日本でも新型コロナウイルスの増加が急増し、7月15日23:59時点で10万3311人(NHK集計)となった。今後も増加が予測されており、予断を許さない。新型コロナも中国でコウモリからヒトに感染し広まったといわれている。
日本政府も「人獣共通感染症」が広がることを警戒し、JICA(国際協力機構)に「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の疫学に関する研究」プロジェクトを立ち上げるなど、感染対策に乗り出している。
人獣共通感染症(ズーノーシス:zoonoses)は、「ヒトと脊椎動物の間を自然に伝播しうるすべての病気又は感染症」のことで、動物由来の感染症を指す。この感染症はペット(犬、猫、モルモット、ウサギ、小鳥ほか)や家畜(牛、馬、豚、山羊、鶏ほか)などの身近な生き物、地域に住み着いている野生動物(ネズミ、鳩、カラス、コウモリ、サル、鹿、クマ、は虫類ほか)、学校などでの飼育動物、ラット喉の実験動物から標本などの展示動物に付着して感染させる場合もあるという。
食品安全委員会のHPに詳しく解説されているので、これを参考にすると良い。
【食品安全委員会】人獣共通感染症(解説)
これまで知られていなかった新興感染症が毎年のように出現しているため注意が必要だ。
2022年7月14日、WHO(世界保健機関)は動物からヒトへ、ヒトから動物へ伝播(でんぱ)可能な「人獣共通感染症」の脅威が高まっており、2012~22年の10年間の流行回数は、2001~11年の10年間と比較して63%増加したと明らかにした。
WHOの分析によると、アフリカでは2001~22年、病気の流行などの「公衆衛生上の事象」が1843件確認され、そのうち30%がエボラ出血熱やデング熱、炭疽(たんそ)菌、ペスト、サル痘などの「人獣共通感染症」の流行だったという。
流行の原因をWHOのマシディソ・モエティ アフリカ地域事務局長は、アフリカの都市化の中で交通網が整備され、都市間移動が容易となり広範囲に流行することが可能になったためと指摘している。今後もアフリカが「新興感染症の温床」になる恐れがあると警告した。
欧米を中心に「サル痘」に関する報告が相次いでいる。今年に入って欧米など59の国・地域で1万845人を越える人々が感染しており、韓国やシンガポール、台湾でも感染者が確認されいるため、海外旅行を計画している人は注意が必要となる。また夏休みには外国人旅行者が日本にもやってくることが想定されており、我々も今後日本にも入ってくることを考え、それに備えることが必要であろう。
【厚生労働省】サル痘について
サル痘(厚生労働省研究班)
「サル痘」も増加傾向にあるが、体全身に特徴的な発疹が出るので、肌が触れ合うような行為や感染した人との近距離で会話し飛沫を浴びたり、性的な接触をしたりしなければ感染の可能性はあまり高くなく、事前に発疹や水泡ができていないか確認するなど、注意を払った行動をすれば感染の可能性を少なくできる。
またイギリスでの研究では、サル痘の感染者は、ほとんどが比較的軽症で、死者は報告されていないため、WHOは全般的なサル痘のリスクは世界全体では「中程度」とされていた。しかし7月23日にWHOは感染の拡大を受けて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。今後ワクチンが完成すれば重症化は防げるともある。
海外で活動するJICA(国際協力機構)もプロジェクト名「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の疫学に関する研究(Project for the epidemiological research on zoonotic virus infections in Africa)」を立ち上げ、2019年6月24日から5年をかけて調査・研究をはじめている。
【JICA】アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の疫学に関する研究
調査場所はアフリカ(ザンビア コンゴ民主共和国)で、これまでもコンゴではエボラウイルス病やジカ熱、高病原性鳥インフルエンザ等のウイルス性人獣共通感染症の発生を受けて行っており、すでに成果を出しつつある。
温暖化のため極地の氷が解け氷河の崩壊が進んでいる。さらに北欧、シベリア、アラスカの永久凍土が解け出し、埋まっていたマンモスが地表に現れたという報道もある。永久凍土は地面が凍結し地下数百メートルもの厚さで凍り付いているもの。そのため永久凍土に閉じ込められた動植物の遺体や分解を担う微生物もその冷たさのために活動を停止する。何万年も前の動植物の遺体が分解されずに残ってきたが、温暖化で微生物やウイルスが活動を開始している。
2016年にシベリアの凍土から解けだしたトナカイの死体から炭疽(たんそ)菌(細菌の一種)が拡散し、2000頭以上のトナカイの感染と一人の少年の命を奪ったことがニュースとなった。また3万年前のシベリアの永久凍土層から未知の巨大ウイルス(モリウイルス・シベリカム)も発見されており、それが今なお増殖可能だという。このウイルスの他にも凍土の中に潜む新種のウイルスもいくつか見つかっており、凍土の融解は「感染症の時限爆弾」とさえいわれている。
2021年、チベットの氷河から採取した氷床コアから33種類のウイルスを発見し、別の研究によって同じの試料から約1000種の細菌が検出されたという。
チベットの氷河の研究を行ったのは中国の研究チームで、チベット氷河から回収した21の試料から、968種の新しい細菌を同定し、学術誌『Nature Biotechnology』に掲載した。
3万年前の「モリウイルス・シベリカム」も現代のアメーバにも感染する可能性があり、古代ウイルスの研究は始まったばかりといえる。
ヒトはアフリカで広まっている「人獣共通感染症」とともに、北欧、シベリア、アラスカの永久凍土のウイルスや細菌にも注意を払う必要がありそうだ。
参考
【AFP】アフリカで「人獣共通感染症」63%増 WHO
https://www.afpbb.com/articles/-/3414635
英当局、サル痘ウイルスの分類を変更 警戒度を一部引き下げ
https://forbesjapan.com/articles/detail/48878
サル痘 アジアでも確認 ”感染拡大の傾向” わかってきたこと
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220704/k10013701221000.html
永久凍土に眠るウイルスと感染症のリスク
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00374/102600004/
溶けた氷河から致死性微生物が解き放たれる可能性
https://news.yahoo.co.jp/articles/f7aa40a36eaf5e29d3f1aa3ca3c7fe338f4a48bd
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