日本の産業は石油・石炭・天然ガスを中心とした化石燃料に依存している。世界的に脱炭素社会に向けた機運が高まる中、政府が大気から直接、二酸化炭素(CO2)を分離・回収する「DAC」について、関連技術の開発支援を進める目的で2兆円の基金を活用することが5月8日に分かった。
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2020年の日本国内の自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は、前年(2019年)の18.5%からおよそ2ポイント増加し20.8%し、さらにに2020年1-6月でみると23.1%まで増加している。
しかし67.2%は化石燃料(石炭31.6%、石油4.0%、天然ガス31.6%)による発電であり、多くのCo2を排出している。
自然エネルギー財団より
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20200925.php
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また自動車においてもEVの新車販売は僅か1%未満にとどまっており、EV車が売れないのは販売価格が高い上、短い航続距離と長い充電時間、充電スタンドの不足が重なり、販売が伸びない。仮にEV化が進んだ場合でも、夏場や冬場の電力問題(エアコン使用のため電力需給が逼迫している)が解決できなければ十分活用できないことも考えられる。
電力不足に対応するため、各電力会社は発電所の建設が求められるが、コストの安い化石燃料で発電すると多量のCo2排出、建設コストがかかり天候に左右されるクリーンな自然エネルギーにするかという2者択一の選択となり、ジレンマに陥ることとなる。
一つの解決法としてCo2を直接回収する技術を開発する。二酸化炭素(CO2)を分離・回収する「DAC」について、関連技術の開発支援を進め、脱炭素技術開発などを支援する2兆円の基金を活用するという。
すでに世界各国でCo2回収技術の開発が進んでおり、日本でもCo2分離・回収技術は研究されてきた。平成27年6月22日には(公財)地球環境産業技術研究機構化学研究グループが「次世代火力発電の早期実現に向けた協議会(第2回会合)」の中で、「CO2分離・回収技術(固体吸収材、分離膜)の開発動向」というレポートを発表している。
Co2と結びつきやすい化学物質(吸着剤:アミン化合物)を溶媒(水)に溶かしたり、多孔質の素材に混入させる固体式などで反応しやすくする。分離した後、加熱や減圧でCo2を回収する.固体式のメリットとして比較的低い温度で分離・回収ができ、建設コストが安い。
・膜分離法
Co2を選択的に投下するイオン交換膜などを用いて空気中からCO2を分離する。分子サイズはH2が0.29nm、Co2が0.33nmであり、同時に分離・回収したH2は発電等に使う予定になっている。
・深冷分離法
Co2が含まれた混合ガスを冷却液化で蒸留・部分凝縮し、Co2をドライアイスにして分離する。コスト面からO2などをを分離する技術と組み合わせる方が効率が良い。
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Co2の分離コストは、濃度の高いプラントから供給された研究段階で2000円/t程度の見込みであるが、実用化するためにはコストを1000円/t程度まで下げる必要がある。
さらに2030年度までに政府目標として2013年度比で46%削減する目標を掲げており、大気中のCo2濃度(0.04%)からの分離・回収技術を開発するにはまだ時間がかかると考えられる。現状では十数%より低濃度の大気からの分離は技術的に難しいが、開発支援により濃度10~数%程度からの分離・回収技術を確立し、今後の技術革新の足がかりとする事としている。
今後の技術革新に期待が大きい。
参考
大気中のCO2直接回収技術を2兆円基金で支援へ 政府
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0d1c8fdf8847716f79918a471916a68b8e211de
自然エネルギーの比率が2020年1-6月で23%に上昇、2030年度の目標に到達
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20200925.php
RITE10周年記念パネル 「次世代火力発電の早期実現に向けた協議会(第2回会合)」
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/jisedai_karyoku/pdf/002_02_03.pdf
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