が間に合わなかったため、政府が暫定的に「2類」に分類し、「入院勧告」「無症状者への適用」「外出自粛」「医療費の公的負担」の処置が行われた。この処置は「1類」の「入院勧告」「無症状者への適用」「医療費の公的負担」や新型コロナ以外の「2類」の「入院勧告」「医療費の公的負担」を上回る強いものである。



緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等の強い処置が効果を上げており、医療の負担が減少しつつあり、オミクロン株の重症化率の低さも相まって、「5類」への引き下げを求める声が上がっているという。
「5類」扱いとなれば一般の保険適用となり、公的負担がなくなるためインフルエンザとあまり差がない扱いとなる。

「5類」となっても新型コロナウイルスはまん延する

依然新型コロナウイルスは脅威だ。たとえ「5類」に分類されても感染力は強く、死亡する可能性の高い普通の感染症として存在する。新型コロナワクチンを接種しても感染しにくくなるだけで感染しないわけではない。
懸念の一つに各家庭が負担する医療費の増加。コロナの治療薬は最近開発されたものが多く、ジェネリック 医薬品(後発医薬品)が少ないのも相まって、治療には数万円~数十万円が必要とされる。公的医療保険を使っても相当な支払いが必要となり「受診控えが起きてもおかしくない」とみられる。



すでに入院や積極的疫学調査の対象者を絞るなど、一部の措置は「5類相当」になっており、治療に携わっている医師は「感染症法上の位置付けは当面維持した上で、柔軟な運用で対応する方が現実的だ」と説く。さらに筑波大学客員教授の徳田安春医師は、「5類」への見直しに一定の理解を示すものの、「医療費の公費負担や自宅療養者への配食などは継続すべきだ」と条件を付ける。検疫などの水際対策が弱まることも危惧しており、「毒性や感染力の強い新たな変異株が出てくる可能性がある。まだ警戒を解いていい段階ではない」と指摘している。
今後政府が新型コロナウイルスを、どのような位置づけにするか、また医療費の公費負担をどうするのかなど、見守っていきたい。

参考
新型コロナウイルス、脳への影響が明らかに=英研究
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d65f0e929834a9590f547b9971655ae25e76367
<Q&A>新型コロナを「2類相当」から「5類」に引き下げると何が変わる?
https://www.tokyo-np.co.jp/article/161261
【速報】総理 新型コロナの分類「2類相当」から「5類」への引き下げ否定
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000245145.html
新型コロナの感染症法「5類」引き下げの課題は 医療費の負担増え、医師「受診控え起きかねない」
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/909933

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