ロックアウト99日目で選手会側のほぼ希望通りのMLB労使交渉妥結 大谷、鈴木、菊池が交渉開始

エンターテイメント

新労使協定を巡る米大リーグ機構(MLB)と選手会の交渉が3月10日(日本時間11日)、ロックアウト(施設閉鎖)から99日目で基本合意に達した。今後はオーナー側の承認を経て、正式契約になる。合意に達するまでには激しいやり取りがあり決裂寸前であったが、急転直下、合意に達した。

ストライキを含む労使紛争の中断期間としては、大リーグ史上2番目の長さだという。今後、メジャー移籍を目指す広島の鈴木誠也外野手(27)やマリナーズからFAとなった菊池雄星投手(30)ら、まだ移籍市場に残る200人以上の選手との交渉も再開される。また大谷は4月7日の開幕投手を務めることが濃厚となっている。

4月7日開幕、フルシーズン(162試合)実施

シーズン開幕が遅れることが予想され、日程短縮なども検討されていた。労使交渉が合意に達したことで、球団施設の使用が可能となり、調整を行う。
スプリングトレーニングは3月13日(同14日)にアリゾナ、フロリダ両州でスタートし、オープン戦は3月17日(同18日)に開始される見込み。



開幕は本来より1週間遅れの4月7日、当初の最終戦から3日間延長を含め、ダブルヘッダー(9イニング制)を組みながら162試合フル試合行い、選手への給与も全額が補償されると予想されている。

選手会側が粘り勝ちか

MLBの公式ホームページやAP通信などによると、合意の内容は

① 最低年俸が57万500ドル(約6600万円)から2022年は70万ドル(約8000万円)にアップ、以後26年には78万ドルまで上昇する。
② ぜいたく税が発生する年俸総額は22年は2000万ドルアップの2億3000万ドル(約265億6000万円)、以後年300~400万ドル上げ、26年は2億4400万ドルとする。
③ 新たに設けられた上位100選手に与えられるボーナスプールは5000万ドルとする。他にはプレーオフ進出球団は10から12へ増加。ナ・リーグでも指名打者制を採用など。
④ ドラフト会議対象外のドミニカ、キューバなど選手に対する国際ドラフトについては先送りされた。

選手会側が粘った理由として、過去2回の労使交渉の失敗が挙げられている。これまでの2回の交渉で安易な譲歩を重ねた結果、選手年俸の低下、意図的にチームを低迷させるタンキング、若手選手のFA権取得を遅らせるサービスタイム操作などが横行した。選手会側は今回の労使交渉で、こうした現状を改善させることが唯一にして最大の目標と挙げていたため譲歩をギリギリまで行わなかった。
その目標はかなりの部分で達成され、戦力均衡税の課税ラインが引き上げられ、若手選手向けのボーナスプール制度創設も決定。ドラフトには新たにロッタリー制度(指名抽選制)が導入される。これまでのように、30球団最低の成績を残せば自動的に全体1位指名権を得られるわけではなくなるので、タンキングに一定の歯止めがかかることが期待できる。



一方、ロックアウトを仕掛けたオーナー側は、妥協せざるを得なかった。戦力均衡税についてエンジェルスを含む一部のオーナーは「1ペニーも上げさせない」と強硬に主張していたが、結果的には2000万ドルの引き上げに同意した。また最後に持ち出したインターナショナル・ドラフト導入も継続協議となったという。
オーナー側が譲歩したのは、情報を自由に発信できるSNS時代となったいま、かつてのように子飼いの記者を通じて選手会を悪者扱いする構図を作り出すことが成功しなかったことや、開幕延期について、「オーナー側に責任がある」と考えるファンが「選手会に責任がある」と考えるファンの約2倍に達するという調査結果などもあり、オーナーの思い通りにいかなかったことが挙げられる。
これらのこともあり、前日に大きな争点に発展した国際ドラフトに関して、この日は双方が条件付きで譲歩したという。

ぜいたく税の課税基準額、年俸調停の資格を得る前の若手選手に支給するボーナスプール、メジャー最低年俸などの主要項目について機構側の最終提案に選手会が投票で多数決をとり、賛成26票、反対12票の賛成多数で合意が決定した。
また米メディアの報道によると、メジャー30球団のオーナーも最終案に対して投票を行い、賛成30票の全会一致で正式に新労使協定が締結された。

凍結されていたFA市場が動く

労使交渉が妥結したことで今後一気に交渉が進展することが考えられる。
広島の鈴木誠也は自身のインスタグラムで「実はLAに来てました」と報告し、すでにロサンゼルス入りしていることが明らかになった。
米メディアもその動向に興味を持っており、鈴木に関しては走攻守がそろい、年齢が27歳と若く、FAになった他の外野手と比べて、高額ではないということで人気が上昇を続けているという。
獲得に動いていると噂されている球団は、レッドソックス、フィリーズ、マリナーズ、ジャイアンツ、メッツ、レンジャーズ、パドレスなどが挙がっている。契約は4~5年の複数年で平均年俸は1500万ドル(約17億4000万円)前後と予想されているという。



菊池はFAの2番手グループに位置付けられ、先発ローテーションの3番手以降を探している球団が調査しているとされている。メッツ、ヤンキース、ブルージェイズなどが関心を表明しており、ロックアウト前にメディカルリポートを取り寄せたり、代理人に連絡を取っていたと報じられた。

大谷翔平の活躍を期待

エンゼルスの大谷翔平選手(27)は今月13日にキャンプ地へ入り、14日から練習をスタートさせる予定。オープン戦は18日前後から始まる見込みのため、強行日程になることが予想される。
しかし大谷にとって有利になると思われる「新ルール」の改正が、早ければ来季から導入されることもあり、3冠王も決して夢物語ではないと思われる。

「新ルール」とは、

① 極端な内野シフト禁止
近年のパワー偏重の野球に規制をかける狙いで、マイナーリーグや19年に提携する独立リーグで試験導入された、二塁ベースを挟んで両側に内野手2人に制限した形が採用される。このルールのため一、二塁間を3人で守る「大谷シフト」を敷くことができなくなる。
② ベース大型化
各塁のベースサイズを15インチ四方(約38・1センチ)から18インチ(約45・7センチ)四方に拡大する。狙いはスピーディーなプレーの促進。本塁から一塁まで約8センチ、一塁から二塁まで約12センチ短くなるとみられ、昨季26盗塁、内野安打22を記録した大谷の俊足がより生かされる。
③ 投球間隔制限
「大谷封じ」のため様々な変則モーションと投球までの時間が長くなっていた。それに対し無走者の場合は14秒、走者を背負っている際は19秒とすることの変更される。大リーグでは試合時間が増加傾向で、このルールを試験的に導入した昨季のマイナーリーグでは、試合時間が約20分短縮されたという。
大谷のFA権行使は2023年オフから可能に

労使交渉がギリギリで妥結したことは、大谷にとって朗報だ。これ以上シーズン入りが遅れると、FA権を獲得するためのサービスタイム(登録日数)が不足し、FAを行使できる時期が1年遅れるところであった。しかしFA権取得は先延ばしされず2023年オフに可能となった。これを避けられたことは、複数の米メディアが予想した総額4億ドル(約464億円)を超える超大型契約が夢ではなく現実となる可能性が高い。


大谷の「二刀流」シーズン2が開幕か

エンジェルスの地元紙や複数の米メディアが大谷を開幕投手の「大本命」と予想。これが実現すれば日本投手7人目となり、自身メジャー初の大役に前進する。
開幕戦の相手は王者アストロズ。昨季は投手では2試合とも敵地で0勝1敗、防御率6・10。打者では18試合で打率2割5分、5本塁打、7打点。
昨季の大谷の投打同時出場では5打数2安打、1本塁打、1打点という記録。4月7日はリアル二刀流が濃厚といわれている。マウンドと打席でチームに勢いをつけ、同時に全米を興奮と感動で包んでほしい。

参考
MLB労使交渉が合意、4月8日開幕162試合 メジャー最低年俸など主要項目が大筋でまとまる
https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202203110000008.html
MLB新労使協定、最終案に30球団オーナー全会一致賛成 選手会側は賛成26、反対12で合意
https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202203110000093.html
【MLB】新労使協定が正式合意 オーナー満場一致で承認、鈴木誠也&菊池雄星ら移籍市場解禁
https://news.yahoo.co.jp/articles/3e2299f32ed3194bb5b4ae9d55cc5485dbdf88a4
メジャー挑戦の鈴木誠也、FA菊池雄星ら交渉再開へ MLBロックアウト99日目で終了
https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202203110000049.html
【MLB】鈴木誠也、メジャー移籍へ既に渡米 SNSで報告、ロックアウト解除で交渉再開へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8e26a0d242e239416e0ba1a537921d113d2e961
ロックアウト終了でFA市場が活性化 鈴木誠、菊池の移籍先は
https://www.excite.co.jp/news/article/TokyoSports_4054388/
【MLBロックアウト解説】ほぼ望み通りの成果を得た選手会。タンキング抑止策導入はファンのメリットにも<SLUGGER>
https://news.yahoo.co.jp/articles/b5ee248e59feb7def6e9a19bf335c5554c3ace9d
MLB 4月7日に開幕へ 労使交渉に合意「全試合開催」
https://news.yahoo.co.jp/articles/e686e97935e7a2e6baf73d2840df1959d06d183e
難航から急転の大リーグ労使交渉妥結 どうなるFA戦線
https://www.sankei.com/article/20220311-HISTEY3ZANMMXAXGLQ2VUI7ALQ/
大谷翔平開幕投手へ! 急転メジャー「4・8」で合意
https://news.goo.ne.jp/article/tokyosports/sports/tokyosports-4054220?utm_source=live_top&utm_campaign=livesports&utm_medium=news
大谷翔平、3冠も夢じゃない!極端シフト禁止&ベース大型化 23年にもMLB新ルール
https://news.yahoo.co.jp/articles/dc43f5f585b48bf88680b58e7ad88409c491be10

コメント

タイトルとURLをコピーしました