新世代の若者の”人工知能化”とAIによるディープラーニングの有限性と無限性

テクノロジー

新世代の若者とAIの苦手分野が一致しているとの報道がされている。当たり前のようにインターネットから情報を得て、スマホで共有し、気心が知れた仲間との間で情報共有している生活と何らかの共通性があるのだろうか。
現代社会の生活の隅々にまでAIの技術が使われているが、AIにも得意、不得意がある。「デジタル・ネイティブ世代」との共通項とディープラーニングのメリット・デメリットを考えてみたい。

「デジタル・ネイティブ」とは

Wikipediaによると、マーク・プレンスキーが2001年に出版された著書”Digital Natives, Digital Immigrants”内で定義した呼称であり、生まれながらにITに親しんでいる世代を「デジタルネイティブ (Digital Natives)」IT普及以前に生まれてITを身につけようとしている世代を「デジタルイミグラント (Digital Immigrants)」 と呼んだことに由来する。



物心ついた頃から学生時代にかけて携帯電話やホームページ、インターネットによる検索サービスに触れてきた世代を「デジタル・ネイティブ第1世代」、ブログ、SNS、動画共有サイトのようなソーシャルメディアやクラウドコンピューティングを使いこなし青年期を過ごした世代を「デジタル・ネイティブ第2世代」と分類する意見もある。
特徴としては、

①現実の出会いとネットでの出会いを区別しない
②相手の年齢や所属・肩書にこだわらない
③情報は無料と考える
④オリジナルとコピーの区分の消滅
⑤チェーンメールに代表されるインターネットミーム拡散力
⑥スマートフォンの長時間の使用や依存度が高い
⑦ソーシャルメディア上での初対面の人とのコミュニケーションにデメリットを感じる傾向にある

などの特徴があり、インターネットオークションなどでは購入にも売却にも積極的な層であるとされている。さらに、文字や文書を読通するよりは、動画を視聴することを好む世代であり、子育てや勉学等に活用しているケースが見られる。
しかし、教育学者であるウーロンゴン大学のベネットらは、「世代間の差異を強調しすぎる傾向がある」と指摘し、批判的考察が発表されている。

AIと苦手項目が共通

毎年4月になると新入社員が職場に入ってくるが、「デジタル・ネイティブ世代」が苦手とするのが次の3つだといわれている。

① 自ら「考え、質問すること」
② 「想定外」の出来事に対する対処
③ 「電話」対応

生活の至るところでAIの恩恵を受けている現在、生活から取り除くことはできない。
なぜなら知りたいことやわからないことがあると、私たちはまずネットで調べ、「検索」ボタンを押すと、スマホやパソコンは、答えになりそうなものが自動的に表示される。
これにより分かりたいことがすぐ手に入ることで、生活の質の向上に役立っているためだ。
しかしAIは質問を創造し、適切な言葉で表現することが苦手であり、自分の知識を増やすために、適切に質問することは、今のところできない。これは、人間だからこそ為せる極めて難度の高い技術といえる。



さらに最初から想定外を想定し、質問や状況に対処することも苦手としている。
コールセンターなどで実装されている「チャットボット」は、あらかじめ想定されている質問や状況にだけ対処できるように作られている。想定外の質問や未知の状況に遭遇したときは人間が対応するようになっているのが現実だ。
当然、会話の文脈から何を質問されているかを理解し、臨機応変な対応を求められる電話は難しい。特に日本語は主語や述語が省略されることが多く、「あれ」とか「これ」などのさまざまな指示語が何を表しているのかを想像力で補っている。これも人間だからできる高度な技といえよう。

機械学習やディープラーニングでも、まず大切なことを教える作業(タスクやアルゴリズムを組む)からはじめる。新たな社会人にも時間をかけて教える作業が大切であり、分かっていること、分からないこと、想像(創造)させること、適切な言葉を習得させることを意識させることが重要ではなかろうか。規律や統制だけでなく、丁寧に教える企業風土づくりや伝承によって伝えてみては。

日進月歩するディープラーニング

技術の進歩によって、ディープラーニングが商用アプリケーションにも応用されるようになり、AIの研究と応用がさらに進んでいる。これまで技術的に難しかったことがAI技術で可能になってきている。
従来の機械学習は、人間がマニュアルで特徴量を抽出し、回帰・分類モデルを作成してきた。

〇従来の機械学習
生データ→マニュアル操作で特徴量抽出→特徴ごとに分類→出力

ディープラーニングは、特徴量抽出のステップをアルゴリズムの中に組み込むことで、生のデータを与えるだけで、回帰・分類など処理すべきタスク(ディープラーニング)を与えられれば、自動的にその処理方法を学習する。

〇ディープラーニング
生データ→ディープラーニング(自動で特徴量抽出→特徴ごとに分類)→出力

そのため処理が正確で速い。



ディープラーニングが得意なことは次の3つだといわれている。

① 予測すること
② 物体や音声、言語を認識すること
③ 最適化すること

ディープラーニングには膨大な量のデータを必要とします。またそのデータの質が予測データの精度に影響を与えます。

①②は、過去のデータを基にディープラーニングを行い、大量のデータから「こうすればこうなる」という予測モデルを作成し提示する。
一つにモデルとして、”Ledge.ai”が公開している「AIで架空のアニメ画像180万枚を生成するサイト」がある。ディープラーニング学習を使って大量のアニメ画像を学習させているものと思われる。
https://thisanimedoesnotexist.ai/index_jp.html
画像をクリックすると、そのアニメ画像の「すべての創造性レベル」の一覧が表示される。アニメ画像が少しづつ変化しているのが読み取れる。
③は、決まった内容を数理計画法などの数学的手法を使って、最適解を導き出すことに優れている。
これまであった方法をディープラーニングで学習させ、同じようなものを大量に作り出すことに向いているといえよう。例えば、昔からの職人が行ってきた作業やノウハウをディープラーニングで学習させることで、次の世代に伝えることに有効。



半面、アメリカの電気・情報工学分野の学術研究団体であるIEEEが、「ディープラーニングは万能ではない」とするコラムを発表した。特に人命に関わり、説明責任が問われる医療や自動運転は代替が難しいといわれているという。
自動運転の技術は、レベル3(条件付き自動運転。緊急時はドライバーが必要)。レベル4(高度自動運転。ドライバーがいなくてもOK)は難しい。なぜなら人より判断の優れたAIでも、エラーをゼロにすることが困難であること。現状では「なぜAIがそのような判断に至ったのか」というプロセスの説明が完全にはできない。
また、学習を重ねていくと、これまで学習したものの一部が突然崩壊する現象が起きている。そのため、医療のような生死に関わるアプリケーションにディープラーニングを応用するのはリスクが高いとIEEEは主張している。

おわりに

ディープラーニングは今後も発展し、生活の様々な場面で使われていく。その意味では”無限性”があるといえるが、AIがどうしてその判断をしたのかを説明できず、またいつデータが崩壊するような事態ななるかもわからない。そのため今後の活用場面は有効に使える部分だけの”有限性”が現れ始めた。
今後も豊かな社会を実現するためには、AIと人間は、それぞれの長所と短所を見極め、補い合いながら社会をつくっていくことが大切であろう。

参考
wiki デジタルネイティブ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96
人工知能と苦手分野が一致⁉ “人工知能化”する若者たち
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91200?imp=0
「ディープラーニングは万能ではない」という主張、次世代のAIを支える理論とは?
https://gigazine.net/news/20220111-deep-learning-ability/
ディープラーニングは万能なのか
https://www.datarobot.com/jp/blog/is-deep-learning-almighty/
なぜNTTデータは「AI万能説」に異論を唱えるのか
https://www.businessinsider.jp/post-163582
AIで架空のアニメ画像を生成するサイトが話題に、画像はなんと180万枚も
https://ledge.ai/this-anime-does-not-exist-re-posting/

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