東芝がフィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高効率を達成!自然に優しいこれまで設置できなかった場所にもOKに

テクノロジー

東芝は2021年9月10日、東芝が開発を進めているフィルム型ペロブスカイト太陽電池の世界最高エネルギー変換効率となる15.1%を実現したと発表。さらにペロブスカイト太陽電池として「世界最大」サイズの703cm2モジュールを維持しながら成膜プロセスの高速化と変換効率の向上に成功したと発表した。2023年度までに研究開発を完了し、2025年度から製品化するという。



【既出記事】紙のように印刷して作れる、安価で軽い「ペロブスカイト太陽電池」
【既出記事】「カプサイシン」がペロブスカイト太陽電池の変換効率を19.1%→21.88%に強化!

ペロブスカイト太陽電池とは


ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト結晶を用いた太陽電池のこと。従来の色素の代わりにペロブスカイト材料を用い、正孔(ホール)輸送材料としてのヨウ素溶液の代わりに、Spiro-OMeTADなどを使用する特徴がある。(wiki ペロブスカイト太陽電池
この太陽電池は2009年に桐蔭横浜大学 大学院工学研究科 教授の宮坂力氏らによって開発された。当時の変換効率は3.9%であったが、これを東芝は世界最高エネルギー変換効率となる15.1%を実現した。

ペロブスカイト太陽電池のメリット・デメリット
・メリット
①発電層を含む厚みが結晶シリコン太陽電池の1/100程度と非常に薄いため、結晶シリコン太陽電池より軽量化できる。シリコン系太陽電池は平均的な4kWの発電パネルの総重量は250kg以上あり、家の柱や壁がその重量に耐えられる家でないと設置できなかった。しかしペロブスカイト太陽電池はフィルム状の基板に塗布するため非常に軽い。
波長800nmまでの可視光を吸収できる性能を持つため、曇りや室内などの低照度下でも発電できる。シリコン系太陽電池は太陽光の下で22%(1000W/m2あたり)もの発電効率があっても室内光では9%程度(200 Lux)まで落ちる。その点、ペロブスカイト太陽電池は太陽光の下では15%(1000W/m2あたり)の発電能力でも室内光では26%(200 Lux)という高い発電能力がある
③製造では、インクジェットプリンターで印刷するように、フィルム上へ塗布して作成(メニスカス塗布)できるため、既存の太陽電池よりも低価格になる。これにより輸送コストも設置コストも削減できる。
④フレキシブルで軽量なため、平面だけでなく、シリコン系太陽電池では不得意だった曲面の壁にも設置することが可能。発電場所を屋根の上だけでなく、壁に設置することで家まるごと発電も可能。
⑤ペロブスカイトの膜厚を制御することにより、半透明も可能。大型のインクジェットプリンターを使って窓ガラスの表面に吹き付ける(印刷)することで、窓そのものを太陽電池パネルにできる。



・デメリット
①ペロブスカイトの表面構造がむき出しの状態で空気中に放置すると劣化しやすいという欠点がある。そのため表面を保護し劣化を抑える材料の研究が必要。
②製造工程で塗布パターンを自由に変更できる反面、高効率の発電をするためには材料をドット状に塗布・製膜後、塗布面内で均一に結晶化させる必要があり、塗布量・速度を精密に制御することに課題がある。
使用する材料によっては、履歴効果と呼ばれる「ヒステリシス現象」が起こることで、光照射下における発電が安定しにくい。

東芝の太陽電池の特徴

東芝のペロブスカイト太陽電池の優れた点は

①長波長光を透過する亜酸化銅(Cu2O)太陽電池を開発
②Cu2O+結晶系Siという2重構造(タンデム構造)により従来の2倍の効率変換を達成
③従来の高効率GaAs系太陽電池と比較して格段に低コスト

などがあげられる。



今回の東芝の発表は、受光部サイズの面積が100cm2以上のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールで世界最高となるエネルギー変換効率15.1%を達成するとともに、メニスカス塗布技術による1ステッププロセスで生産性も向上している。今後、エネルギー変換効率を18%以上に高め、有機系太陽電池の課題である耐久性を15年以上に伸ばし、2025年度の製品化の段階では、シリコン系太陽電池と同等の発電コスト(1kWh当たり20円)を目指している。

政府のグリーン政策で太陽光発電の比重が高まる

政府が策定した「2050年カーボンニュートラルグリーン成長戦略」では、電力の再生可能エネルギー比率を2018年の17.4%から2050年に50~60%まで高める必要がある。この数字を達成するには、従来のシリコン系太陽電池の設置を増やすだけでは不足であり、都市部のビルや軽量屋根の工場などこれまで太陽電池を設置できなかったところに展開可能なフィルム型太陽電池が必須になると東芝は考え、事業の前倒しを図ってきた。



既に海外ではペロブスカイト太陽電池の実用化が進み、ポーランドのサウレ・テクノロジー(Saule Technologies)は商業生産を開始した。国内においてもパナソニックがガラス基板ではあるが804cm2でエネルギー変換効率17.9%を達成している。
東芝(東京芝浦電気株式会社)の歴史は古い。1875年に初代田中久重が東京・銀座に電信機工場を創設し、1939年に東京芝浦電気株式会社に商号変更して以来の老舗メーカーである。社内で保有している技術者やアイデアはこれからも日本の産業に必要な人材でありメーカーであろう。東芝はこれからも負けられない戦いを挑んでいくこととなる。
「技術の東芝」にはこれからも頑張ってほしい。

参考
【東芝】次世代太陽電池開発
https://www.toshiba-energy.com/transmission/file/09.pdf
【東芝】塗って作る、軽くて曲がる電池!? ペロブスカイト太陽電池の可能性
https://www.toshiba-clip.com/detail/p=193
東芝がフィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高効率、新開発の成膜法で実現
https://news.yahoo.co.jp/articles/79efdb0fc03eb27c8a3ca1534e4c105362e80f6c?page=1
東京を夢の発電所に変えるか、東芝のペロブスカイト太陽電池
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05504/
wiki ペロブスカイト太陽電池
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%9B%BB%E6%B1%A0
wiki ペロブスカイト構造
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88%E6%A7%8B%E9%80%A0
<研究最前線>実用化は目前!塗って作れる次世代の有機無機複合太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは
https://m-hub.jp/chemical/1999/98-1
wiki 東芝
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E8%8A%9D

コメント

タイトルとURLをコピーしました