これまで海外メーカーに独占されてきた新型コロナワクチン。そのためワクチン接種時期が他の国より数ヶ月遅く始まった。日本人の真面目さから粛々と自分の番を待ったため混乱もなく実施することができ、1回目の接種を終えた割合は79.4%、2回目の接種を終えた割合は77.7%と高い。世界的に見ても高い割合を示しており、ワクチン 少なくとも1回接種した人の割合では中国・韓国に次いで3番目に位置している。
【NHK】世界のワクチン接種状況
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/world_progress/
現在、新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」が世界的に流行しており、第3回目の接種が日本でも行われようとしている。
しかし「オミクロン株」が新型コロナウイルスの最後の変異株であるとは言い切れず、今後新たな変異株が出現する可能性は残されている。
早期の治療を行うためには、国産の新型コロナワクチンや治療薬開発が求められてきた。
塩野義製薬は、11月中に新型コロナウイルスワクチンの最終段階の臨床試験3本を開始する。すでに承認されているワクチンと中和抗体価などを比較する治験、ファイザー製などを2回接種ずみの人に対する追加接種治験、発症予防効果をプラセボと比較する治験を国内外で実施する。
一方、先ごろ開始した第2段階の国内治験は、目標とする3000人の登録が11月上旬には完了する見込み。年内の承認申請と年度内の供給開始を目指すという。
さらに10月20日に第2段階に当たる第2/3相臨床試験(P2/3)を国内で開始。開始4日間で2000人を超える登録が完了した。12月にも速報データが出て、年内にも承認申請手続きを行うという。
12月7日に塩野義製薬はワクチン学会に対し、国内第1/2相臨床試験結果を報告した。
②本ワクチンを2回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性の結果から、抗原タンパク量の至適用量を検討するとともに、各指標を接種後1年間追跡評価を行う。
②2回接種2週後から、回復者血清と同程度の中和抗体価の上昇が確認された。
③Th1反応およびTh2反応はともに促進されたが、Th1/Th2バランスはTh2優位にはならなかった。
④国内第1/2相臨床試験については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development: AMED)の支援を受けて行っている。
⑤これらの結果から、国内第2/3相臨床試験および国内追加免疫試験を実施しており、今後の承認申請に向けて、厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)等と協議を行う。
【塩野義製薬プレリリース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の 第1/2相臨床試験結果に関する学会発表について
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2021/12/211207.html
田辺三菱製薬は12月17日、カナダの子会社が開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、現地で承認申請したと発表し、2021年度中の供給開始を目指すという。日本においても、第1/2相臨床試験を2021年10月から実施中であり、カナダ申請に用いたデータに日本の臨床試験結果を加えて、2022年3月にも厚生労働省に承認申請し、22年度中の実用化を目指す。今後はWHO、米国、英国への承認申請も行う予定となっている。
北アメリカなどで行った最終治験の中間解析の結果、発症予防効果は71%と他の新型コロナワクチンと同等の予防効果を発揮した。変異株のデルタ株やガンマ株への有効性も確認されたという。さらに2回接種後に38度以上の発熱があった人は10%未満で、ほかに重大な副反応は確認されていない。
今後、オミクロン株に対するMT-2766の抗体反応確認試験を実施予定であり、その他、MT-2766、mRNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチン既接種者に対するブースター試験を早期に実施できるよう検討を進めているという。
これまでのワクチンは大きく次の3つの方法で生産されている。
②病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を失わせた(不活化、殺菌)ものを原材料として作られる「不活化ワクチン」
③病原体となる細菌が作る毒素だけを取り出し、毒性をなくして作られる「トキソイド」
これまでのワクチン製造方法ではウイルスや細菌などを実際に培養するため、生産に多くの時間を要する。田辺三菱製薬のワクチンは、植物由来のウイルス様粒子(Virus Like Particle / VLP)であるため外観はウイルスそのものだが、内部にウイルスの遺伝子情報を持たないため、体内に入ってもウイルスのように増殖しない。そのため安全性にも優れ、植物を使用して製造することで、短期間で大量生産が期待できるという。また、冷蔵(2~8℃)での保存・流通が可能であるため、冷凍技術や電力が不安定な場所でも使いやすい。
塩野義製薬は12月20日、開発中の新型コロナウイルス感染症の飲み薬について発表し、変異株のオミクロン株にも有効性が期待できることを明らかにした。年内に厚生労働省に承認申請することを目指し、最終段階の臨床試験(治験)を実施予定。
開発中の飲み薬は自宅などで療養する軽症者向けの錠剤タイプ。1日1回、5日間服用を想定している。試験管での実験ではあるが「オミクロン株」に対してもウイルスの増殖を抑えることができた。重症化を防ぎ、発熱やせきなどの症状を改善できると話している。
同社は9月から、飲み薬について2千人を対象にした最終治験を実施しており、来年3月末までに100万人分の生産を完了させる計画で取り組んでいる。
日本でも少しずつ新型コロナ感染者が増加しており、現時点では国内で確認されてはいないもの、いつ市中感染が出てもおかしくない状況になりつつある。できるだけ早期の実用化を切に望む。
参考
オミクロン株への有効性期待 塩野義が開発中の新型コロナ飲み薬
https://www.asahi.com/articles/ASPDN6Q4HPDNPLFA00K.html
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の 第1/2相臨床試験結果に関する学会発表について
https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2021/12/211207.html
塩野義製薬、月内にコロナワクチン最終治験3本、年内承認申請めざす
https://www.chemicaldaily.co.jp/%E5%A1%A9%E9%87%8E%E7%BE%A9%E8%A3%BD%E8%96%AC%E3%80%81%E6%9C%88%E5%86%85%E3%81%AB%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E6%9C%80%E7%B5%82%E6%B2%BB%E9%A8%93%EF%BC%93%E6%9C%AC/
田辺三菱のコロナワクチン、カナダで承認申請 植物由来は世界初
https://www.asahi.com/articles/ASPDK54L1PDKPLFA003.html
新型コロナウイルス感染症ワクチン候補MT-2766 第2/3相臨床試験の第3相パートについて~変異株が優勢な環境下で良好な有効性と安全性を確認~
https://www.mt-pharma.co.jp/news/2021/MTPC211207.html
世界初の植物由来COVID-19ワクチン候補MT-2766 カナダにおいて承認申請を実施
https://www.mt-pharma.co.jp/news/2021/MTPC211217.html
VLPワクチンの技術
https://www.mt-pharma.co.jp/develop/vlpvaccine.html
NHK新型コロナ ワクチン情報一覧
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/vaccine/
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